第3部 中小企業・小規模事業者と支援機関
第2章 中小企業・小規模事業者における経営課題への取組
第5節 まとめ
本章では、中小企業・小規模事業者(以下、「中小企業」という。)における、課題解決のプロセスや、経営課題とその相談相手、公的支援メニューや支援機関の利用実態、日常の相談相手の有用性などについて分析を行ってきた。
第1節では、現状把握、経営計画の策定、経営計画の運用といった各プロセスに沿って、外部支援活用の有効性を確認した。例えば、外部支援を受けている者の方が、受けていない者に比べて、自社の強みや経営課題を十分に把握できている割合が高いことが分かった。また、これらのプロセスを十分に実施できている者ほど、売上高や経常利益、従業員数といった業績面で良い傾向を示していることも分かった。事例3-2-1や事例3-2-3のように、支援の効率化や効果の最大化を図るため、入念な現状把握と精緻な経営計画等の策定に注力する支援機関も少なくない。こうした外部支援も有効に活用し、経営改善のPDCAサイクルを回していくことが重要といえよう。
第2節では、中小企業の経営課題とその相談相手について確認した。中小企業が抱える経営課題の中心は、「人材」と「営業・販路開拓」であるものの、業種や企業規模、利益状況、業歴、事業方針などによっても、傾向が異なることが分かった。また、適切な相談相手とのつながりがないことを理由に、支援を期待する相談相手へのアプローチができていない者が多く存在することも分かった。過去の中小企業経営支援分科会13においても指摘されているように、中小企業支援機関が多様であればあるほど、どの悩みをどの支援機関に相談すべきか分かりづらくなる側面もあるため、自社の経営課題解決に適した支援機関を探しやすい体制整備や、支援機関同士のネットワーク形成は、引き続き重要といえよう。
13 中小企業庁「中小企業政策審議会 中小企業経営支援分科会 中間整理」(2017年6月)
第3節では、公的な中小企業支援メニューと支援機関の利用実態について確認した。いずれにおいても、利用実績が有る者はない者に比べて、業績が良い割合が高く、事業拡大意向を有する割合も高いことが分かった。また、これらの認知ルートについて確認したところ、「日常的な経営に関する相談相手(日常の相談相手)」が重要な役割を果たしていることが分かった。
最後に第4節では、「日常の相談相手」に着目し、その実態や有用性について分析を行った。中小企業が日常の相談相手として活用しているのは、いわゆる中小企業支援機関と呼ばれる者以外にも、「経営陣・従業員」や「取引先」、「経営者仲間」といった経営者を取り巻く様々な関係者であることが分かった。また、日常の相談相手を有している者の方が、現状把握や経営計画等の策定・運用を十分に実施できている割合が高く、業績が良い企業も多いことが分かった。日常の相談相手の存在は、中小企業経営にとって有益であることが示唆されたといえよう。