トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2021年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 危機を乗り越える力 第2章 事業継続力と競争力を高めるデジタル化 第3節 中小企業のデジタル化推進に向けた課題

第3節 中小企業のデジタル化推進に向けた課題

本節では、前節で確認した中小企業におけるデジタル化の現状を踏まえた上で、デジタル化の推進に向けた課題について分析する。

第2-2-35図は、業種別のデジタル化推進に向けた課題を示したものである。これを見ると、全産業では、「アナログな文化・価値観が定着している」が最も高く、次いで「明確な目的・目標が定まっていない」、「組織のITリテラシーが不足している」となっており、大半の業種における課題として上位を占めることが分かる。

「卸売業」や「建設業」では、「長年の取引慣行に妨げられている」、「宿泊業、飲食サービス業」では「資金不足」を回答する企業が3割強存在していることも確認される。

第2-2-35図 デジタル化推進に向けた課題(業種別)

第2-2-36図は、従業員規模別にデジタル化推進に向けた課題を示したものである。これを見ると、従業員数の多い企業ほど、アナログな文化・価値観の定着や組織のITリテラシー不足、長年の取引慣行といった課題を挙げる傾向にあり、変革に向けた組織の適応力に課題を抱えている企業が多いことが示唆される。

従業員数の少ない企業では、明確な目的・目標が定まっていないことや資金不足といった課題を挙げる傾向にあり、組織体制の課題を抱えている企業が多いことが示唆される。

第2-2-36図 デジタル化推進に向けた課題(従業員規模別)

第2-2-37図は、デジタル化推進による効果別に、デジタル化推進に向けた課題を示したものである。これを見ると、効果が出なかったと実感している企業は、効果が出たと実感している企業に比べ、明確な目的・目標が定まっていないことや資金不足を挙げる割合が高い傾向にあることが分かる。効果が出なかったと実感している企業では、アナログな文化・価値観の定着を挙げる割合が半数を超えていることも確認される。

資金不足は企業状況にも左右されるものの、デジタル化の推進に当たってはまず、組織における目的・目標を明確化させることが重要であると示唆される。

第2-2-37図 デジタル化推進に向けた課題(デジタル化推進による効果別)

最後に、第2-2-38図は、スマートSMEサポーター制度の認定を受けている企業がデジタル化に取り組む取引・支援先である企業側に対して、デジタル化に向けて期待している状況・条件を示したものである。これを見ると、企業に対して「デジタル化に向けた明確な目的・目標がある」ことを期待する割合が最も多いことが分かる。

また、「デジタル化に向けた明確な目的・目標がある」に次いで、「デジタル化のための予算が確保されている」、「デジタル化に向けた文化・価値観が定着している」を求める割合が高く、前掲の第2-2-37図の結果とおおむね整合していることが確認される。

第2-2-38図 取引・支援先に期待している状況・条件