第1部 平成29年度(2017年度)の中小企業の動向

6 海外展開

冒頭に述べたとおり、2017年の実質GDP成長率は輸出の好調さに先導されているといえる。そこで本項では中小企業の海外展開の状況について確認していく。中小企業のうち輸出を行っている企業数の推移を見るため、経済産業省「企業活動基本調査」を用いて確認すると、2004年以降輸出を行っている中小企業の数は総じて増加基調にあり、2015年では4,544社が輸出を行っている(第1-1-20図)。また、輸出企業割合についても緩やかな上昇傾向で推移しており、2015年は21%となっている3

3 「企業活動基本調査」は、従業者50人以上かつ資本金又は出資金3,000万円以上の会社を対象としており、中小企業基本法上の中小企業のうち相対的に規模の大きい会社の実態を捉えたものとなっている。このため、輸出企業の割合は、小規模企業を含めて考えた場合と比較して、上振れている可能性がある。

第1-1-20図 輸出企業数・輸出企業割合の推移
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次に中小企業の輸出額及び売上高輸出率について見ると、輸出額、売上高輸出比率ともに年々増加している(第1-1-21図)。輸出額は2001年度当初2.6兆円だったところ、足下の2015年度について見ると、およそ2.5倍の6.2兆円まで推移している。また、売上高輸出比率については、当初2.3%だったところ2015年度は4.1%まで割合を増加させた。

第1-1-21図 中小企業の輸出額・売上高輸出比率の推移
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続いて、中小企業の海外展開の有無別、輸出の有無別の労働生産性について比較する。海外に子会社または関連会社を1つでも持つ企業を海外展開有りの企業とすると、海外展開を行っていない企業より行っている企業が、また、輸出を行っていない企業より行っている企業のほうが、労働生産性が高い傾向にあることが分かる(第1-1-22図)。

第1-1-22図 海外展開の有無別・輸出の有無別の生産性比較
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また、規模別・業種別に分類した、直接投資を行う企業の数の推移についても確認する(第1-1-23図)。まず直接投資企業の総数の推移を見ると、リーマン・ショック後の2009年に一旦減少したことを除けば、総じて増加傾向にある。このうち中小企業の割合について見ると、2001年には4,143件で直接投資企業数全体の68.2%を占めていたところ徐々にその割合を増やし、2014年には6,346社と全体の72.4%を占めるにまで至っている。

第1-1-23図 企業規模別・業種別直接投資企業数の推移
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次に中小企業が海外需要を上手く取り込んでいる状況を見るべく、訪日外国人数について日本政府観光局「訪日外客数の動向」を、インバウンド消費について観光庁「訪日外国人消費動向調査」を用いて訪日外客数の推移を確認する(第1-1-24図)。1990年代から2000年代初頭にかけて訪日外国者数は400万~500万人前後で推移していたが、東日本大震災の影響で2011年に一時的に落ち込んだものの、以降は従来を大きく上回るペースで伸び、2017年はおよそ2,900万人と20年前と比べて6倍程度まで増加した。また、訪日外国人の消費額を見ると、年々順調に増加し2017年の消費額は2011年の5倍以上にまで消費額が増加していることが分かる。

第1-1-24図 訪日外国者数及び旅行消費額の推移
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次に、訪日外国人の旅行消費額の費目別構成比について確認すると買物代が4割弱と最も多く、次に宿泊代金、飲食費と続くことが分かる(第1-1-25図)。併せて中小企業の小売業、宿泊業、飲食業の売上額DIについて確認すると、訪日外国者が増加を始めた2011年から足下の2017年にかけて緩やかに上昇しており、これらの背景の一つとして、中小企業が海外需要を上手く取り込んでいる可能性が示唆されている(第1-1-26図)。

第1-1-25図 訪日外国人旅行消費額の費目別構成比
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第1-1-26図 中小小売業、宿泊業、飲食業の売上額DIの推移
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