2 起業家の類型別に見た起業行動の実態
ここまで起業家の類型別に、そのバックグラウンドについて見てきたが、以降は、これらの起業家における起業時や起業後の実態について分析していく。
〔1〕起業家の起業動機と目的
はじめに、第2-2-33図で起業の動機となった経験について見ていく。いずれの類型の起業家も、「正社員としての勤務経験」が最も多いことが分かる。また、副業起業家は、その他の類型起業家に比べて、「本・テレビ・インターネットなどからの起業家に関する情報」や「アルバイト・パート経験」、「経営に関する授業・セミナー」、「ビジネスプランの作成」、「起業家等による講演会や交流会への参加」、「子育て・家事・介護」などの多様な経験が起業動機の形成に影響していると考えられる。

次に、起業の目的を類型別に確認する(第2-2-34図)。いずれの起業家についても、「自分の裁量で自由に仕事をするため」が上位回答となっている。他方、フリーランス起業家や副業起業家の起業の目的は、「自分の好きな仕事をするため」や「仕事の経験や技術、知識、資格、スキル等を生かすため・試すため」、「自分の趣味や特技、アイディアを生かすため」といった回答も多いことが分かる。

〔2〕起業家の(現在の)成長意向の実態
第2-2-35図及び第2-2-36図は、起業家の類型ごとに見た、売上高又は雇用の拡大意向(成長意向)である。なお本章では、売上高(又は雇用)に関する現在(又は起業時に)目指す成長タイプについての質問に対して、「短期的に拡大させる」又は「中長期的かつ安定的に拡大させる」と回答した者を「成長志向型」、一方「拡大を意図しない(事業の継続を重視する)」と回答した者を「安定志向型」と呼ぶこととする。


まず、売上高に関する成長志向型の起業家の割合は、男女、類型別問わず4割を超えている。また、売上高に関しては雇用に比べて成長志向型の起業家の割合が高いことが分かる。
次に、男女別に見ると、男性における成長志向型の副業起業家の割合は、売上高及び雇用のいずれも、フリーランス・副業以外の起業家に近いことが分かる。他方、女性における成長志向型の副業起業家の割合は、売上高及び雇用のいずれも、フリーランス起業家と近い。
さらに、フリーランス起業家は、男女ともにその他の類型の起業家に比べて、売上高及び雇用のいずれも、安定志向型の割合が高く、個人の技術や技能に基づき独立して事業を営む者という特性を示しているものと推察される。