トップページ 商業サポート 商業活性化 平成27年度地域商業自立促進事業モデル事例集 全国商店街の挑戦 那覇市国際通り商店街振興組合連合会/沖縄ツーリスト株式会社

平成27年度地域商業自立促進事業モデル事例集 全国商店街の挑戦



事業の経緯

大幅に増加する外国人観光客 受入れ態勢の整備が課題に

 通りの長さがほぼ1マイル(約1.6㎞)であること、戦後の焼け野原から目覚ましい発展を遂げてきたことから「奇跡の1マイル」とも呼ばれる那覇市国際通り商店街は、国内外からの観光客で賑わう沖縄のメインストリートだ。平成21年頃からは徐々に歩行者通行量が減少し、本土からの修学旅行数も減少傾向にあったが、一方で近年は外国人観光客数が大幅に増加していた。沖縄県内全体で言えば、特にアジア圏からの観光客の増加とクルーズ船の寄港回数増を背景に平成26年では外国人客が前年比62.2%増の約90万人、国内客が同5.1%増の約620万人とそれぞれ過去最高を記録し、初めて700万人を突破した。
 しかし、このような好況に対して、那覇市国際通り商店街振興組合連合会 事務局長 砂川正信氏は「商店街として、外国人観光客の受入れ態勢が全くできていませんでした。外国人に来てもらえるのはありがたいが、まだ会話すらできない状態で、受入れ態勢を整えるには店舗のニーズをくみ取った導入しやすい仕組みづくりが必要でした」と語る。
 国際通り商店街で「推奨店」制度(店舗の商品や接客などを調査・指導したうえで水準を満たした店舗を「推奨店」としてPRする事業)を導入するなど地域に根ざした取組を行ってきた旅行会社・沖縄ツーリスト株式会社とともに検討を重ねるうちに、将来的には少子高齢化の影響などによって沖縄への航空便も減少していき国内観光客が減っていくことを知り、今後商店街として活性化していくためには外国人観光客に対する取組を行うべきだという結論に至った。

事業の展開

パスポートリーダーとリストバンド型ICタグ「スマイルタグ」の導入で買い物環境を向上

 外国人観光客が買い物で期待することの一つは“免税”だが、商店街では平成27年2月時点で免税対応の店舗が6店舗しかない状態であった。その上、免税手続きは手書きで処理を行うため1回当たり15分ほどの時間を要していた。そこで、30秒ほどで免税処理を行えるパスポートリーダーの導入を決定。また、外国語を話せるスタッフがいないことから免税店になるのを敬遠する店舗もあったため、接客用の多言語指さし会話シートや両替所などの場所を記載した外国語の商店街マップも作成し、国際通りが消費税免税に対応できる商店街であると世界に発信できるよう環境 整備を行った。
 「便利な機械を導入しても、外国人観光客が来たら対応に困るという店舗もあるし、手間の掛かることはやりたくないと言う店主もいましたが、商店街に協力をいただきながら地道に説いて回り免税対応店を増やしていきました」と沖縄ツーリスト株式会社 観光部部長 石坂彰啓氏は語る。
 導入に際して問題となったのは、クルーズ船からの利用者がパスポート本体を船に置いたまま、その拡大コピーだけを持って来街することだった。既存のパスポートリーダーでは拡大コピーを読み取ることができなかったため、地元のIT企業の協力を得て拡大コピーでも読み取れるパスポートリーダーを新たに開発。クルーズ船の客にも対応できる独自の仕様を構築したことで、個店も免税対応店になることを受入れてくれた。
 次に導入したのが防水性のリストバンド型ICタグ「スマイルタグ」だ。「スマイルタグ」にはあらかじめ600円分の電子マネーがチャージされており、加盟店での支払いに使用できるほか、パスポート情報を紐付けることも可能で、専用端末に「スマイルタグ」をかざすだけで免税手続を行うことができる。電子マネーは上限25,000円分まで現金でチャージすることができ、スマイルタグの保有者にはスマートフォンを通じて店舗からのお得な情報やクーポンの配信が行われるため効果的な集客が可能になるというメリットもある。計画当初は個店からの反対もあったが、「スマイルタグ」の普及を推進している沖縄ツーリスト株式会社とともに勉強会を開催し、外国人対応の必要性と「スマイルタグ」の利便性を説いていった。
 また、「スマイルタグ」と連動するゲームモニターを商店街内の10店舗に設置。スタンプラリーなどの企画により、買い物をする大人だけでなく子どもたちにも「スマイルタグ」が活用されることとなった。「子どもたちがゲームをしながら走り回る姿が見られるようになりました。付き添う家族も楽しみながら複数の店舗を回るようになっています」と石坂氏は語る。
 さらに、地域住民同士や観光客との交流の場として、商店街内の2箇所にコミュニティセンターを設置。「スマイルタグ」の受付・登録(パスポート情報などの入力)やチャージに対応し、店舗情報の提供など地域の情報発信基地としても機能しているほか、「沖縄伝統ブクブクー茶体験」や「沖縄民謡三線ショー」などのイベント会場としても活用されている。

事業の成果

免税対応店舗が6店舗から81店舗に増加
各店舗がインバウンド対応に積極的に

 商店街内の免税対応店舗は平成28年2月時点で81店舗まで増加し、平成29年度にもさらなる拡大を予定している。また「スマイルタグ」は平成28年3月時点で2万本を配布しており、荷物を持ちながら、赤ちゃんを抱きながらでも買い物が可能になり来街者の利便性が大幅に向上し、日本円を使い慣れていない外国人観光客の消費促進にもつながっている。平成28年度の「自動認識システム大賞」(主催:(一社)日本自動認識システム協会)を受賞し様々な団体から視察が訪れるなど今後のインバウンド対応において先進的な取組として非常に注目されている。事業実施後は、商店街の歩行者通行量・売上高ともに増加中。インバウンド需要の取り込みに積極的な姿勢を見せる店舗も増えている。


今後の事業展開

「スマイルタグ」を用いた安全対策など幅広い活用方法の可能性を検討

 沖縄を訪れる外国人観光客は今後も増加していくと見込まれるため、商店街は引き続き免税対応店舗の拡大や「スマイルタグ」の機能充実などさらなる受入れ態勢の整備に取り組む構えだ。また、「スマイルタグ」の活用方法によっては、国内観光客にも需要があると考えている。
 「現在はGPS対応のスマイルタグもあります。スマイルタグをつけていれば行動履歴がわかりますので、たとえば修学旅行生につけてもらうことで生徒がいつどこにいるかを把握することができ、安全対策としても活用できると思います。あらかじめ決まった金額をチャージして現金を持ち歩かないようにすれば金銭トラブルも回避できるでしょう。また、観光バス利用者の点呼もスマイルタグを用いて行うことができるため、乗降時間が短縮でき、常態化している渋滞の解消にもつながると思います」と石坂氏は今後の幅広い可能性を語る。また、「スマイルタグ」の使用履歴から消費志向や行動パターンを分析し、より効果的・効率的な販売戦略につなげていくことも検討しているところだ。
 商店街は、「スマイルタグ」の活用で来街者の利便性を高めることで、エリアの価値を高め、様々な来街者のニーズに応えられる魅力ある商店街であり続けることを目指している。



(お問い合わせ先)

中小企業庁経営支援部商業課
電話:03-3501-1929(直通)