3 まとめ
本節では、まず第1項で、廃業企業からの経営資源の引継ぎについて見てきた。
廃業に向けた取組の中で苦労したことは、「販売先・顧客」、「従業員」、「仕入先」、「資産」などの経営資源の引継ぎに関わるものが多かった。
廃業企業からの経営資源の引継ぎの実績については、「従業員」、「販売先・顧客」、「設備」、「事業用不動産」について、該当する経営資源を保有する企業のうち、約半数が他者に引き継げていることが分かった。なお、不動産については、親族への引継ぎが多く、事業用として引き継がれた割合は、他の経営資源に比べて低かった。
他方、廃業に当たって経営資源を引き継いでいない経営者について、引き継がなかった理由を見ると、経営資源ごとに異なるものの、「引継ぎするという発想がなかった」、「引継ぐ価値があるとは思わなかった」、「引継ぎ先が見つからなかった」とする回答が多く見られた。有償で経営資源を引き継げば対価を廃業費用にも充てられるため、経営資源の引継ぎを検討する上での価格算定、経営資源のマッチング、経営資源の引継ぎという選択肢があることの周知などの支援ニーズがあると考えられる。
第2項では、休廃業・解散企業の収益状況の推移を分析した。これらの企業の利益率は解散などの数年前までは中小企業全体に遜色ない水準だが、徐々に利益率を減少させ、休廃業・解散するに至る傾向にあることが分かった。収益状況が悪化していく前に、早めに事業承継を見据えた経営改革又は廃業の準備をすることが重要だといえよう。