第2章 次世代の経営者の活躍
第1章では、中小企業の経営者が早めに事業承継に向けて準備することや、有用な事業や経営資源を次世代の経営者に譲り渡すことの重要性などについて見てきた。本章では、そのような事業や経営資源を譲り受ける者を含む「次世代の経営者」に着目し、分析を行っていく。具体的には、第1節で我が国の起業や事業承継の実態について、国際比較などにより概観し、第2節では起業に関心のある者や、事業を承継する可能性のある者が、経営者になるまでの実態や課題の分析を行い、第3節では起業後に成長を続けていく企業の実態や課題を明らかにすることで、経営者を増やしていくために求められる支援策などの在り方について検討していく。
第1節 経営者参入の概観
本節では、各種の統計や調査を用いて、我が国の経営者参入の実態を時系列に見るとともに、起業活動の国際比較を行うことで、我が国の経営者参入(起業・事業承継)の実態を明らかにしていく。
1 経営者参入の概念整理
はじめに、本章で「次世代の経営者」全体を分析していくに当たり、経営者参入の概念を整理する。
ここでいう「次世代の経営者」とは、新たに経営者に参入する者のことを指す。
経営者参入には、「起業」と「事業承継」がある。(第2-2-1図)。

(1)事業承継
第1章第1節で見てきたとおり、「事業承継」とは、経営者が引退しても「事業が継続する」ことを指す。つまり、参入する経営者にとっては「既存の事業を継続させる」ということになる。また、「事業承継」した場合は、事業を行うために必要な経営資源1を何かしら引き継ぐことになる。
1 「経営資源」には、事業用資産(設備・不動産)、資金、取引先との人脈、顧客情報、ノウハウなどが挙げられる。
(2)起業
ここでいう「起業」とは、新たな事業を開始することを指し、次の二つに整理する。
I経営資源の引継ぎを実施
II経営資源を引継ぎせず
最後に、「起業」を目指していた者が、新たに事業を開始するより、既存の事業を承継する方がメリットが大きいと判断し、「事業承継」により経営者になるケースも考えられる。本章ではこうした「事業承継」による経営者参入も視野に入れながら「起業」を目指す者についても扱っていく。