2 起業家によるフリーランス活用の実態とその課題
本項では、フリーランスとして起業する者が今後も増加することが予想される中、本章で定義する起業家によるフリーランスの活用実態や、その課題などについて分析していく。
〔1〕起業家によるフリーランス活用の実態
まず、フリーランスの活用実績及び活用意向について、起業家の所在地域別に見てみる(第2-2-52図)。活用実績があると回答した者(「活用実績があり、今後の活用にも関心がある」又は「活用実績があるが、今後の活用に関心はない」)は、中国地方、四国地方、九州・沖縄地方を除く6地域で4割を超えており、また、活用した事業者の多くが引き続き関心を持っていることが分かる。

また、「活用実績はないが、今後の活用に関心がある」と回答した者の割合も各地で1割前後存在し、「活用実績があり、今後の活用にも関心がある」と回答した者と併せれば、いずれの地域の起業家においても、今後のフリーランス活用への関心が4割前後となっていることが分かる。
次に、第2-2-53図は、フリーランスの活用意向がある起業家の活用目的を、活用実績別に見たものである。これを見ると、いずれも「社内にはない技術やノウハウ、知識を得られるから」と回答する者が最も多いことが分かる。また、活用実績がある者と活用実績がない者を比べると、活用の目的に大きな差異はない。

第2-2-54図は、フリーランスの探し方を活用実績及び活用意向別に見たものである。実際にフリーランスを活用した実績がある者は、家族や親族、知人・友人などの身近な人がフリーランスであるケースが多いことが分かる。

他方、フリーランスの「活用実績はないが、今後の活用に関心がある」者は、その他の者に比べて、「同業者の経営者等からの紹介」や「フリーランス本人のHPやチラシ、営業など」といった外部の者やサービスといった紹介ルートを頼りたいと考える者が多いことが分かる。
今後、副業としてフリーランスとなる者が増えていくことも予想される中、起業家の持つ副業フリーランスに対する最も強い印象を第2-2-55図で確認する。いずれの類型の起業家においても、「本業で得た鮮度の高い知見、技術、ノウハウを生かしたサービスの提供が期待できる」と回答する者が2割以上いることが分かる。他方、副業として事業を行う点で、副業フリーランスと同じ境遇である副業起業家については、「本業を持つため、副業に従事する時間に制約がある」という回答が他の起業家に比べて多い。

〔2〕活用実績及び活用意向があるフリーランスのサービス分野
第2-2-56図では、活用実績と活用意向別に、フリーランスのサービス分野を確認する。これを見ると、活用実績と活用意向のいずれの観点においても「経営・ビジネス系」の回答が最も多く、次いで「クリエイター・アーティスト系」となっている。また、活用意向が示されたサービス分野については、「ITエンジニア系」の回答が、活用実績のあるサービス分野に比べて相対的に多いことが分かる。

この結果から、「経営・ビジネス系」、「クリエイター・アーティスト系」及び「ITエンジニア系」のサービス分野の活用は、今後も進んでいく可能性があるといえよう。
〔3〕起業家の成長意向別に見たフリーランスの活用実績と活用意向
ここでは、売上高又は雇用に関する成長意向の強さによってフリーランスの活用実績や活用意向に違いがあるかを見ていく(第2-2-57図及び第2-2-58図)。売上高と雇用のいずれにおいても、成長志向型の起業家の方が、安定志向型の起業家に比べて、フリーランスを活用しており、今後の活用意向がある者の割合が高いことが分かる。


〔4〕起業家によるフリーランス活用の課題
最後に、起業家がフリーランスを活用する際に対峙する課題や懸念について見ていく(第2-2-59図)。フリーランスの活用に関心がある起業家のうち、活用実績のある者は「特に課題は無い」と回答する者が多い一方、活用実績がない者は、「フリーランスを探す手段が分からない」、「フリーランス活用の費用対効果が不明瞭」、「依頼した業務をこなす能力があるか不安」など、主に情報不足に起因すると考えられる課題や懸念を感じていることが分かる。この点については、まずは1回活用してみることで、解消される点も多いものと考えられる。
