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第2章 中小企業のIT化に向けた課題

 

1.中小企業自身が取り組む課題

 

 (1) 経営者の意識改革と経営戦略

 経営者は、自社の事業活動にIT化がどのような影響を及ぼすかを把握するとともに、ITの活用事例を分析し、どのような経営革新を行いながら進めていくことが自社の売上や利益の拡大につながるかなどを検討することが必要である。IT導入が必要と判断される場合には、経営者自らが率先してIT化を推進していくことが求められる。
 また、コンピュータシステムの導入に当たっては、ベンダーサイドからのアドバイスのみならず、利用者である中小企業の視点に立ったアドバイザーやコーディネータの支援を求めるとともに、社内でIT化を具体的に推進できる中核的人材を確保することが重要である。
 経営者は、経営戦略を明確にしつつ、経営革新と相挨まったIT化を着実かつ計画的に推進させていくことが肝要である。

 (2) 組織・人材・販売力の強化

 IT化を進めるためには、できるだけ多くの社員にパソコンを手当するなど、社員のITリテラシー(活用能力)やエンプロイアビリティー(雇用されうる能力)の向上に努めることが必要である。また、IT化推進には、社内のグループ活動を活用する等により、できるだけ多くの社員を参加させることが効果的である。
 また、取引先や同業他社と情報交換を積極的に行い、自社の経営革新に適したシステムの構築や、安価で操作の容易なソフトウェア、コンピュータシステム、アプリケーションサービスプロバイダー(ASP)等の活用を図ることも重要である。
 さらに、ITを活用した新たな営業展開と発信力の強化を図るとともに、新しいビジネスモデルの探求を行うことも重要である。

2.公的機関が取り組む課題

 

 中小企業におけるITの適切な活用は我が国経済の活力強化に大きく貢献することが期待されるが、人材、資金、情報など経営資源が不足している中小企業は少なくない。したがって、国、地方公共団体、都道府県等中小企業支援センター、商工会、商工会議所、中央会等がこれらを補完するとともに、個々の企業では整備することができないIT化のための環境づくりを進めていくことが必要である。

 (1) 国の課題

 国は、中小企業のIT化推進において不可欠な低廉・高速・大容量のインターネット・アクセス網などのインフラ整備を行う必要がある。
 電子商取引については、その円滑な促進を図るため、これまでの商取引で活用している様々な機能と同等の機能や、電子商取引の特性を踏まえた信用情報の入手・提供、与信、決済、クレーム処理、取引保険、電子認証、セキュリティーの確保等の機能について、中小企業が活用しやすいように整備していくことが重要である。新たな資金調達手段として売掛債権等の流動化を促進するため、債権譲渡登記のオンライン申請を可能とするとともに、債権譲渡登記に関する情報をインターネット経由で迅速に入手できるようにするための取り組みを進めることも重要である。このような取り組みにより、中小企業の事業者間(BtoB)の電子商取引を進展させることが必要である。
 また、標準化された商品コードやビジネスプロトコル(企業間取引時の商品の呼び方や注文帳票、価格交渉や支払い方法等業務上の取決め)の開発普及、中小企業が共通して活用可能なソフトウェアの開発普及など中小企業のIT化に向けた基盤整備を推進するとともに、政府系金融機関を通じた融資等IT化に必要な資金を提供することが求められる。人材については、経営者に対するIT研修を進めるとともに、経営革新と情報化に関してバランスよく的確なアドバイスを行える人材の活用・育成に取り組む必要がある。

 (2) 地方公共団体の課題

 各地方公共団体は、地域における中小企業の情報化推進の担い手でもある都道府県等中小企業支援センターを通じて、セミナー・研修の実施、専門家の派遣、窓口相談、人的ネットワークの構築等の事業を積極的に推進することが必要である。更に都道府県等中小企業支援センターを中心として、地域中小企業支援センター、商工会、商工会議所、中央会等の地域や業界等に密接に関連した支援機関とネットワークを構築することにより、地域の特性や業界の実状に応じたIT化を支援することが求められている。
 また、地域において中小製造業に対する技術相談等を実施している公設試験研究機関は、中小企業によるCAD/CAM/CAEの活用等ものづくり分野におけるIT活用の促進に努める必要がある。

 (3) 商工会、商工会議所、中央会等の支援機関の課題

 地域に密着した商工会、商工会議所、業種別組織等の支援を行う中央会等の支援機関は、中小企業に対し、その業種・業態毎にIT化の目標・導入段階等に応じたきめ細かい実践的な研修や、経営に対するアドバイスを行うことが必要である。また、業種横断的な会員が参加している商工会、商工会議所、中央会等の支援機関が中心になって、電子認証等中小企業が電子商取引を活用していくため、必要な基盤を整備する課題に取り組むことも求められている。
 更に、インターネットへ接続する中小企業が急速に増加しているが、業種・業態が多様な中小企業にとって使いやすいインターネット上で稼働するWeb-POS、Web-EDI等に対応した共通的なソフトウェアが必ずしも開発・普及されていない。電子商取引を円滑に推進していくため、業界毎にあるいは異業種間で連携して行う取り組みに対して、中小企業団体中央会等が中心的役割を果たしていくことが求められている。

3.中小企業と公的機関が連携して取り組む課題

 

 (1) 企業間・産学間連携の促進

 企業単独では解決困難な課題について、グループ化や他社、大学等との連携の推進を通じて、情報・経営ノウハウ、技術など不足する経営資源を補完することにより、その解決に寄与していくことが有効であるが、その際ITによるネットワーク化を効果的に活用することで迅速かつ多大な成果が期待される。
 特に、技術開発や新事業開拓を推進しようとする中小企業にとって、大学や公設試等との連携を図ることは重要な課題である。IT分野において、インターンシップの有効活用や、大学や公設試等で活躍する研究者等との共同研究によって、最新情報や優れた人材に素早くアクセスすることが考えられ、これらの交流を活性化することが必要である。
 また、商店街等の商業集積においては、ITを活用し集積としての魅力を高めるための多機能カード事業やバーチャルモール事業等を進めるとともに、個々の店舗においても、小売業者同士の共同化や卸売業者との連携を図り、インターネットを利用したEOS(電子受発注システム)等を活用した商品調達の効率化等を図ることが重要である。
 更に、地域におけるIT化を推進するためには、地域に密着した活動を行っているNPO(特定非営利活動法人)、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)等との連携も今後有効な手段の一つと考えられる。

 (2) 地域内におけるIT促進運動の促進

 IT化推進には、地域におけるIT活用の普及と高度化が不可欠であり、地方公共団体や地域の中小企業グループが中心となって、その地域の大学や研究所等様々な機関とも連携をとりつつ、ITの導入・活用のための活動を地域の実情等に応じて地域全体で推進することが必要である。このため、地方公共団体が中心となり、中小企業、組合等連携組織や工業会、都道府県等支援センター等の支援機関、大学、公設試等が参加した、産学連携・ITインターンシップを推進することや、先進事例の情報交換の場を設けることが重要である。このような活動を通じて、地域のIT化運動が自律的に発展していく仕組みを構築することが必要である。また、各地域のIT化活動について相互に情報交換する全国レベルの連携活動も重要である。

 (3)ネットワーク組織の推進

 中小企業にとって喫緊の課題であるインターネットを利用した電子商取引の実現については、例えば製・配・販連携やチェーン組織等、いわゆる情報ネットワークの構築が代表例として挙げられる。例えば地域における光ファイバー敷設とコンテンツの供給等、中小企業を含む各企業等が連携してIT関連事業を実施することも、IT化の一形態として考えられる。このようなネットワーク(連携)の構築は、中小企業の創業や経営革新を促進するものであり、既存の組合等連携組織をさらに有効活用するとともに、新たなネットワーク組織に対する法人格や有限責任性の付与等当該ネットワーク(連携)の活動の容易化を図ることが重要である。


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