第3部 中小企業・小規模事業者と支援機関
第1章 中小企業政策の変遷
第2節 中小企業支援体制の変遷
1 中小企業支援体制の歴史
中小企業庁発足当初における中小企業支援は、診断指導事業として展開され、「中小企業指導法」(1963年)を制定し、都道府県などの「中小企業総合指導所」と中小企業振興事業団(現在の(独)中小企業基盤整備機構)を両輪とする政策手法を構築するとともに、診断指導事業費補助や高度化資金による助成を行ってきた。その後、平成に入ると、地方分権や行政改革といった国の役割の見直しの中で、診断指導制度は縮小・廃止されていった。中小企業指導法の「中小企業支援法」への改正(2000年)に加え、地方分権が進む中、国は広域的支援の観点から「地域力連携拠点」を、整備した。さらに、リーマン・ショックを受けて、中小企業支援の重要性が一層高まったことから、「中小企業応援センター」を整備してきたが、その後の行政効率化の観点から、認定経営革新等支援機関制度及び専門家派遣事業の創設に至った。
2 近年の中小企業支援体制の展開
〔1〕認定経営革新等支援機関制度の創設(2012年)
経営支援の担い手の多様化・活性化のため、中小企業者などの新たなニーズに対応し、高度かつ専門的な経営支援を行う金融機関や各種士業を取り込むため、2012年に「認定経営革新等支援機関制度」が創設された。これまでに、35,264機関(2020年2月末現在)を認定している。
〔2〕よろず支援拠点の創設(2014年)
様々な支援機関が存在することで、中小企業者などからは、どこに相談すべきか分からないという声が増え、「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」の一環で、2014年に様々な経営課題にワンストップ対応する相談窓口として「よろず支援拠点」を各都道府県に設置した。
〔3〕小規模事業者支援法の改正(2014年)
身近な中小企業支援機関である商工会・商工会議所が伴走型支援を強化して、小規模事業者の経営戦略に踏み込み、経営の改善発達を支援する経営発達支援事業を促進する観点から、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)の一部を改正する法律」が制定された。具体的には、商工会・商工会議所が「経営発達支援計画」を策定し、国がこれを認定する仕組みを設け、商工会・商工会議所による経営発達支援事業の実施を促すこととしている。これにより、商工会・商工会議所の業務は、これまでは経営の基盤である記帳指導・税務指導が中心であったが、今後は、経営状況の分析や市場調査、販路開拓にも力点が置かれることとなった。
〔4〕小規模企業振興基本計画の改定(2019年)
小規模基本法に基づき、小規模事業者の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、2014年10月に定められた「小規模企業振興基本計画」について、基本計画策定からおおむね5年が経過したことを踏まえ、2019年6月に基本計画を変更し、新たな5年間の「小規模企業振興基本計画(第Ⅱ期)」を開始した2。
2 コラム3-1-1を参照。
第Ⅱ期計画では、近年のITツールの発達や働き方改革の進展によるフリーランスなど事業主体の多様化及び副業者の増加や大規模災害の頻発を踏まえて、これまでの4つの目標、10の重点施策に加えて、「多様な小規模事業者(フリーランスなど)の支援」、「事業継続リスクへの対応能力の強化」を重点施策に追加している。