第1部 令和元年度(2019年度)の中小企業の動向
第4章 中小企業・小規模事業者の多様性と役割・機能
第3節 まとめ
我が国の企業数の99.7%が「中小企業」であることからも分かるとおり、「中小企業」として総称される企業群の実態は極めて多種多様である。本章では、こうした中小企業・小規模事業者の多様性について、企業規模や業種に加え、期待される役割・機能にも着目し、その実態を確認してきた。
今回は、中小企業・小規模事業者の「目指す姿」を四つの類型に分類した上で、それぞれの特徴を分析した。労働生産性や売上高などの業績面、資本金や従業員数といった規模面で比較すると、「〔1〕グローバル型」又は「〔2〕サプライチェーン型」を目指す企業が、「〔3〕地域資源型」又は「〔4〕生活インフラ関連型」を目指す企業を総じて上回る傾向が見られた。また、小規模事業者では「〔3〕地域資源型」、「〔4〕生活インフラ関連型」の割合が高くなり、地域や住民生活との密接性を重視する企業の割合が高いことも分かった。さらに、同じ業種内の企業においても、その目指す姿は多様であり、「製造業」や「サービス業」といった概念だけでは捉えきれない異質性を有することが確認された。
なお、今回分析に用いた四つの類型は、企業に期待される役割・機能に着目したものであるが、期待される役割や企業の目指す姿が異なれば、必要な支援策も当然異なってくると考えられる。中小企業・小規模事業者の多様性を踏まえたきめ細やかな支援を通じて、経済的な付加価値の増大や地域の安定・雇用維持への貢献などといった、それぞれが生み出す「価値」の最大化を図っていくことが重要といえる。