平成30年度において講じた中小企業施策

第2章 事業承継・再編・統合による新陳代謝の促進、人材不足への対応

第1節 事業承継支援

1.事業引継ぎ支援事業【平成30年度当初予算:68.8億円の内数】

後継者不在等の問題を抱える中小企業・小規模事業者に対し、各都道府県の各認定支援機関に設置されている「事業引継ぎ支援センター」において、事業引継ぎ等に関する情報提供・助言等を行うとともに、M&A等によるマッチング支援を実施した。平成30年4月から12月の間に8,681件の相談に対応し、645件の引継ぎを実現した。(継続)

2.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度(事業承継税制)【税制】

非上場株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する「事業承継税制」を、今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象に、抜本的に拡充した。本制度は、平成30年4月から12月の間に1,857件の申請を受け付けた。(継続)

3.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置【税制】

M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を通じて事業の継続・技術の伝承等を図る事業者を支援するため、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて再編・統合を行った際にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減した。(継続)

4.小規模企業共済制度

小規模企業共済制度は、小規模企業者である個人事業主や会社等の役員が掛金を積み立て、廃業や引退をした際に共済金を受け取れる制度であり、いわば小規模企業の経営者のための「退職金制度」である。平成30年12月末現在で141.8万人が在籍しており、平成30年4月から12月までの新規加入者は7.6万人に上った。(継続)

5.経営承継円滑化法による総合的支援

経営承継円滑化法には遺留分の制約を解決するための民法の特例をはじめとした総合的支援が盛り込まれており、民法特例の適用の基礎となる経済産業大臣の確認を実施した。また、M&Aによる事業引継ぎに際して、社外第三者(後継予定の者)に生じる株式買収資金等の資金ニーズに対応するため、買収を行う中小企業者等の代表者未就任のものも対象に含むよう、金融支援の対象範囲を拡充した。(継続)

6.事業承継円滑化支援事業

全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施した。(継続)

7.事業承継・世代交代集中支援事業(プッシュ型事業承継支援高度化事業)【平成30年度補正予算:50.0億円の内数】

早期・計画的な事業承継の準備に対する経営者の「気付き」を促すため、各都道府県単位で支援機関等から構成される事業承継ネットワークを構築した。事業承継ネットワークでは、事業承継診断を通じて経営者の事業承継支援に係るニーズを掘り起こし、適切な支援機関への取り次ぎ等を実施した。平成30年度は47都道府県で実施(独自に取り組む3自治体を含む)し、平成30年4月から11月の間に98,360件の事業承継診断を実施した。(継続)

8.事業承継・世代交代集中支援事業(事業承継補助金)【平成30年度補正予算:50.0億円の内数】

事業承継・世代交代を契機として、経営革新や事業転換に挑戦する中小企業に対し、設備投資・販路拡大・既存事業の廃業等に必要な経費を支援した。また、サプライチェーンや地域に根付いた価値ある事業の継続のために、事業再編・事業統合を促進して、サプライチェーンや地域経済の活力維持、発展を図る取組に必要な経費を支援する類型を新設した。(継続)

第2節 人材・雇用対策

1.地域中小企業人材確保支援等事業【平成30年度当初予算:18.5億円の内数】

経営資源の乏しい中小企業・小規模事業者の人材の確保を支援することを目的に、地域特性に合わせ、各地の中小企業・小規模事業者が必要とする人材を地域内外から発掘、紹介、定着等人材確保支援を実施した。また、中小企業等が中核人材を確保するための持続的なスキームの構築に向けた実証事業を実施した。(継続)

2.中小サービス業中核人材の育成支援事業【平成30年度当初予算:0.85億円】

次世代の経営者を育成・確保するため、中小サービス事業者の次世代経営人材と優良企業等をマッチングし、実地研修(一定期間の“修行”)を組成することで、経営等の成功の鍵を体得する機会を提供した。また、修行の様子や成果を紹介するなど、修行のイメージや成果が明確になるよう努めた。(継続)

3.スマートものづくり応援隊等事業【平成30年度当初予算:1.8億円】

製造現場の経験が豊富な人材や、IoTやロボットに知見を有する人材等が指導者としての汎用的なスキルを身につけるための研修を実施し、育成した指導者を製造業等の中小企業・小規模事業者の現場に派遣することで、これらの事業者の生産性向上を目指す。平成30年度末時点で計31拠点を整備。(継続)

4.中小企業等支援人材育成事業【平成30年度当初予算:1.0億円の内数】

空き店舗対策や合意形成手法等、まちづくり特有のスキルの習得を図る研修等を実施することで、まちづくりを牽引するタウンマネージャー等を育成した。(継続)

5.中小企業・小規模事業者人材育成支援事業【平成30年度当初予算:25.0億円の内数】

中小企業等が、「中核人材に求める能力」と「専門知識」を従業員の「業務や環境に応じて」学べる人材育成のプラットフォームを構築した。また、EdTechの活用で「時間や場所にとらわれない多様な学び」を提供するとともに、「受講履歴等を一元管理」することにより、受講者や受講者が属する企業の経営者・人事担当者に理解度を可視化した。(新規)

6.中小企業大学校における人材育成事業

全国9か所にある中小企業大学校において、中小企業の経営者、管理者等を対象に経営課題の解決に直接結びつくような研修等を実施した。また、地域の事業者からのアクセス改善に向けたサテライト・オフィスの実施や、高度実践プログラムの導入などの機能強化を本格的に実施した。(継続)

7.ふるさとプロデューサー育成支援事業【平成30年度当初予算:10.5億円の内数】

地域の関係者を巻き込み、地域資源を活かした魅力ある産品を「地域ブランド化」し、海外市場を見据えて販路開拓を行う取組の中心的担い手となることができる人材育成の取組を支援した。(継続)

8.労働者の雇用維持対策【平成30年度当初予算:52.3億円】

景気の変動等にともなう経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練又は出向により、労働者の雇用の維持を図った場合に、雇用調整助成金を支給するとともに、不正受給防止対策にも積極的に取り組み、本助成金のより一層の適正な支給に努めた。(継続)

9.魅力ある職場づくりに向けた雇用管理の改善の支援【平成30年度当初予算:175.9億円】

人材確保等支援助成金において、企業の雇用管理改善の取組を支援し、魅力ある職場づくりを図るため、中小労確法に基づき各都道府県知事に改善計画の認定を受けた中小企業団体(事業協同組合等)が労働環境向上事業を行った場合に助成を行った。また、中小企業・小規模事業者等が雇用管理制度を新たに導入・実施し、従業員の離職率を低下させた場合に助成を行った。加えて、介護福祉機器を導入した場合の助成及び従業員の離職率を低下させた場合に助成した。さらに、介護事業主及び保育事業主が、賃金制度の整備を通じて従業員の離職率を低下させた場合にも助成した。また、能力評価を含む人事評価制度等を整備し、定期昇給等のみによらない賃金制度を設けることを通じて生産性向上、賃金アップと離職率低下を図った場合に助成した。加えて、生産性向上に資する設備等への投資を通じて、生産性向上、雇用管理改善(賃金アップ)等を図る事業主に対する助成を創設した。さらに、本助成金において雇用管理制度助成コースの助成を受けた中小建設事業主が若年者及び女性の入職率に係る目標を達成した場合や、中小建設事業主が、雇用する登録登録基幹技能者の賃金テーブルまたは資格手当を増額改定した場合に助成を行った。また、建設事業主又は建設事業主団体が若年者及び女性労働者の入職・定着の取組を実施した場合や、職業訓練法人が建設工事における作業に係る職業訓練の推進を行った場合に助成した。その他、中小建設事業主が被災3県に所在する作業員宿舎等の整備を行った場合や、中小元方建設事業主が建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した場合、職業訓練法人が認定訓練の実施に必要な施設等の設置等をした場合に助成を行った。(継続)

10.地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)【平成30年度当初予算:34.1億円】

地域における雇用の創出及び安定を図るため、雇用機会の不足している地域等において事業所の設置又は整備を行い、併せて地域の求職者等を雇い入れる事業主に対して、設置等の費用及び雇入れ人数に応じて助成を行う地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)を支給した。(継続)

11.地域活性化雇用創造プロジェクト【平成30年度当初予算:53.2億円】

地域における安定した良質な雇用の創出・確保に向けた取組を推進するため、産業政策と一体となって正社員雇用の創出・確保に取り組む都道府県を支援する地域活性化雇用創造プロジェクトを実施した。(継続)

12.成長分野等への人材移動の促進【平成30年度当初予算:62.6億円】

事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者(再就職援助計画対象者等)に対する就職支援を民間職業紹介事業者への委託等により行う事業主に対して、労働移動支援助成金(再就職支援コース)による助成を行った。また、労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)において、再就職援助計画対象者等を早期に雇い入れた、又は早期に雇い入れた再就職援助計画対象者等に訓練を実施した事業主に対する助成を実施した。さらに、労働移動支援助成金(中途採用拡大コース)において、中途採用者の能力評価、賃金、処遇の制度を整備した上で中途採用者の採用を拡大させた事業主に対する助成を行った。

13.人材確保対策推進事業【平成30年度当初予算:25.8億円】

人材不足分野における人材の安定的な確保のため、全国の主要なハローワークに設置する「人材確保対策コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等を実施した。(継続)

14.若者雇用促進法に基づくユースエール認定制度【平成30年度当初予算:5.6億円】

若者の雇用管理が優良な中小企業について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号)に基づき、厚生労働大臣が「ユースエール認定」企業として認定し、中小企業の情報発信を後押しすることにより、当該企業が求める人材の円滑な採用を支援する。(継続)

15.最低賃金の引き上げに向けた中小企業・小規模事業者支援【平成30年度当初予算:29億円、平成30年補正予算5.5億円】

最低賃金・生産性向上による賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援として、

〔1〕働き方改革に関する相談等にワンストップで対応するため、「働き方改革推進支援センター」を全国(47カ所)に設置し、無料の相談対応・専門家派遣を実施した。(新規)

〔2〕傘下企業の労働時間短縮や賃金引上げに向けた生産性向上に資する取組を行う中小企業団体に対し、その取組に要した費用を助成した。(新規)

〔3〕全国47都道府県の中小企業・小規模事業者を対象として、生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内の時間給1,000円未満の労働者の賃金を30円以上引き上げた場合に、その設備投資などに要した費用の一部を助成(助成率7/10、企業規模30人以下の小規模事業者は3/4)するとともに、賃金引上げ労働者数に応じて助成上限額上乗せして支給を行った(1~3人:50万円、4~6人:70万円、7人以上:100万円)。(継続)

16.キャリアコンサルティングの普及促進

民間職業紹介・就職支援機関や企業の人事管理・人材育成部門、学校におけるキャリア教育などにおいて、キャリアコンサルティング(労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと。)の活用について普及促進を進めた。平成28年4月には、キャリアコンサルティングを行う専門家として「キャリアコンサルタント」を国家資格化したことから、当該資格の周知を進めた。また、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」である「セルフ・キャリアドック」の導入を推進した。(継続)

17.(再掲)所得拡大促進税制【税制】

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