第2部 地域で価値を生み出す小規模事業者
第3章 地域における雇用と小規模事業者
第4節 まとめ
本章では、小規模事業者の地域の雇用における役割について分析を行ってきた。
第1節では、地域の人手不足の状況と小規模事業者の人材確保の取組について確認した。全国的に人手不足感は高まっており、小規模事業者においてもその傾向は高まっている。いずれの地域においても、半数ほどの小規模事業者は新たな人材の確保を希望しているが、小規模事業者は労働環境において賃金や待遇面、人材育成の面で課題を感じていることが分かった。事例に見たように独創的な労働環境改善の取組は人材確保、魅力ある雇用の創出につながると言えよう。
第2節では、女性・高齢者について、地域の就業状況を確認し、小規模事業者における雇用実態を確認した。小規模事業者では女性、高齢者の従業者割合が高く、女性や高齢者が継続して長く働ける環境を提供していることが分かった。また、分析と事例で見たように、小規模事業者が女性や高齢者などにとって、多様な個性と価値観を受容する柔軟な働き方を提供する役割は今後ますます期待されよう。
第3節では、小規模企業経営者の働き方、起業に関心のある者に着目して分析を行った。経営者は企業勤務者と比べて「仕事の内容」や「仕事の裁量」、「地域とのつながり」への満足度が高く、また創業者は創業者以外の者に比べて満足度が高い項目が多いことが分かった。こうした仕事への満足度の高さは、経営者としての働き方の魅力の一つといえよう。また、いずれの地域・年齢層においても、起業に関心のある者は一定程度存在し、「想い入れのある地域」での起業を希望する者も多く存在することが分かった。更なる地域活性化の担い手を生み出すためにも、こうした起業予備軍の起業や移住を支援していくことは、今後も重要であるといえよう。
以上、小規模事業者の雇用への貢献や、経営者自身の働き方、起業に関心のある者などについて分析してきた。一方、利益や売上げが増加傾向である小規模事業者が労働環境の改善に取り組めているように、事業活動を持続的に行っていくためには、利益や売上げを一定程度確保していく取組も同時に重要である。次章においては、小規模事業者の付加価値の創出や地域活性化への取組について分析を行っていくこととする。