中小企業の価格転嫁・取引適正化に向けて青木内閣官房副長官が関係省庁に指示をしました
~「第8回中小企業の活力向上に関するワーキンググループ」を開催~
2025年7月24日
6月23日、青木内閣官房副長官の下で「第8回中小企業の活力向上に関するワーキンググループ」を開催しました。青木内閣官房副長官からは各事業所管省庁に対し、引き続き業界への働きかけを行うとともに、来年1月に施行される中小受託取引適正化法の執行体制の強化等価格転嫁・取引適正化対策を進めるよう指示がありました。
6月23日、青木内閣官房副長官の下で「第8回中小企業の活力向上に関するワーキンググループ」を開催しました。
石破政権が掲げる、「賃上げを起点とした成長型経済」の実現には、中小企業の賃上げが極めて重要です。今回のワーキンググループでは、前回のワーキンググループで青木内閣官房副長官より指示のあった事項に関する各事業所管省庁の取組状況や、先進的な事例の報告等がありました。青木内閣官房副長官からは各事業所管省庁に対し、引き続き業界への働きかけを行うとともに、来年1月に施行される中小受託取引適正化法の執行体制の強化等価格転嫁・取引適正化対策を進めるよう指示がありました。
1.中小企業の活力向上に関するワーキンググループ
中小企業の活力向上に関するワーキンググループは、取引条件の改善や生産性向上、人手不足、最低賃金引上げへの対応など、中小企業・小規模事業者が抱える課題の実態を把握し、対応策を検討する関係省庁連絡会議です。2021年1月の初開催以降、今回で第8回目となります。
これまで、産業ごとの業慣行を踏まえた取引適正化を進めるため、業界団体が策定する「自主行動計画」の徹底や改定の呼びかけ、価格転嫁の推進、手形サイトの短縮や現金払いの促進といった代金支払条件の改善、中小受託取引適正化法(取適法)・受託中小企業振興法(振興法)の改正内容の周知の呼びかけなどを議論してきました。
青木内閣官房副長官の総覧の下、中小企業庁長官及び厚生労働省政策統括官(総合政策担当)が主査を務め、各業界を所管する関係省庁の局長級が参加しています。
2.今回ワーキンググループの議論について
今回のワーキンググループでは、各事業所管省庁から所管する業界への要請状況に関する報告(10省庁から1,782団体)がありました。また、経済産業省から、自動車産業では取引適正化に向けて「Tier2より先の取引先も参加する、サプライチェーン全体でのセミナー」が実施されていることや、金融庁・国土交通省から、先進的な取組事例として以下取組の紹介がありました。
(1)損害保険業における価格交渉等の取組について
- 自動車事故の発生時、修理費用については、専門的な知見が必要なことから、損害保険会社と修理工場とが直接交渉をすることが一般的であるが、修理工場からは「損害保険会社が単価を一方的に決めている」「低い単価を押し付けられている」との声が寄せられていた。
- 金融庁として
①修理工場へのアンケートによる工賃単価に関する実態調査の結果の公表
②損害保険会社に対して、修理工場との丁寧な対話等に関する要請
を行った。
また、日本損害保険協会においても、
①修理工賃単価の対話に関して、丁寧な説明を促すガイドラインの公表
②人件費上昇分も考慮した工賃単価の引き上げ(2023年度平均2.7%、2024年度平均5%、今年度は多くのケースで8%アップ)
の取組が行われた。
(2)自動車整備業界の取組について
- 車体整備事業者からは「損保会社と自動車車体整備事業者との価格交渉において、労務費や原材料価格などが適切に転嫁できていない」との声が寄せられていた。
- 国土交通省として、
① 昨年7月、情報提供窓口を設置すると共に、金融庁等を通じて損害保険会社との対話を実施
② 本年3月、整備事業者向けの指針を策定するとともに、見積もりは損害保険会社に委ねず、自社の責任で行い、標準様式を用いて費用を適切に請求していくことなどを呼び掛け
③ 価格決定に際に用いられる「標準的な作業時間」について、国土交通省が第三者的立場から調査を予定(今年度)
また、日本自動車車体整備協同組合連合会においても、中小企業等協同組合法に基づき、大手の損害保険会社との間で団体協約を締結(協約に定める単価が下限となった)。
3.青木内閣官房副長官の発言要旨
- 私自身が4月に中小企業を訪問した際、商品開発や設備投資などの意欲的な取組を目の当たりにすると同時に「労務費の転嫁が、なかなか認められない」との切実な声を聞き、取引適正化のための取組を一層加速していかねばならないと決意を新たにした。
- 5月には改正下請法も成立し、来年1月からは取適法、振興法も施行される。サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を、新たな商慣習として定着させていく環境は整いつつあり、以下の対応をお願いする。(「指示事項(283KB)
」)
- (前回の指示事項後の対応からさらに発展した取組について)
各事業所管省庁は業界に要請した内容の取組状況をフォローアップし、先進的な事例も参考に
①価格転嫁を阻害する商慣習を具体的に洗い出し、対応方針等を策定すること
②警備やビルメンテナンス、広告などの間接経費についても、価格交渉の対象とするか検討すること
また、改めて業界や自治体に改正法を周知・徹底し、年内をめどに法改正を踏まえて各業界の自主行動計画や取引適正化ガイドラインの見直しを行うように要請すること - (改正下請法の成立をうけて)
公正取引委員会は、各事業所管省庁が、同法に基づく調査や指導を行うための調査・指導マニュアルの例を作成するとともに、法に基づく指導を行えるよう、必要な体制を整備すること - 各事業所管省庁は、そのマニュアル例も参考に、同法の調査マニュアルを整備するとともに、法に基づく指導を行えるよう、必要な体制を整備すること
- 公正取引委員会及び中小企業庁は、各事業所管省庁との間で調査のノウハウの共有など、実務的な説明・連携を行うため、事業所管省庁が参加する連絡会議を開催すること
- (米国の関税措置をうけて)
米国の関税措置に伴って日本企業に発生したコスト負担が、受注事業者に一方的に押し付けられるなど、サプライチェーン全体での取引適正化の取組が、関税措置により阻害されることがないよう、所管業界の取引実態を注視すること - (前回指示事項に対する引き続きの対応)
前回指示した「下請法の勧告を受けた事業者に対する、補助金交付や入札参加資格停止の措置の検討」を引き続き進めること
参考
<本発表のお問い合わせ先>
中小企業庁事業環境部取引課長 小高
担当者:水田、新川、保田
電話:03-3501-1511(内線 5291~7)