第5節 まとめ
本章では、フリーランスや副業としての「起業」について、その多様性に着目しつつ、分析を行ってきた。
第1節では、起業の担い手の推移を確認した。ここでは、副業起業希望者及び副業起業準備者は増加傾向にあり、起業の担い手の下支えとなっていることが分かった。
また、諸外国との比較では、依然として我が国は起業無関心者の割合が高いものの、起業関心者に占める起業活動者の割合は比較的に高い水準であることを確認した。なお、起業活動者を増やすには、起業に必要な能力などを自分自身で認識できる機会を与えることが有効な支援策になり得ることも明らかになった。
第2節では、起業家を三つに類型化して分析を行った。その結果、フリーランス起業家及び副業起業家は、フリーランス・副業以外の起業家に比べて、事業に関する仕事の経験年数が短く、開業費用も低いことが分かった。また、起業目的は「自分の好きな仕事をするため」や「自分の趣味や特技、アイディアを生かすため」といった回答が相対的に多く、多様な起業に貢献する可能性を有する存在であることも確認した。
さらに、これらの起業家の売上高及び雇用に関する成長意向に着目すると、男性の副業起業家は、フリーランス・副業以外の起業家に近い傾向であることが分かった。
第3節では、成長意向の強い起業家について分析を行った。ここでは、フリーランスとして事業を開始し、雇用を拡大している者が約2割いること、また、副業として起業した者のうち、約7割が本業への移行を果たしていることがうかがえた。
さらに、類型に関わらず、成長志向型の起業家の経営課題は、「販路開拓・マーケティング」と共通している一方、フリーランス起業家や副業起業家は、経営の相談相手が「家族・親族」、「友人・知人」といった身近な者に集中しており、民間又は公的支援機関の活用が相対的に進んでいないことが分かった。これを受けて、支援機関同士の連携や情報発信が、これらの起業家に対して支援を行き届かせるための方法となる可能性が示唆された。
第4節では、起業家によるフリーランス活用の実態について分析を行った。起業家の約4割がフリーランスの活用意向を有しており、成長志向型の起業家の方がよりフリーランスを活用し、今後の活用意向を有していることも分かった。
他方、フリーランスの活用における課題について見ると、活用実績のない者は、フリーランスが有する能力や費用対効果、フリーランスの探し方について課題と認識している者が多いことが明らかになった。
本章の分析により、フリーランス起業家や副業起業家の存在は、新たな起業の担い手の維持・拡大に資するものであり、これらの起業家の中でも、起業目的や成長意向の面で多様性が存在することが明らかになったといえよう。今回の分析で浮かび上がった課題の解決が、多種多様な起業活動の活発化につながり、ひいては我が国経済の活力の維持・発展に寄与することを期待し、本章の結びとしたい。