第2部 経営者の世代交代と多様な起業 

第3節 廃業した個人事業者からの経営資源の引継ぎ

前節では、個人事業者の事業承継について見てきた。事業承継だけでなく、廃業(事業を停止)した個人事業者からも、経営資源を次世代へ引き継げる場合がある。本節では、「廃業した個人事業主」及び「廃業した小規模法人の経営者」別に、経営資源引継ぎの実態と課題を明らかにする。

1 廃業の理由と廃業時に苦労した取組

〔1〕事業を継続しなかった理由

安田(2019)は、「廃業者の大半を占める自営業者にとって、自身が企業というものを営んでいるという概念はないに近いのかもしれない。つまり、企業というと世代を終えて時間を超えて続くものという概念であろうが、生業に近い自営業者にとっては自身とその家族の生計を得るすべなのである。」と述べている。実際、事業を継続しなかった理由としては、個人法人ともに「もともと自分の代で畳むつもりだった」が最も多く、法人に比べ個人事業者の方が、割合が高い。(第2-1-27図)。生業に近い小規模な個人事業者ほど、もともと事業を引き継ぐ意思がない傾向があると考えられる。

第2-1-27図 事業を継続しなかった理由
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次いで、「事業の将来性が見通せなかった」、「事業に引継ぐ価値があると思えなかった」、「資質がある後継者候補がいなかった」、「事業の足下の収益力が低かった」とする回答が多い。これらを選択した企業については、早期の経営改善の取組や後継者探し・育成の取組、又はより幅広いM&Aの可能性の模索をしていれば、事業を引き継ぐ選択肢があった可能性もある。

〔2〕廃業に向けた取組の中で苦労したこと

第2-1-28図は、廃業に向けた取組の中で苦労したことを示したものである。「特になし」が最も多いものの、半数以上は何らかの取組で苦労している。

第2-1-28図 廃業に向けた取組の中で苦労したこと
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個人事業者においては、「顧客や販売先への説明」、「家族の同意」、「従業員の処遇」、「仕入先への説明」、「資産売却先の確保」の順で苦労したとする割合が高い。小規模法人においてもこれらの回答が比較的多かった。

「顧客・販売先」、「従業員」、「資産」などは、第1節でも触れたように、廃業時にも個別に他社へ引き継ぐことができる経営資源である。それぞれ引き継ぐためにも、苦労があると考えられる。以下では、こうした廃業企業からの経営資源の引継ぎについて、経営資源ごとに実態や課題を明らかにする。

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