第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

第5節 まとめ

本章では、中小企業のM&Aを中心とする事業再編・統合について概観してきた。

経済の構造的な変化により、中小企業が継継的に売上規模の成長を図っていくことはますます難しくなっている。加えて、経営者の高齢化と後継者不在を抱える企業ではM&Aが事業承継の手段として有効な選択肢となっている。こうした背景から、中小企業のM&Aが近年着実に増加していることが分かった。

実際に買い手としてM&Aを実施している企業は、商圏の拡大や商品・サービスの拡充による売上・利益の増加を通じ、付加価値を向上させ労働生産性の向上を図っていることが分かった。こうした付加価値向上を図るためにも、買い手・売り手双方の事業間の相乗効果を発揮することが重要である。またM&Aの相手先の目的を見ても、事業承継が多く、後継者難の企業の事業承継の選択肢として活用されているといえよう。

M&Aの実施に当たっては実行段階ごとでいくつかの課題が挙げられているが、M&Aの推進のためにはマッチングの円滑化を図っていくことが重要である。そのためにも、金融機関、専門仲介機関、士業専門家といった当事者以外の支援機関の役割が重要であり、支援機関同士が連携し専門性の補完やマッチングを図り、様々なニーズに対応していくことが期待される。

今後のM&Aの活用に関しては、程度の差はあるものの、半数程度の企業が何らかの関心を持っていることが分かった。中小企業でもM&Aの活用が成長戦略の一つとして検討が進みつつあり、今後活用が進むことが期待される。また、買い手は、売上・市場シェアや事業エリアの拡大の手段として活用を検討する一方で、売り手は、事業の承継の手段として検討されており、こうしたニーズ同士を結び付けていくことが中小企業の生産性向上のみならず、我が国経済の生産性向上にも資すると期待される。

M&Aについての理解が、中小企業やその支援機関に広まるとともに、より多くの企業のニーズがマッチングされ、M&Aを通じた中小企業の生産性向上につながっていくことを期待して本章の結びとしたい。

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