5 後継決定者・積極的後継者候補・消極的後継者候補の概観
ここからは、事業承継に至るまでの実態と課題について見ていく。
本項では、「経営者参入調査」における、後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補について概観する。
〔1〕後継決定者と現経営者との関係
はじめに、後継決定者と現経営者との間柄について見る(第2-2-46図)。これを見ると、現経営者が2代目以降である場合(後継決定者が3代目以降に就任する予定の場合)は、現経営者が「父親・母親」である割合が高くなることが分かる。

〔2〕後継決定者・積極的後継者候補・消極的後継者候補が継ぐ可能性のある事業
続いて、後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補が継ぐ可能性のある事業の従業員数について見る(第2-2-47図)。これを見ると、それぞれ1~5人と回答した者の割合が高いことが分かる。

第2-2-48図は、後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補が継ぐ可能性のある事業の業種について見たものである。これを見ると、起業準備者及び起業希望者が起業を検討する業種は、サービス業が多かったのに比較して(第2-2-29図)、後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補が継ぐ可能性のある事業の業種では、建設業や製造業、不動産業でも多いことが分かる。

第2-2-49図は、後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補が継ぐ可能性のある事業の業績について見たものである。これを見ると、「安定的に利益を確保できている(と思う)」と回答した者の割合に大きな差異は見られない。このことから、後継者が事業を継ぐことを考える際に、その業績は大きくは影響しないと考えられる。

〔3〕後継決定者・積極的後継者候補・消極的後継者候補の現在の勤務先
第2-2-50図は、継ぐ可能性のある事業での従事経験について見たものである。これを見ると、積極的後継者候補の方が、消極的後継者候補に比べて「現在従事している」と回答した者の割合が高いことが分かる。

継ぐ可能性のある事業に「現在従事している」と回答した者以外で、現在会社員である後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補の勤務先の従業員数について見たものが第2-2-51図である。これを見ると、後継決定者では約4割、積極的後継者候補では約3割、消極的後継者候補では約5割が301人以上と回答していることが分かる。

〔4〕後継決定者の事業承継後の事業規模に対する意向
第2-2-52図は、後継決定者の事業承継後の事業規模に対する意向について見たものである。本節では「新しい事業分野への進出・新商品やサービスの開発をしたい」又は「新しい顧客・取引先を開拓したい」者を「拡大型」、「現状を維持していきたい」者を「維持型」、「事業規模を縮小のうえ経営したい」者を「縮小型」と呼び、これを「事業承継後の事業規模に対する意向」としてタイプ別に分析をしていく。

まず、継ぐ可能性のある事業と、事業承継後の事業規模に対する意向の関係性について見ていく。第2-2-53図は、継ぐ可能性のある事業の従業員数別に、後継決定者の事業承継後の事業規模に対する意向を見たものである。これによると、継ぐ可能性のある事業の従業員数が多いほど、拡大型の後継決定者の割合が高いことが分かる。

続いて、第2-2-54図は、継ぐ可能性のある事業の業績別に、後継決定者の事業承継後の事業規模に対する意向を見たものである。これによると、業績を一定程度把握している後継決定者は、現在の業績の良し悪しにかかわらず、拡大型が過半を占めていることが分かる。

さらに、事業を継ぎたい年齢別に、後継決定者の事業承継後の事業規模に対する意向を見たものが第2-2-55図である。これによると、若いうちに継ぎたいと考える後継決定者の方が、拡大型の割合が高いことが分かる。
