第2部 経営者の世代交代と多様な起業 

3 まとめ

本節では、フリーランスとして事業を開始し、雇用を拡大している者が約2割いること、また、副業として起業した者のうち、約7割が本業への移行を果たしていることがうかがえた。また、上記の成長を果たしている起業家は、起業家全体と比べ、起業時の売上高及び雇用に関して、成長志向型の割合が高いことも分かった。

他方、成長志向型起業家が抱える経営課題は、類型別に見た場合でも「販路開拓・マーケティング」が最も多い点で共通していることが分かった。また、この経営課題の相談相手は、フリーランス起業家や副業起業家において、いわゆる支援機関の活用が進んでいないことも明らかになった。さらに、今後経営課題を相談してみたい相談相手について確認したところ、公的支援機関の認知度の低さが目立つ結果となった。

今後、フリーランス起業家や副業起業家などの多様な起業家が増えていくことが予想される中、これらが抱える経営課題は、その他の起業家と同質であり、従来の支援機関での対応も可能と考えられる。したがって、これらの起業家を対象にいかに認知度を上げ、活用のきっかけを作るかが重要であると推察される。

事例2-2-7:WA babywrap

「看護師の傍ら起業し、よろず支援拠点などの支援を受けることで、本業への移行を果たした個人事業者」

石川県金沢市のWA babywrap(従業員なし、個人事業者)は、オリジナル抱っこ紐の企画・販売を手掛ける個人事業者である。

元々看護師であった代表の須佐瞳氏は、長男出産前の産休中に「もっとシンプルな抱っこ紐で、育児を楽に、楽しくテンションが上がるものにしたい。」と考え、2015年からオリジナル抱っこ紐を作り始めた。ある日、自作の抱っこ紐を着けて出掛けていたところ、ママ友から「私にも作って欲しい。」と依頼されたことをきっかけに、副業として制作・販売を開始した。

当初は趣味感覚で始めて、現在の形になるまで3か月、素材の吟味に2年を要した。その後、口コミやSNSの活用などにより徐々に注文が伸びて行き、須佐代表のみでの対応が困難となっていたが、「私の抱っこ紐で子育て支援をしたい。」という経営理念とも言うべき強い思いが支えとなり、事業を継続していた。その頃から、「本格的に事業化し、きちんとしたものを作りたい。」と思いが芽生え、事業を通じて構築した人脈に加え、発明協会に特許出願、よろず支援拠点に販路開拓や生産委託の相談を行うなど、支援機関も積極的に活用し、事業活動を強化していった。須佐代表は「自分が本当にやりたいことや経営理念を深めることに加え、地元新聞などメディアへの露出の提案や生産委託先の紹介など、よろず支援拠点には適切な相談対応をしてもらえた。」と当時を語る。

その後、更なる注文増加にも恵まれ、やりがいが増す一方、副業での事業継続に限界を感じていた。転機を迎えたのは2018年11月に石川県への転居が決まったことだった。既に本業の看護師以上の収入が期待できるようになったこともあり、抱っこ紐の事業を本業に移行する決意をした。

事業を本格化した現在は、須佐代表自身が企画デザインや広報に今以上に専念するため、製造・販売業務を委託できる新たなビジネスパートナーを見つけて、事業をさらに拡大していく方針である。

須佐代表は、「想いがあれば人はつながる。考え過ぎないで、まずはやってみることが重要。自らが動き、支援機関を始め周囲の協力を得ることで、自分が本当にやりたいことは実現できる。」と起業を目指す人にメッセージを送る。

製品使用例(須佐代表)・試着体験会の様子
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