第1部 平成30年度(2018年度)の中小企業の動向 

第1章 中小企業の動向

我が国経済は、2012年末を境に持ち直しの動きに転じ、緩やかな回復基調が続いた結果、現在の景気回復の長さはいざなぎ景気(1965年11月~1970年7月)を超え、さらに戦後最長の景気拡張期となった第14循環の景気拡張期(2002年2月~2008年2月)をも超えて新たに戦後最長の長さとなった可能性がある。企業収益の拡大や倒産件数の減少が続き、経済の好循環が浸透する一方、2018年は度重なる災害をはじめ、人手不足の深刻化、労働生産性の伸び悩みなど、中小企業にとっては懸念点も浮き彫りになる年となった。

以下では、近年の中小企業の経済動向について概観していく。

第1節 我が国経済の現状

はじめに、我が国経済の動向について概観する。実質GDP成長率の推移を確認すると、2018年の年間成長率は0.8%となり、2017年を下回った(第1-1-1図)。2018年の動きについて四半期別に見ると、第3四半期には平成30年7月豪雨など自然災害による押下げがあったが、第4四半期には個人消費と設備投資が増加し、民需に支えられた成長となっている。ただし、情報関連財を中心とした中国向けの輸出の弱含みもあり、外需寄与度がマイナスとなっていることが分かる。

第1-1-1図 実質GDP成長率の推移
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次に産業面の活動状況について、経済産業省「鉱工業生産指数」、「第3次産業活動指数」、「建設業活動指数」、「全産業活動指数」により確認する(第1-1-2図)。まず鉱工業の活動状況については、2016年第2四半期以降持ち直してきたが、2018年に入って以降それまでの水準を維持しつつも一進一退の動きを繰り返している。次に、各種サービス業や小売業など第3次産業については、2014年第2四半期を底に持ち直しており、2018年第4四半期は現行基準で過去最高水準となっている。建設業については、2017年第2四半期に消費増税(2014年4月)前のピークである2013年第4四半期を超える水準となったが、その後は低下傾向にある。最後に、上記3つの指標を統合した全産業活動指数を確認すると、産業全体としては2014年第3四半期以降緩やかな回復基調が続き、2018年は第3四半期には災害の影響もあり足踏みしたものの、その後は再び回復基調に戻っていることが分かる。

第1-1-2図 全産業活動指数の推移
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次に、業種別に企業の景況感の推移を見るべく、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(以下、「日銀短観」という。)の業況判断DI(前期に比べて業況が「好転」と答えた企業の割合(%)から「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの)の推移を確認する(第1-1-3図)。製造業、非製造業ともにリーマン・ショック以降、回復基調を続いていたが、2018年年央以降の業況については、「良い」と答えた企業の割合が、「悪い」と答えた企業の割合を上回っているものの、おおむね横ばいで推移している。

第1-1-3図 業種別に見た業況判断DIの推移
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