令和6年度における下請代金支払遅延等防止法に基づく取組
令和7年6月11日
令和6年度における下請代金支払遅延等防止法※(以下、「下請法」という。)の運用状況について取りまとめました。下請事業者の保護および取引の公正を図るため、公正取引委員会を始めとする関係機関との連携を引き続き強化するとともに、下請法の執行にあたっては厳正に対処してまいります。
- 令和7年5月23日に公布された「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」により、令和8年1月1日より、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「親事業者」は「委託事業者」と称されることとなる。
1.下請事業者等に対するオンライン調査の状況
中小企業庁及び公正取引委員会は、下請事業者の保護及び取引の公正を図るため、協力してそれぞれが下請法の執行にあたっている。その一環として、一般的に、その取引の性格から自発的に違反行為を申告しにくいとされる下請事業者に対しプッシュ型で状況を把握したり、同法の違反行為が認められた親事業者に対し違反行為の是正を求めたりするため、親事業者及び下請事業者を対象に定期的なオンライン調査を実施している。下請取引の内容は、必ずしも恒常的に同一の取引状態であるとは限らないことから、下請事業者の利益保護を図るため、中小企業庁は公正取引委員会とともに毎年継続的に調査を実施して違反行為の発見につながる情報収集に努めているところである。
令和6年度は、中小企業庁では、親事業者5.5万者、当該事業者と取引を行う下請事業者24万者に対して同調査を実施した。その結果、親事業者に対する調査において、下請法違反のおそれのある5,801者に対して、是正等を求める注意喚起文書を発出した。
2.立入検査による違反行為の確認と改善指導の状況
下請事業者等に対するオンライン調査や、下請事業者からの申告など様々な端緒情報を踏まえ、下請法違反の可能性がある親事業者に対し立入検査を実施している。令和6年度は、703者の親事業者への立入検査を行った結果、1,321件の違反行為を確認し、584者に対して改善指導を実施した。なお、このうち1件については公正取引委員会に対する措置請求を行い、公正取引委員会より下請法順守体制の整備等に関する「勧告」がなされている。
違反行為の内容としては、禁止行為の違反として支払遅延が189件、下請代金の減額が139件、買いたたきが106件認められ、改善指導の対象となった。この3類型で禁止行為違反の87%を占めている。また、価格交渉の促進や型取引の適正化に重点的に取り組んだ結果、買いたたき及び不当な経済上の利益提供要請の改善指導件数は、それぞれ前年度比139%、133%の増加となった。さらに、義務違反としては書面不備・未交付が541件、書類未保存が152件認められ改善指導対象となっており、手続規定違反の84%を占めている。引き続き親事業者には法遵守にかかる社内体制の整備が求められる。
また、改善指導のフォローアップとして、令和6年度中に594件の改善報告が親事業者からなされた(令和6年度以前の改善指導案件によるものも含む)。
(表)違反行為・改善報告の内訳
改善指導が行われた違反行為の内訳件数 | 当該年度中に提出された改善報告件数(違反行為の内訳) | ||||
---|---|---|---|---|---|
令和5年度 | 令和6年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | ||
実体+手続規定 違反合計 |
1,480 | 1,321 | 1,516 | 1,342 | |
実体規定違反 合計 |
583 | 497 | 589 | 484 | |
受領拒否 | 1 | 0 | 1 | 1 | |
支払遅延 | 218 | 189 | 217 | 188 | |
下請代金減額 | 232 | 139 | 245 | 160 | |
返品 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
買いたたき | 76 | 106 | 56 | 90 | |
購入・利用の強制 | 2 | 3 | 3 | 2 | |
報復措置 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
有償材の早期決済 | 11 | 9 | 11 | 8 | |
割引困難手形 | 16 | 18 | 27 | 11 | |
利益提供要請 | 24 | 32 | 28 | 23 | |
変更やり直し | 3 | 1 | 1 | 1 | |
手続規定違反 合計 |
897 | 824 | 927 | 858 | |
下請見直 | 74 | 60 | 71 | 63 | |
支払期日未定 | 104 | 71 | 96 | 87 | |
書面不備・未交付 | 582 | 541 | 559 | 551 | |
書類未保存 | 137 | 152 | 201 | 157 |
- 下請法違反のおそれのある改善指導件数も含む。
3.下請代金の返還
令和6年度において、改善報告を提出した親事業者594者のうち201者が、下請事業者4,951者に対して、減額した下請代金の返還や支払遅延にかかる遅延利息の支払など、総額約1億5,700万円の原状回復を行った。このうち1件は公正取引委員会に対して措置請求を行った事案であり、下請事業者9名に対して約6,700万円が返還された。
また、親事業者から下請法違反行為の自発的な申出が16件あり、下請事業者1,376者に対し、下請代金の減額分の返還等、総額約5億4,400万円の原状回復が行われた。このうち、措置請求(勧告)相当事案は7件あり、下請事業者1,313者に対し、下請代金の減額分の返還等、総額約5億4,100万円の原状回復が行われた。
<本発表のお問い合わせ先>
中小企業庁事業環境部取引課長 鮫島
担当者:佐藤、山田
電話:03-3501-1511(内線5293)