【鹿児島県鹿児島市】宇宿商店街振興組合

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住みやすく住民が楽しめるまちづくり

取組の背景

振興組合(前身の宇宿通り会を含む)は、地域の人口増加、商店街との接点の増加に向けて、生活しやすい環境整備や、商店街と地域社会との絆を構築するための取組を商店街として長年推進。
2005年頃から商店街地区周辺への量販店の出店が相次ぎ、来街者が減少。来街者を増やすために、「鹿児島で住みたい街No.1」を目指して取組を進めている。

取組のポイント

ポイント1 住みやすいまちを作る

振興組合は、地域の人口を増やし、来街者を増やすため、駅やシャトルバス等の誘致による地域の交通アクセスの充実や、街路灯設置や道路整備等による安全・快適な環境の整備を行い、住みやすいまちづくりを行っている。

交通アクセスの充実を図るための取組

駅

JR(当時国鉄)宇宿駅や市電駅を誘致。
住民の利便性が向上し、来街者の増加に繋がっている。

シャトルバス

商店街と鹿児島大学病院を結ぶシャトルバスを誘致。
1日に34便が運行し、沿線団地住民等の生活の足として活用されている。

【図1】商店街地区とJR宇宿駅,市電脇田駅、シャトルバスバス停の位置関係図商店街地区とJR宇宿駅、市電脇田駅、シャトルバスバス停の位置関係図

安全・快適な環境を整備するための取組

防犯

商店街に58基の街路灯を整備。街路等に防犯カメラを取付け、地域の安全・安心に繋げている。

歩道

カラー舗装による交通安全への注意喚起、バリアフリー化を行うなど、歩きやすい歩道を整備し、安全性と回遊性を高める(市と連携)。

車道

人通りの多い市電脇田駅からJR宇宿駅までの道路を、通行車両がスピードを出しにくくなる仕掛けを整備し、歩行者の安全性を高めている。

地域の中心に位置する脇田コスモタウンにある屋根付きの広場は、イベント開催にも使用され、 自然と人が集まる。地域のコミュニティ形成の場として重要な役割を担っている。

理事長(コメント)
商店街として駅やシャトルバスの誘致を行ったが、設置できたのは幸運であったとも思う。シャトルバスの誘致は20年かかった。商店街内で降りれば、市電やJRに乗り換えも可能。交通利便性が非常に高い商店街になった。宇宿に住みたいという声も最近よく寄せられる。
脇田コスモタウンは、雨や灰よけになり休むことができる。灰が降ると周辺は灰だらけになるが、ほっとする施設となっている。人が集まる場所は、まちづくりにも商店街の活性化にも重要な役割を果たす。

ポイント2 住みやすさと楽しさを提供する

まちづくりを行うにあたっては、インフラを整え住みやすいまちにすることに加え、地域住民が地元や商店街に愛着を持ち、住み続けたいと思うようなまちにすることも必要。
振興組合は、 30年以上にわたり年間20以上のソフト事業を実施 。楽しみを提供するとともに、地域住民が商店街やまちづくりに関与する機会や、商店街や公園などの地域資源を活用して人が交わる場を作り、地域の結びつきを強化している。地域の子供達へのふるさと教育も行い、ローカルファーストのアイデンティティを醸成している。

理事長(コメント)
近くに量販店があれば、皆さん行きます。しかし、少しの工夫で、地元のお店にも足を運んで頂けるようになる。イベントなどの様々な取組を通じて、商店街と地元住民の方との絆をきちんと作るための取組を行っている。

イベントの実施の際は、振興組合内に実行委員会を設置。県、市、消防、警察、近隣地区の商工会、銀行、町内会、学校、神社など、組合員以外の地域の機関の協力も得て実施。振興組合が事務局となって、県庁との協力により開催した県内商店街のグルメ大会「Show-1グランプリ」では1万人超を集客。商店街の知名度を高め、地域外からの来街を促す取組も行っている。

図5 実行委員会説明会
実行委員会の様子

災害時にも安心できる場を提供するため、「ぼうさい朝市ネットワーク」に所属。災害時には、加盟する全国の商店街から救援物資がすぐに届くようになっている。東日本大震災では、被災地への協力も行った。
また、商店街地区周辺の量販店とは、対立するのではなく、振興組合の賛助会員として、連携することにより、地域住民の利便性も高めている。

量販店との連携

まちづくりの考えに賛同した半径2km圏内の量販店を、振興組合の賛助会員として振興組合に加入。賛助会員の店舗においても、プレミアム商品券利用を可能としたことにより、地域住民の利便性を高めることに成功。賛助会員は、振興組合のお祭りに協賛するなど、対立するのではなく、協力関係を築いている。

理事長(コメント)
量販店出店の際は、商店街として反対したが、量販店と商店街が連携することによって、住む人が便利になり、住民が増えると良いと考えた。住む人が増えることによって、商店街に訪れる方が増え、商店街の個店や地域の発展に繋がると考えている。量販店と商店街が共存共栄していくことを目指している。

ポイント3 ビジョン作成・組織運営

駅やバスなどの環境整備が進んだ状況を踏まえ、商店街として「鹿児島で住みたい街No.1」を目指すこととし、ターゲット、 KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とKPI(Key Performance Indicatior:KGIを達成するための中間指標)を設定しながら、PDCA表の作成。毎年度取組の振り返りと翌年度の取組を決定。報告書を作成して会員・賛助会員等に説明することにより、継続した取組に繋げている。

【図7】街づくりの設計図となるPDCAサイクル表街づくりの設計図となるPDCAサイクル表

PDCAサイクルを効果的に実施するポイント

Plan

「商店街は、地域の人がいて初めて成り立つ」ことを認識し、どのように住民を大事にしていくかをテーマとして、5つの目標(柱)を設定。5つの目標(柱)は変えない。

Do

ビジョンを実現するために毎年内容を更新。課題があれば、必要に応じて弁護士など専門家に相談しながら実施。

Check

「組合員・他の事業者」「住民・行政等」「まちの将来像」の3つの観点から評価。住民からの評価は、地域内の小学校・中学校のPTAに協力を依頼。来街者への聞き取り調査やシャトルバス待合室へのアンケート設置による調査なども必要に応じて実施。

Action

毎年2月・3月の理事会において、取組の振り返りと翌年度の取組を決定。新規出店を更に促進するような取組を加えることとし、継続して行う事業と変更する事業を取捨選択して毎年取組を改善している。実施事業の内容や担当者の役割などを視覚的にわかりやすくした報告資料を作成し、会員・賛助会員等に説明することにより、透明性の確保や関係者間の理解が深まり、継続した取組にもつながっている。

理事長(コメント)
PDCA表をいざ作るとなると敷居が高いと感じるかもしれないが、作り始めると簡単。次の取組への変更時期を考えるのにも使える。毎年実施していくうちに、やり方が分かっていき、皆が積極的に取り組むことができるようになる。
取組や構想を作る段階では、反対意見も十分に聞き、次善案を出すよう求める。合意があれば止める選択もするが、何かを変えなければ衰退することを認識して取り組んでいる。

組合内での合意形成は、なるべく全員で会議を行う。内容に応じて、賛助会員の意見も確認。決して一部の人だけで進めず、全体の納得感を得て事業を行う。また、会議での決定事項を明確に示すために、理事長自ら理事会での議事録を作成。議事録や支出内容を会員・賛助会員に共有することにより、透明性を確保し、組合活動への理解も深める。

商店街の個店がどのように稼いでいくか、組合がどのように資金を得て事業を継続的に実施し、地域の活性化に繋げるかを考えるにあたり、金融機関や講師を招いた勉強会等を実施。論理的な議論の方法についての勉強会なども行っている。
青年部は、現在商店街で商売をしていない者も含め11名所属。朝清掃や夏祭り等の事業を通じ、商店街の運営を学ぶことで、後継者を育てている。

理事長(コメント)
後継者問題はどこにでもあると思うが、カリスマ性のある中心人物がいなくても、2-3人の中心人物が得意分野に応じて分担しつつ議論しながらまとめていくのでもよいのではないか。

取組の成果

長年、住みやすいまち作りに向けた環境整備を行い、また、「鹿児島で住みたい街No.1になる」とのスローガンを掲げ、PDCAサイクルを効果的に実施しながら様々な取組を行うことで、地域住民・商店街内の商業者に関連する様々な指標で効果が現れている。
周辺人口は、2016年の7,054世帯14,719人から、2024年2月には7,651世帯(1.08倍)15,183人(1.03倍)と増加。宇宿小学校の児童数は2000年の418名から徐々に増加し、2023年には19学級573名(1.37倍)となった。振興組合が中心となって地域住民と一緒にローカルファーストの街づくりを行うことで、地域住民から「宇宿は便利で暮らしやすい」「商店街で買い物やサービスを利用するのが楽しい」「宇宿の街に誇りを持っている」といった声も寄せられている。
2024年の商店街内の空き店舗率は4.2%で、鹿児島市の平均10.0%と比較して5.8%低い。若い経営者が運営する店舗も増えており、店舗店主の平均年齢は、60~70代から48.9歳に大幅に下がっている。

有識者の視点
和歌山大学経済学部 足立基浩教授

取組事例のポイント・・・

宇宿商店街の取組は、長期的な視点に立ち、住みやすいまちを作るための基盤整備を行うとともに、まちへの愛着を育てている点に特徴がある。
基盤整備については、商店街が駅・シャトルバスを誘致し、住民から求められている交通を整備するなど、利便性を高めている。交通と人口は相関しており「便利な街」というイメージが定着した。また、歩道は、途中で切れたりせず、歩きやすく整備されており、安心して歩くことができるウォーカブルなまちづくりが行われている。
近年の商店街は、物販・サービスだけでなく、むしろコミュニティとしての機能が求められており、安全に歩いて通え、休むことができるコミュニティ施設が整備されていることは重要である。商店街はコミュニティの源泉であり、コミュニティの核としての存在が重要となる。
一般的に20代から50代は、ショッピングセンターや大きな店舗に行く傾向があり、商店街のマーケティングで重要とされるのは高齢者と若者である。宇宿商店街振興組合では、商店街のターゲット層を大切にしたソフト事業を多数行うなど、街に愛着をもってもらえるような取組を行っている。
基盤整備やソフト事業の実施に際し、PDCAサイクルをしっかり回していることも注目される。「Plan」「Do」に取り組む商店街は多いが、「Check」まで行っている商店街は他にあまりない。 KPIを設定し、取り組みを振り返ることにより、有用な施策に絞って取り組むことができる。また、賛助会員という制度を作ることで、組合員以外の量販店等も含めた多様な主体の意見を反映することが可能となっている。

他商店街で参考とするポイント・・・

まちの未来を見据えて、20年~30年の長期的視点でまちづくりを進める視点を参考とすべきである。おじゃったもんせ市や商人選手権などは、コミュニティ形成や次世代の育成を目指した試みであり、未来を見据え愛着を持ってもらうために必要な取組となっている。今後の商店街は未来を見据えてPDCAサイクルを回し、戦略的に意思決定を行っていくことが求められる。

商店街概要

名称: 宇宿商店街振興組合
所在地: 鹿児島県鹿児島市宇宿3丁⽬1番1号
会員数: 27名
店舗数: 90店舗(小売業15店、飲食業27店、サービス業31店、金融業3店、不動産業4店、医療サービス業5店、その他5店)
電話: 099-257-9690
URL: http://www.usuki.or.jp/外部リンク

宇宿商店街振興組合

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