1.1 BCP(事業継続計画)とは
東日本大震災(平成23年3月11日発生)において、中小企業の多くが、貴重な人材を失ったり、設備を失ったことで、廃業に追い込まれました。また、被災の影響が少なかった企業においても、復旧が遅れ自社の製品・サービスが供給できず、その結果顧客が離れ、事業を縮小し従業員を解雇しなければならないケースも見受けられました。
このように緊急事態はいつ発生するかわかりません。BCPとは、こうした緊急事態への備えのことをいいます。
ただし、突発的な緊急事態がBCPの想定どおりに発生するはずもありません。また、BCPを策定していても、普段行っていないことを緊急時に行うことは、実際には難しいものです。緊急事態において的確な決断を下すためには、あらかじめ対処の方策について検討を重ね、日頃から継続的に訓練しておくことが必要なのです。
図 中小企業がBCPを策定・運用する効果のイメージ
経営者であるあなたは、日々の経営の中で雇用・人材育成、税制対応や事業承継等について考えていると思います。BCPの策定・運用、すなわち事業継続への取組は、特別なものではありません。既にあなたが考えている雇用・人材育成等と同様に、日々の経営の一環として取り組んでいくものです。
そして、BCPを策定・運用することで、あなたの会社は、緊急時の対応力が鍛えられることに加え、平常時にも大きなメリットを得ることができます。例えばBCPの策定により、自社の経営の実態(在庫管理の実態、顧客管理の実態 等)が把握でき、こうした日々の経営管理を再確認することができます。また、BCPの策定・運用により、防災に係る融資や保険の優遇が受けられる場合もある他、取引先や社外からの信用が高まり中長期的な業績向上も期待できます。
図 中小企業の経営とBCP
なお、もしBCPの策定・運用で分からないことがあった場合は、身近な商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、弁護士、会計士、税理士、金融機関等に相談することも有効でしょう。