平成27年度地域商業自立促進事業モデル事例集 全国商店街の挑戦
事業の経緯
「人が住み、人が集うまち」を目指して地域住民の生活を支える機能を商店街に集約
高松丸亀町商店街は、市の中心商業地区の真ん中に位置する全長約470mの商店街だ。昭和47年にはモータリゼーションの進展を見据えて、自ら不動産会社を設立し町営駐車場の建設に取り組むなど、早くから先進的な取組を行い常に地域の賑わいの中心を担ってきた。しかし昭和63年に瀬戸大橋が開通すると、県外への顧客の流出が起こり、郊外型大型店舗の出店も進むなど、来街者数は徐々に減少していった。
このような状況に危機感を覚えた商店街は、青年会が中心となって平成2年に「丸亀町再開発委員会」を発足。「人が住み、人が集うまち」を目指し、商店街を7つの街区にゾーニングし街区ごとに「飲食店の集積」「美と健康のゾーン」などと特徴を持たせながら商店街全体のレイアウトに取り組んできた。
また、不足業種の誘致だけでなく、イベント広場やカルチャー教室、診療所など、住民の生活を支える機能を商店街に集約することで定住人口の増加につなげていこうと計画した。
高松丸亀町商店街振興組合開発担当副理事長明石光生氏は、これらの取組について、「郊外のショッピングセンターには住めないが、商店街には住むことができる。住みやすくて快適な商店街をつくれば必ず街として生き残ることができる」と語る。
平成27年度は、地域住民にとってもっと「住みやすくて快適な街」になるべく、地場産品を活かした生鮮市場の開設と、地域住民の足となる循環バスの新路線の整備に着手することとした。


事業の展開
地場産品を取り扱う生鮮市場の開設と「まちなかループバス」の整備を実施
・生鮮市場「丸まるマルシェ」の開設
平成24年に地域住民を対象に行ったニーズ調査では、生鮮直売所の設置を求める声が多く、特に20~30歳代の女性からの要望が多かった。
また、それ以外の住民も生鮮食品を購入する際には鮮度を重視していることが判明した。
商店街は、事業計画を策定するに当たって、県の農水産品の調査と県外2箇所の農産物直売所の視察を実施。その結果、生鮮市場の設置によって地元生産者は流通にかかるコストの削減というメリットを享受できること、また市場としては地場産品を取り扱えば大手メーカーと競合しないこと、生鮮3品(青果・精肉・鮮魚)を付加価値の高い惣菜や弁当に作り変えて販売することで利益率が高くロス率の低い運営が可能になることが判明した。
この結果を踏まえて、ビル1階の空き店舗を改修し、約91坪の生鮮市場「丸まるマルシェ」を整備。
設置・運営に当たっては町営駐車場の建設など古くから商店街と一体となった取組で地域の活性化に携わってきた高松ライフシステム株式会社と連携し、生鮮品・惣菜・弁当・グロサリーの販売スペースのほか、ランチ営業を行うレストランを併設した。生鮮商品をレストランの日替わりメニューとして活用することで、さらなるロス率の低下を実現している。
販売スペースには有機野菜や香川県産の米「讃岐のしずく」、オリーブハマチなど様々な地場産品が多数並んでおり、グロサリー部門でも香川県や四国の中小食品メーカーの無添加食品などを取り扱いナショナルブランドは一切置かずに運営をしている。
・循環バス「まちなかループバス」の整備
次に取り組んだのが、循環バスの整備だ。もともと商店街は平成17年からことでんバス株式会社に業務委託する形でJR高松駅と商店街とを結ぶ「まちバス」(1周約30分)を運行していた。これは、商店街が駅や既存のバス停からそれぞれ300m~1㎞ほどの距離にあり、商店街への自然な人の流れが発生しないという状況を踏まえて開始したものだ。
平成27年度は、この「まちバス」をより便利なものにしようと、ことでんバス株式会社との連携による新路線の整備を実施。ことでんバスの「市民病院ループバス」「県立中央病院線」との統合を行い、4台のバスで1つの循環ルートを両回りで運行する「まちなかループバス」を新たに誕生させた。
1周約40分、大人150円・子ども80円の均一料金制で、「まちバス」で使用していたマイクロバスを車いすやベビーカーでも乗降しやすいノンステップバスに切替えた。
商店街としては病院などを回る路線と統合したことで新たな来街者層の獲得が見込めたこと、ことでんバス株式会社としては利用者数が安定していた病院路線をより多くの人に知ってもらうという効果が見込めたことが、両者の連携が実現したポイントだった。
バス停の新たな設置場所や運行ルートについては、事前に説明会や広報を繰り返し、地域住民に周知した。
「丸まるマルシェ」前にも新たなバス停が設置され、「まちなかループバス」で来店する人の姿も多く見られている。
事業の成果
休日の路上販売で市場の周知に成功
「まちなかループバス」の利用者数も増加中
「丸まるマルシェ」のオープン当初は地域住民への周知がなかなか進まず利用者数も伸び悩んでいたが、平成28年3月からは休日に店舗の宣伝も兼ねて生鮮野菜の路上販売を開始しており、利用者数・売上高ともに増加傾向だ。ナショナルチェーンにはない地場産品を求めて、地域住民はもちろん、遠方から訪れる人もいる。
「まちなかループバス」も利用者数は右肩上がり。従来のことでんバス「市民病院ループバス」「県立中央病院線」の利用者にも商店街をPRすることができており、高齢者からは「『まちなかループバス』ができたことよって外出機会が増えた」などの声も聞かれている。





今後の事業展開
未来の商店街像を見据えて新たな工夫で売上高・利用者の増加を目指す
商店街では将来地域の核として大規模な市場を整備する計画を立てており、今回整備した「丸まるマルシェ」はそのパイロット店としての役割も担っている。「丸まるマルシェ」は正面入口が商店街のメイン通りに面しておらず、新規開業店舗の環境として恵まれたものではないが、現場リーダーには明確なノルマを課すなど自走できる店づくりのためのノウハウの蓄積を進めている。
現在の現場リーダーは野菜ソムリエの資格を有しており、地場の珍しい野菜には味の特徴やおすすめの料理法を記載したポップを作成するなど工夫を凝らした取組で売上の向上に努めている。今後は生産者と連携したオリジナル商品の開発も計画中だ。
また、「まちなかループバス」では、商店街での買物金額に応じて乗車サービス券を発行しているが、今後は近隣の商店街とも連携するなど乗車サービス券の発行範囲を拡大することを検討中だ。より効率的な運行のため、利用者の年齢層や行動パターンの分析も行っていく。


(お問い合わせ先) 中小企業庁経営支援部商業課電話:03-3501-1929(直通) |