第2節 社会構造の変化と中小企業に期待される役割
本節では、第1節で確認した社会変化を踏まえて、今後の中小企業に期待される役割について考察を行っていく。
考察に当たっては、まず、1999年の中小企業基本法改正時に示された「21世紀の中小企業像」を振り返るとともに、我が国における中小企業の位置づけを確認する。次に、中小企業を取り巻くステークホルダー48の価値観の変化を確認し、最後に、今後の中小企業に期待される役割を見ていく。
48 企業活動に関わる利害関係者のことを指す。
1 我が国経済における中小企業の位置づけ
1999年に中小企業基本法の抜本改正が行われた。中小企業基本法改正のポイント(第3-1-50図)を見ると、中小企業を「弱者」として画一的なマイナスのイメージで捉えることは不適切であり、21世紀における中小企業は、機動性、柔軟性、創造性を発揮し、我が国経済の「ダイナミズム」の源泉と位置づけた。

また、中小企業基本法の改正に合わせ、「21世紀の中小企業像」についても示された(第3-1-51図)。これを見ると、中小企業は我が国経済を支える重要な存在として、位置づけられており、中小企業に対する期待の大きさが分かる。

次に、我が国経済における中小企業の位置づけについて、総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」より確認しておく。
第3-1-52図は、我が国の企業数・従業者総数・付加価値額・売上高のうち中小企業の占める割合を示したものである。

企業数・従業者総数から見ると、我が国の企業の99.7%は中小企業であり、雇用の約70%を創出しているなど、その存在感は非常に大きい。
また、付加価値額・売上高を見ると、我が国経済に占める割合は、約53%、約44%となっており、中小企業は我が国経済の根幹を担う存在と捉えることができる。