平成30年度において講じようとする中小企業施策

第2章 事業承継・再編・統合による新陳代謝の促進、人材不足への対応

第1節 事業承継支援

1.中小企業再生支援・事業引継ぎ支援事業(事業引継ぎ支援事業) 【30年度予算:68.8億円の内数】

後継者不在等の問題を抱える中小企業・小規模事業者に対し、各都道府県の各認定支援機関に設置されている「事業引継ぎ支援センター」において、事業引継ぎ等に関する情報提供・助言等を行うとともに、M&A等によるマッチング支援を実施する。

平成30年度は、「事業承継ネットワーク(下記参照)」や中小企業支援機関との連携を強化するほか、引継ぎ支援センターの体制を強化し、事業者に対して早期かつ計画的な事業承継を促進するとともに、より小規模なM&A等によるマッチング支援体制を強化する。(継続)

2.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度(事業承継税制) 【税制】

事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「事業承継税制」を、今後5年以内に承継計画(仮称)を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象とし、抜本的に拡充する。具体的には、〔1〕対象株式数・猶予割合の拡大、〔2〕対象者の拡大、〔3〕雇用要件の弾力化、〔4〕新たな減免制度の創設等を行う。

〔1〕対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担が生じない制度とする。

〔2〕親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援する。

〔3〕5年間で平均8割以上の雇用要件を未達成の場合でも、猶予を継続可能にする(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)。

〔4〕売却額や廃業時の株価を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免。経営環境の変化による将来の不安を軽減する。

※以上のほか、相続時精算課税制度の適用範囲の拡大及び所要の措置を講じる。(継続)

3.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置の創設

後継者が不在のため事業承継が行えないといった課題を抱える場合、いわゆるM&Aにより経営資源や事業の再編・統合を図ることにより、事業の継続・技術の伝承等を図ることが重要。そのため、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画(仮称)に基づいて再編・統合を行った際にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減することで、次世代への経営引継ぎを加速させる措置を創設する。(新規)

4.経営承継円滑化法による総合的支援

経営承継円滑化法には遺留分の制約を解決するための民法の特例をはじめとした総合的支援が盛り込まれており、民法特例の適用の基礎となる経済産業大臣の確認を実施する。(継続)

また、M&Aによる事業引継ぎに際して、社外第三者(後継予定の者)に生じる株式買収資金等の資金ニーズに対応するため、買収を行う中小企業者等の代表者未就任のものも対象に含むよう、金融支援の対象範囲を拡充する。(継続)

5.事業承継円滑化支援事業

全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施する。(継続)

6.事業承継・世代交代集中支援事業(プッシュ型事業承継支援高度化事業)

各都道府県に拠点を置く支援機関等による、地方自治体等と連携した、地域における事業承継支援ネットワークを構築することにより、地域で行う事業承継支援を促進する。各地域の事業承継支援において中核的役割を果たす支援機関において、国から地域別・業種別休廃業リスク分析等の高度なデータの提供を受けた上、それらデータの分析結果に基づいて、特に支援が必要とされる地域・業種に対して、集中的かつ効果的に、プッシュ型の働きかけを行う。データ分析やその活用等を効果的に行うため、中核的支援機関に対して、必要なスキル・能力を担当者に取得させる研修・講習会を行うことを支援し、専門的視点・資質をもったコーディネーターを配置する。(新規)

7.事業承継・世代交代集中支援事業(事業承継補助金)

事業承継・世代交代を契機として、経営革新や事業転換に挑戦する中小企業に対し、設備投資・販路拡大・既存事業の廃業等に必要な経費を支援する。また、サプライチェーンや地域に根付いた価値ある事業の継続のために、事業再編・事業統合を促進して、サプライチェーンや地域経済の活力維持、発展を図る取組に必要な経費を支援する類型を新設する。(継続)

8.小規模企業共済制度

小規模企業の経営者に退職金を支給する小規模企業共済制度について、引き続き、制度への加入促進と共済金等の支給を着実に実施する。(継続)

第2節 人材・雇用対策

1.地域中小企業人材確保支援等事業 【30年度予算:18.5億円の内数】

経営資源の乏しい中小企業・小規模事業者の人材の確保を支援することを目的に、地域特性に合わせ、各地の中小企業・小規模事業者が必要とする人材を地域内外から発掘、紹介、定着等人材確保支援を実施する。(継続)また、中小企業が中核人材を確保するための中小企業等との持続的なスキームの検討(成功事例の創出)を実施する。(新規)

2.中小サービス業中核人材の育成支援事業 【30年度予算:0.85億円】

中小サービス事業者の次世代経営人材を育成し、サービス産業の生産性を向上させるため、中小サービス事業者と優良企業をマッチングし、実地研修(一定期間の”修行”)を組成する。研修を通して経営の成功の鍵を体得する機会を提供し、研修に要する費用の一部を補助する。(継続)

3.スマートものづくり応援隊等事業 【29年度予算:16.7億円の内数】

製造現場の経験が豊富な人材や、IoTやロボットに知見を有する人材等が指導者としての汎用的なスキルを身につけるための研修を実施し、育成した指導者を製造業等の中小企業・小規模事業者の現場に派遣することで、こうした企業の生産性向上や新規事業開拓を促進することを目指す。平成30年度は補助率を1/2にし、全国40拠点の整備を目指す。(継続)

4.小規模事業者支援人材育成事業 【30年度予算:18.5億円の内数】

商工会・商工会議所の経営指導員等が行う、経営指導の能力向上に向けた研修を全国各地で実施する。(継続)

5.中小企業等支援人材育成事業 【30年度予算:1.2億円】

開業・経営に必要なスキルや空き店舗対策、合意形成の手法等のまちづくり特有のスキルの習得を図る座学研修及びインターシップ型実地研修を実施することで、まちづくりを牽引するタウンマネージャー等を育成する。(継続)

6.中小企業大学校における人材育成事業

全国9か所にある中小企業大学校において、中小企業の経営者、管理者等を対象に経営課題の解決に直接結びつくような研修等を実施。(継続)また、地域の事業者からのアクセス改善に向けた研修の拡充や、高度実践プログラムの導入などの機能強化を本格的に実施する。(継続)

7.中小企業・小規模事業者人材育成支援事業 【30年度予算:25.0億円の内数】

中小企業等で働く経営者・管理候補者となり得る従業員等を対象に、〔1〕社会人基礎力講座や〔2〕中小企業等で求められる専門スキル講座を、座学やウェブ講座など多様な形式で提供する。(新規)

8.ふるさとプロデューサー育成支援事業 【30年度予算:10.5億円の内数】

地域の関係者を巻き込み、地域資源を活かした魅力ある産品を「地域ブランド化」し、販路開拓及び地域への呼び込みを行う取組の中心的担い手となることができる人材育成の取組を支援する。(継続)

9.労働者の雇用維持対策 【30年度予算:52.3億円】

景気の変動等に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練又は出向により、労働者の雇用の維持を図った場合に、雇用調整助成金を支給する。また、本助成金については、不正受給防止対策にも積極的に取り組んでおり、不正受給を行った事業主名等の公表、実地調査の実施等、本助成金のより一層の適正な支給に努める。(継続)

10.魅力ある雇用創出に向けた雇用管理の改善の支援 【30年度予算:175.9億円】

人材確保等支援助成金において、企業の雇用管理改善の取組を支援し、魅力ある雇用創出を図るため、中小労確法に基づき各都道府県知事に改善計画の認定を受けた中小企業団体(事業協同組合等)が労働環境向上事業を行った場合に助成を行う。また、中小企業・小規模事業者等が雇用管理制度を新たに導入し、1年経過後に従業員の離職率を低下させた場合に助成を行う。また、介護福祉機器を導入し、従業員の離職率を低下させた場合に助成を行う。加えて、保育事業主及び介護事業主が、賃金制度の整備を通じて従業員の離職率を低下させた場合にも助成する。さらに、能力評価を含む人事評価制度等を整備し、生産性向上、賃金アップ及び離職率低下を実現した場合に助成を行う。なお、雇用管理の改善を図る事業主が、「雇用管理改善計画」を作成し、当計画に係る設備投資を行い、一定の雇用管理改善及び生産性の向上を達成した場合に助成する、「設備改善等支援コース」を平成30年4月に創設予定。さらに、本助成金において雇用管理制度助成コースの助成を受けた中小建設事業主が若年者及び女性の入職率に係る目標を達成した場合や、中小建設事業主が、雇用する登録基幹技能者の賃金テーブルまたは資格手当を増額改定した場合に助成を行う。また、建設事業主又は建設事業主団体が若年者及び女性労働者の入職、定着の取組を実施した場合や、職業訓練法人が建設工事における作業に係る職業訓練の推進を行った場合に助成する。その他、中小建設事業主が被災3県に所在する作業員宿舎等の整備を行った場合や、中小元方建設事業主が建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した場合、職業訓練法人が認定訓練の実施に必要な施設等の設置等をした場合に助成を行う。(継続)

11.地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース) 【30年度予算:34.1億円】

地域における雇用の創出及び安定を図るため、雇用機会の不足している地域等において事業所の設置又は整備を行い、併せて地域の求職者等を雇い入れる事業主に対して、設置等の費用及び雇入れ人数に応じて助成を行う地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)を支給する。(継続)

12.地域活性化雇用創造プロジェクト 【30年度予算:53.2億円】

地域における安定した良質な雇用の創出に向けた取組を推進するため、産業政策と一体となって正社員雇用の創出に取り組む都道府県を支援する地域活性化雇用創造プロジェクトを実施する。(継続)

また、平成30年度より、中小企業・小規模事業者の働き方改革に資する取組を実施する都道府県に対して、補助額の上限を引き上げる等の特例を設ける。(新規)

13.失業なき労働移動の推進 【30年度予算:63.6億円】

事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者等(再就職援助計画対象者等)に対して、その再就職を実現するための支援を民間職業紹介事業者に委託等して行う事業主に対して「労働移動支援助成金(再就職支援コース)」を支給する。また、再就職援助計画等の対象となった労働者を早期に雇い入れたり、当該労働者に対して訓練を行った事業主に対して「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」を支給する。さらに、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、生産性向上を図るための中途採用者の採用を拡大した事業主に対して「労働移動支援助成金(中途採用拡大コース)」を支給する。(継続)

14.人材確保対策推進事業 【30年度予算:25.8億円】

福祉分野(介護・医療・保育)に特化して支援を行っていた福祉人材コーナーを、建設、警備、運輸等を含めた人材不足分野における総合的な専門支援を行う体制に拡充し、マッチング支援の強化を図る。(継続)

15.若者雇用促進法に基づくユースエール認定制度 【30年度予算:5.6億円の内数】

若者の雇用管理が優良な中小企業について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号)に基づき、厚生労働大臣が「ユースエール認定」企業として認定し、中小企業の情報発信を後押しすることにより、当該企業が求める人材の円滑な採用を支援する。(継続)

16.最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者支援 【30年度予算:29億円】

最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援として、

〔1〕働き方改革に関する相談等にワンストップで対応するため、「働き方改革推進支援センター」を全国(47カ所)に設置し、無料の相談対応・専門家派遣を実施する。(新規)

〔2〕傘下企業の労働時間短縮や賃金引上げに向けた生産性向上に資する取組を行う中小企業団体に対し、その取組に要した費用を助成する。(新規)

〔3〕全国47都道府県の中小企業・小規模事業者を対象として、生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内の時間給1000円未満の労働者の賃金を30円以上引き上げた場合に、その設備投資などに要した費用の一部を助成(助成率7/10、企業規模30人以下の小規模事業者は3/4)するとともに、賃金引上げ労働者数に応じて助成上限額上乗せする(1~3人:50万円、4~6人:70万円、7人以上:100万円)。(継続)

17.キャリアコンサルティングの普及促進

民間職業紹介・就職支援機関や企業の人事管理・人材育成部門、学校におけるキャリア教育などにおいて、キャリアコンサルティング(労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと。)の活用について普及促進を進める。平成28年4月には、キャリアコンサルティングを行う専門家として「キャリアコンサルタント」を国家資格化したことから、当該資格の周知を進める。また、企業等に対しては、労働者のキャリア形成における「気づき」を支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みである「セルフ・キャリアドック」の普及拡大を推進する。(継続)

18.所得拡大促進税制 【税制】

賃上げや人材投資等に取り組む中小企業等を強力に支援するため、平成30年度税制改正において、従業員等への給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税等から税額控除する所得拡大促進税制を拡充することとしている。具体的には、〔1〕平均給与を前年度比で1.5%以上増加させた場合、前年度からの給与総額の増加額に対して、15%の税額控除、さらに、〔2〕平均給与を前年度比で2.5%増加しており、人材投資や生産性向上に取り組む場合には、前年度からの給与総額の増加額に対して、25%の税額控除を受けられるものとすることとしている。(継続)

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