第1章 個人事業者の事業承継
経営者の高齢化が進む中で、第1部で確認したとおり、休廃業・解散件数は増加傾向にあり、小規模事業者の数は年々減少している。そのような状況で、我が国経済が持続的に成長するためには、小規模事業者がこれまで培ってきた、未来に残すべき価値を見極め、事業や経営資源を次世代に引き継ぐことが重要である。しかしながら、小規模事業者が培ってきた事業や、技術・ノウハウや設備などの貴重な経営資源が、次世代に引き継がれることなく散逸してしまう場合もある。
そこで本章では、特に小規模事業者に占める割合が多い個人事業者の事業承継の実態、経営資源を引き継ぐに当たっての課題を明らかにしていく。
第1節 個人事業者の事業承継に向けた論点整理
本節では、まず、個人事業者の全体像と、個人事業者における事業承継について分析する背景を示す。その上で、事業承継と経営資源の引継ぎの概念について見ていく。
1 個人事業者の概観
〔1〕個人事業者数
第2-1-1図は、中小企業に占める個人事業者の割合を示している。中小企業数全体(約358万者)のうち、半数以上となる約186万者が小規模な個人事業者であることが分かる。

第2-1-2図は、個人事業者数の推移を示している。

1999年から2016年にかけて、我が国の中規模企業を含む個人事業者数1は319万者から198万者と約6割に減少している。特に小規模事業者に該当する個人事業者の減少が顕著であることが分かる。
1 大企業を除く。
〔2〕年代別に見た自営業主数の分布
次に、個人事業主(自営業主)の年齢の分布(第2-1-3図)を見ると、2000年には50~54歳が最も多い年齢層であったが、その後、2015年には70歳以上が最も多い年齢階層となった。2018年は70歳以上の個人事業主が更に増加し、90万人に到達しており、個人事業主の高齢化が進んでいることが分かる。

以上より、我が国の中小企業の半数を占める小規模な個人事業者数は、近年減少傾向にあり、さらに個人事業主の高齢化も進んでいることが分かった。
このままでは、個人事業者が有する経営資源が散逸してしまう恐れがある。地域社会ひいては日本経済を維持・発展させるためには、個人事業者が有する、有用な事業・経営資源を次世代に引き継ぐことが重要であるといえよう。