1. 健全企業の経営状況
9年度 (9年度決算、10年度調査) の中小企業の経営状況は、景気の低迷、産業構造変化の進展等がせめぎ合った様相を示した。
9年度の集計対象企業のうち、全産業で「健全企業」 (営業利益及び経常利益がともに黒字決算の企業) の占める割合は、8年度の57.0%から56.7%へと0.3ポイント減少し悪化した (図表1参照)。
業種別に見ると、製造業(61.8%)のみ8年度に引き続いて健全企業の割合が増加したが、卸売業(50.6%)、小売業(46.6%)、運輸・通 信業、不動産業(50.0%)、サービス業(50.1%)、建設業(67.5%)は、8年度対比で健全企業の割合はすべて減少した。減少幅を大きい順に見ると、サービス業 -3.1ポイント、運輸・通信業、不動産業 -2.7ポイント、建設業 -1.4ポイント、小売業 -0.7ポイント、卸売業 -0.6ポイントとなっている。
○製造業
|
60.7%→61.8%
|
1.1ポイント増
|
○卸売業
|
51.2%→50.6%
|
0.6ポイント減
|
○小売業
|
47.3%→46.6%
|
0.7ポイント減
|
○運輸・通信業、不動産業
|
52.7%→50.0%
|
2.7ポイント減
|
○サービス業
|
53.2%→50.1%
|
3.1ポイント減
|
○建設業
|
68.9%→67.5%
|
1.4ポイント減
|
健全企業の経営状況を収益性、労働生産性、経営の安全性の3点から見ると、その概要は以下のとおりである。
1. 収益性 (経営資本対営業利益率など) - (図表2参照)
経営資本対営業利益率を業種別に見ると、卸売業(3.3%)の横這いを除き、他のすべての業種で8年度対比で低下した。最も大きく低下したのは建設業(4.7%)で -0.9ポイント、ついで小売業(7.8%)の -0.7ポイント、製造業(5.2%)の -0.2ポイントとなった。
経営資本回転率では、卸売業(2.5回)だけが8年度対比0.1ポイントの微増だが、製造業 (1.3回)、小売業(2.2回)、建設業 (1.6回) といずれも0.1ポイント減とわずかながら低下した。
売上高対営業利益率では、製造業(4.4%)だけが8年度対比0.1ポイント上昇し、その他の業種はいずれも低下し建設業(3.0%)の -0.5ポイント、小売業(4.3%)の -0.2ポイント、卸売業(1.6%)の -0.1ポイントとなった。
図表2.業種別 収益性関連指標 (健全企業平均) の推移
|
比率 \ 業種
|
製造業
|
卸売業
|
小売業
|
建設業
|
8年度
|
9年度
|
8年度
|
9年度
|
8年度
|
9年度
|
8年度
|
9年度
|
経営資本対営業利益率(%)
|
5.4
|
5.2
|
3.3
|
3.3
|
8.5
|
7.8
|
5.6
|
4.7
|
経営資本回転率(回)
|
1.4
|
1.3
|
2.4
|
2.5
|
2.3
|
2.2
|
1.7
|
1.6
|
売上高対営業利益率(%)
|
4.3
|
4.4
|
1.7
|
1.6
|
4.5
|
4.3
|
3.5
|
3.0
|
売上高対総利益率(%)
|
24.3
|
24.6
|
20.3
|
20.6
|
37.6
|
37.7
|
17.8
|
17.7
|
販売・管理費比率(%)
|
20.0
|
20.2
|
18.6
|
19.0
|
33.1
|
33.4
|
14.3
|
14.7
|
(注) 建設業については、売上高対営業利益率を完成工事高対営業利益率、売上高対総利益率を完成工事高対総利益率、販売・管理費比率を一般 管理費比率とそれぞれ読み替える。
2. 労働生産性
労働生産性については、製造業は「従業員1人当り年間加工高」、卸売業及び小売業は「従業員1人当り年間粗利益額」、建設業は「従業員1人当り年間完成加工高」により、それぞれ8年度と9年度を比較した。最も大きな伸びを示しているのは、卸売業の5.5%増、逆に最も減少しているのは小売業の4.5%減で、卸売業以外はすべて減少となった。
○製造業「従業員1人当り年間加工高」
11,131千円→11,106千円 0.2%減↓
○卸売業「従業員1人当り年間粗利益額」 13,976千円→14,744千円 5.5%増↑
○小売業「従業員1人当り年間粗利益額」9,876千円→9,431千円 4.5%減↓
○建設業「従業員1人当り年間完成加工高」11,376千円→11,136千円 2.1%減↓
なお、卸売業、小売業の従業員1人当り年間粗利益額は、いずれも従業員1人当り年間売上高×売上局対総利益率により算出した。
3. 経営の安全性(総資本対自己資本比率、流動比率)-(図表3参照)
経営基盤の安全性を示す指標の一つである総資本対自己資本比率は、8年度対比で製造業(35.5%)の -0.9ポイントを除いて、建設業(33.5%) + 0.8ポイント、卸売業(31.7%) + 0.5ポイント、小売業(46.8%) + 0.6ポイントといずれも増加し、わずかながら改善された。
短期債務の支払能力を表す流動比率は、9年度は製造業(164.0%)の8年度対比5.6ポイントの悪化を除いて、建設業(151.5%) + 2.4ポイント、卸売業(145.2%) + 2.2ポイント、小売業(189.5%) + 3.2ポイントと8年度対比でいずれも増加した。
図表3.自己資本比率の推移(総資本対自己資本比率)
|
|
主要業種別計数推移表 (1)
主要業種別計数推移表 (2)
主要業種別計数推移表 (3)
(注)
1. 売上高については、建設業では完成工事高である。
2. 生産高については、建設業では完成工事高、卸売業・小売業では売上高である。
3. 健全企業の平均値を掲載している。
4.平成9年度の調査で業種区分の改正を行いましたので、前々年度との数字の比較に当り、一部比較出来ない場合があります。