2020年は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)により、我が国経済には未曽有の事態が生じ、小規模事業者の経営に甚大な影響が及んでいる。感染予防意識の向上や外出自粛など消費者の意識・行動が変化し、小規模事業者を取り巻く環境が急速に変化している。
本章では、感染症流行による小規模事業者への影響や消費者の意識・行動変化について概観し、こうした厳しい経営環境の中での小規模事業者の販路開拓や新事業創出への取組について考察する。
第1節 小規模事業者の産業構造の実態
ここでは、我が国の企業数の8割以上を占める小規模事業者の産業構造の変化と業種ごとの地域分布の特徴について確認する。
1.小規模事業者の産業構造の変化
ここでは、総務省「事業所統計調査」と総務省・経済産業省「経済センサス‐活動調査」の事業所に関する集計により、小規模事業者の長期的な産業構造の変化について確認する。
第2-1-1図は、小規模事業所の業種別構成比の変化を示したものである。「小売業」の割合は大幅に下がっているが、依然として最も高いことが分かる。また、「飲食店、宿泊業」の割合は減少しているが、「教育、学習支援業」と「サービス業(他に分類されないもの)」を含めたサービス業全体の割合は増加していることが分かる。
第2-1-2図は、小規模事業所の従業者の業種別構成比の推移を示したものである。これを見ると、「製造業」と「小売業」の割合が大きく減少しており、「飲食店、宿泊業」や「教育、学習支援業」、「サービス業(他に分類されないもの)」を合わせた、サービス業全体の割合が増加していることが分かる。
2.業種ごとの地域分布の特徴
感染症流行の影響が特に大きいとされている対面型の事業のうち、「宿泊業、飲食サービス業1」と「小売業」の小規模事業者を地域別に見た特徴について確認する。
1 産業分類は2013年10月改定のものに従っている。
第2-1-3図は、都道府県別に「宿泊業、飲食サービス業」の小規模事業所の従業者が全従業者に占める割合を示したものである。これを見ると、東京都や大阪府、愛知県などの都市部では割合が低い一方、東北地方、四国地方、九州地方では割合が高い県が多いことが分かる。
第2-1-4図は、都道府県別に、「小売業」の小規模事業所の従業者数の割合を示したものである。これを見ると、「宿泊業、飲食サービス業」と同様に、東京都や大阪府、愛知県などの都市部では割合が低い一方、東北地方や四国地方、九州地方は、割合が高い県が多いことが分かる。