トップページ 商業サポート 商業活性化 平成27年度地域商業自立促進事業モデル事例集 全国商店街の挑戦 協同組合 紫波町ポイントカード会

平成27年度地域商業自立促進事業モデル事例集 全国商店街の挑戦


事業の経緯

昭和47年から続くポイントカード事業
社会貢献可能なカードとしての進化を目指す

 岩手県中部に位置する紫波町は、盛岡市中心部まで電車で約20分、車で約35分の距離にあり、盛岡市のベッドタウンとして世帯数は増加傾向にある。農業が盛んで「フルーツの里」として知られており、町内10箇所の農産物直売所が人気を集めているが、紫波中央駅前の開発や町役場の移転、相次ぐ大型スーパーやドラッグストアの出店などにより、町の中心商店街である日詰商店街でも来街者は年々減少するなど、町内の商業環境は徐々に厳しいものとなっていった。
 その日詰商店街の店舗など計70店舗あまりを会員とする紫波町ポイントカード会は、昭和47年にシール式のカードでポイント事業を開始すると、平成10年には協同組合を設立し、リライト式カードに移行。カードは『銭形平次』の作者である野村胡堂氏が紫波町出身であることにちなんで「平太くんカード」という。
 ポイントカード会のメンバーは、商工会や商店街のメンバーとしても長年地域の活性化に取り組んできており、その時々の住民ニーズをくみ取れる体制ができていた。これまでにも住民のニーズに応じて町税や給食費をポイントで払えるようにする(ポイントカード会がポイントを現金化し町役場に持ち込む)など、行政との良好な関係を活かしながらポイントカードの魅力を高めるための事業を展開してきた。
 平成27年度は、特に若い世代が自動車で町外に買い物に出ていること、町民意識調査で地域支援・高齢者福祉の満足度が低かったことから、ポイントカードに子育て支援や高齢者見守り機能を新たに付与することで、今まで以上に町民に認められる社会貢献可能なシステムを構築し、商店街内の消費喚起につなげていこうと考えた。


事業の展開

子育て支援システムと高齢者見守りシステム
学校や行政と連携し導入を実現

 新システムへの切替えに当たっては、ICカード型の新たなポイントカードシステムを導入して効果を上げている秋田県鹿角市の商店街への視察を実施。子育て支援や高齢者サポートの機能を付与できるだけでなく、将来の活用の可能性も広がることから、紫波町ポイントカード会でもタブレット端末でポイントのやりとりをするICカード式の採用を決定した。
 協同組合紫波町ポイントカード会 理事長 加藤正規氏は、今回の切替えについて、「以前は500ポイント貯まると500円分の買い物に使えるという方式でしたが、今回の切替えにより1ポイント(1円)から使えるようになり、消費者の利便性が上がりました。また、最初はタブレット端末を使ってポイントをやりとりすることに苦手意識のあった高齢の商店主も、操作に慣れた今では楽しんで使っているようです」と話す。

・子育て支援システム
 子育て支援システム導入のため、IC型「平太くんカード」と連動するお守り型「安否確認キーホルダー」を製作。神社でお祓いと安全祈願をしてもらってから、小学1年生の全268人、小学2年生~6年生の希望者55人に配布した。
 下校時に小学校の昇降口に設置した「平太くんカードステーション」(安否確認まちかど端末)にお守り型「安否確認キーホルダー」をかざすと、システムに登録した保護者の携帯電話にそこを通過した時間がメールで送信されるという仕組みだ。また、子どもが「安否確認キーホルダー」をかざすことで、1日1ポイントが保護者の持つ「平太くんカード」に付与される。学校現場への導入には苦労があったものの、教育委員会や校長会と連携し、保護者への説明会の開催、子ども用のマンガ形式の説明書の配布などを行った結果、子どもの安全につながることが理解され、町内の全ての小学校(11校)に導入することができた。

・高齢者見守りシステム
 高齢者の見守りシステムは、町が地域包括支援センターや警察署と連携して実施している「高齢者見守りネットワーク」に参画する形で開始した。
 高齢者が事前に登録した日数「平太くんカード」を利用していないと本部システムにアラートが表示され、ポイントカード会担当者が電話で安否確認を行う仕組みだ。
 子育て支援システムと同様、高齢者への周知などには苦労があったが、地域包括支援センターや民生委員との連携により導入を成功させた。

事業の成果

子育て世代の取り込みに成功
高齢者見守りシステムも順調に稼働中

 子育て支援システムは小学生の子を持つ保護者から大好評。平成28年度の新1年生にもお守り型「安否確認キーホルダー」を配布済みだが、他学年のみならず、保育園児や中学生の保護者からも導入の要望が寄せられている。ランドセルなどに付けられるお守り型にしたことで、子どもたちが気軽に楽しみながらタッチすることができている。
 ポイントカード会の会員でもある日詰商店会 会長 鈴木弘幸氏は、「子育て支援サービスの導入によって、これまでは商店街に来なかった若いお母さんが『平太くんカード』を持ち始め、買い物のときにカードを出し、ポイントが貯まったらまた商店街で買い物をするという流れができ始めました」と子育て支援システムの導入が商店街の新たな顧客層獲得や売上高向上にもつながっているという実感を語った。
 高齢者見守りシステムは、平成29年2月時点で69人が登録中。アラートに基づき何度か電話をかけたが、いずれのケースも大事には至ってはいない。
 子どもに対しても高齢者に対しても見守りの役割を担うIC型「平太くんカード」は、地域の安心を支えるものとして着実に動き出している。
 また、紫波町ポイントカード会の働きかけに応じて、町内の人気の温泉施設「ラ・フランス温泉館」のポイントカードが平成28年2月に「平太くんカード」に統合されるなど、ポイントカード会としての顧客の拡大も進んでいる。
 人口3万3千人程度の紫波町にあって、IC型「平太くんカード」は現在約1万枚が発行済み。IC型への切替え以降、新たな発行希望者も多く、商店街の歩行者通行量・売上高も増加している。


今後の事業展開

子育て支援サービスの提供先拡大や加盟店舗の増加策も検討中

 今後は、子育て支援サービスを中学校へ拡大することで、広域的に子どもの見守りを行えるようにすることが目標だ。
 また、ショッピングセンターのポイントとの互換性を持たせることや、図書館や農産物直売所などとの連携で加盟店をさらに増やしていく方法も模索している。たとえば町の図書館で本を借りたらポイントが付くような仕組みを考えているが、加盟店にもメリットがないとなかなか広がっていかないことから、図書館であれば代わりにポイントカード会から本を寄付するなど、加盟店とポイントカード会がwinwinの関係を築いていけるような方法を検討していく方針だ。



(お問い合わせ先)

中小企業庁経営支援部商業課
電話:03-3501-1929(直通)