第2部 経営者の世代交代

第3節 起業後に成長を果たす起業家の実態

前節では、経営者になるまでの過程における課題について見てきた。こうした課題を払拭し、経営者の数を増やすための取組が重要である一方で、時代の変化に合わせて我が国や各地域の経済を牽引する企業や、新たな雇用の受け皿となる企業が増えていくことも、我が国が継続的に発展していくために重要である。

ここでは、売上高を成長させたい、雇用を拡大させたいと考えている起業準備者や、起業後実際に売上高を成長させている、雇用を拡大させている企業について分析することで、特に成長していく起業家への支援の在り方について、都市部と地方部の環境の違いという観点も交えながら検討していく28

28 売上高の成長と雇用の拡大の関係性については、付注2-2-2を参照のこと。

1 起業準備者の売上高に対する成長意向

はじめに、売上高の成長について分析する。ここでは「経営者参入調査」における起業準備者を、第2節と同様に、起業後の売上高を「短期間で拡大させる」者を「急成長型」、「中長期的かつ安定的に拡大させる」者を「安定成長型」、「拡大を意図しない」者を「事業継続型」に分類し(第2-2-76図)、それぞれの特徴について見ていく。

第2-2-76図 起業準備者の起業後の売上高に対する成長意向
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〔1〕起業準備者の年齢構成

第2-2-77図は、起業準備者の現在の年齢を売上高に対する成長意向別に見たものである。これを見ると、急成長型及び安定成長型では39歳以下の若い年代が相対的に多いことが分かる。

第2-2-77図 売上高に対する成長意向別、起業準備者の年齢
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〔2〕起業準備者の準備期間

第2-2-78図は、売上高に対する成長意向別に、起業準備者が経営者になるために必要だと思う準備期間について見たものである。これを見ると、準備期間は売上高の成長意向にかかわらず大きく変わらないことが分かる。

第2-2-78図 売上高に対する成長意向別、起業準備者が経営者になるために必要だと思う準備期間
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〔3〕起業準備者が起業を検討している業種

第2-2-79図は、売上高に対する成長意向別に、起業準備者が起業を検討している業種を見たものである。これを見ると、売上高の成長意向にかかわらず、その他のサービス業、小売業、専門・技術サービス業などで起業を検討する者が多い傾向にあり、成長意向が強い者も同じ傾向を示していることが分かる。また、情報通信業では売上高に対する成長意向が強い者の割合が顕著に高いことが分かる。

第2-2-79図 売上高に対する成長意向別、起業準備者が起業を検討している業種
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〔4〕起業準備者の起業希望地

第2-2-80図は、起業準備者の起業希望地別に、売上高の成長意向を見たものである。これを見ると、売上高に対する成長意向は、起業希望地が三大都市圏29か否かで大きく変わらないことが分かる。

29 本節でいう「三大都市圏」とは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県の8都府県をいう。

第2-2-80図 起業希望地別、起業準備者の売上高に対する成長意向
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第2-2-81図は、起業準備者が起業希望地を選んだ理由を、起業希望地別、及び売上高に対する成長意向別に見たものである。三大都市圏以外の急成長型・安定成長型では、「その地域に貢献したい・愛着があるから」、「自分が今住んでいる地域だから」、「自分が生まれた又は過去住んでいた地域だから」、「家族にゆかりのある地域だから」、「その地域に知人・友人が多いから」の割合が高い。これは三大都市圏の急成長型・安定成長型の割合に比較しても高く、三大都市圏以外で起業したいと思うかどうかは、地域への愛着や人間関係がより強く影響していると考えられる。

第2-2-81図 売上高に対する成長意向別、起業準備者が起業希望地を選んだ理由
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一方で、三大都市圏以外の急成長型・安定成長型では、「新しいアイデアがわいてきそうだから」、「人材を探しやすいから」、「情報収集しやすいから」の割合が三大都市圏の急成長型・安定成長型に比較して低いことが分かる。情報や人材面での課題を地方部でも解決できる具体的な対応策を示すことができれば、地方で起業を考えている者の後押しができる可能性があるといえよう。

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