第3節 損害保険・火災共済の活用状況
一たび自然災害が発生すると、建物(事務所、工場など)、設備・什器、商品などの経営資源が損害を受け、修理費用や買替費用などが発生することが想定される。修理・買替が終わるまで営業停止に陥り、その間も人件費、土地・建物の賃料、リース料などの固定費の支払が継続することもある。こうした復旧・復興に要する費用や、営業停止時も生じる固定費などについて、事前に対策を講じていないと、想定外の支出が生じ経営に大きな影響を及ぼすおそれがある。
そこで、本節においては、こうした事態に対応するためのリスクファイナンスとして、損害保険・火災共済に焦点を当てる。前掲第3-1-15図では、被災事業者が復興する際に損害保険を活用している割合が高いことを示した。小規模事業者が損害保険・火災共済をどれだけ活用し、被災時に効果が発揮されているのか、実態を分析する。
1 損害保険・火災共済の加入状況
第3-2-13図は、自然災害に対応する損害保険・火災共済の加入状況を示している。損害保険・火災共済を合計すると、9割弱の事業者が加入している。他方で、「加入なし」と回答した事業者は約1割であり、加入有無について把握していない者も一部存在している。

第3-2-14図は、前掲第3-2-13図で、損害保険・火災共済に加入していないと回答した事業者に対し、その理由を聞いたものである。最も多い回答は、「加入を意識したことが無かった(今後、加入したい)」であり、次いで「被災時にどの程度の金銭的被害が発生するかイメージできない」となっている。他方、「保険料や共済掛金を支払う原資がない」といった金銭的な理由の回答は相対的に少ない。したがって、より一層の情報提供が、損害保険などで自然災害に備える事業者の増加に資するものと考えられる。
