第2部 地域で価値を生み出す小規模事業者
第4章 付加価値の創出に向けた取組と地域活性化
少子高齢化を背景とした人口減少は、国内需要の縮小につながることが想定される。
第1章で見たとおり、特に地方部において人口減少が進展しており、小規模事業者の事業環境も厳しいものになっていることが想定される。
本章では、地域における小規模事業者の経営状況を確認するとともに、地域内需要の減少という厳しい事業環境に対応していく上で、有効な取組を確認していく。
第1節 地域別に見た小規模事業者の経営状況
まず、小規模事業者の労働生産性の地域間格差について、確認する。第2-4-1図は、人口密度区分1別に小規模事業所の労働生産性を示したものである。これを見ると、人口密度が低い地域ほど、小規模事業所の労働生産性は低いことが分かる。
1 総務省「平成27年国勢調査」に基づき、各市区町村を人口密度の四分位で4つの区分に分けたもの。区分1には0~56.7(人/km2)、区分2には57.0~202.8(人/km2)、区分3には202.9~774.0(人/km2)、区分4には779.9~22380.2(人/km2)の市区町村がそれぞれ含まれている。
ここからは、「事業者アンケート調査」を利用して、小規模事業者の経営状況を見ていく。
第2-4-2図は、人口密度区分別に見た、小規模事業者の過去5年間の売上高・利益の傾向である。これを見ると、人口密度が低い地域ほど、売上高・利益共に総じて、「増加傾向」と回答する者の割合が低く、「減少傾向」と回答する者の割合が高いことが分かる。
第2-4-3図は、人口密度区分別に見た、小規模事業者の直近の業績(利益)について示したものである。人口密度の高い地域と低い地域の間で、黒字、赤字企業の割合における差は、ほとんどないことが分かる。
次に、今後5年間の売上高・利益の見通しについても確認する。
第2-4-4図は、小規模事業者における、今後5年間の売上高・利益の見通しを人口密度区分別に見たものである。これを見ると、人口密度が低い地域ほど、売上高・利益共に、見通しは「減少傾向」と回答した企業の割合が高くなる。
以上を踏まえると、地域別に見た小規模事業者の経営状況は、足元の利益水準を見ると黒字、赤字企業の割合における地域間の差は見られないが、過去5年間の傾向、今後5年間の見通し共に、人口密度の低い地域ほど、売上高・利益は「減少傾向」と回答する者の割合が高い。
このような状況下で、小規模事業者が売上・利益の拡大を継続的に図るためには、積極的な地域外需要の取り込みなど、地域内需要の減少に対応する取組が必要になるものと考えられる。