第8章 その他の中小企業施策
第1節 環境・エネルギー対策
1.中小企業等の温室効果ガス削減量等を認証する制度(J-クレジット制度)における手続等支援【27年度予算:5.8億円】
J-クレジット制度は、中小企業等の設備投資による温室効果ガスの排出削減量等をクレジットとして認証する制度であり、制度運営や事業計画の作成支援等を実施した。また、本事業では、カーボンフットプリント(CFP)制度で「見える化」された、製品・サービスのCO2排出量をクレジットにより埋め合わせるカーボン・オフセットの仕組みの基盤整備を実施し、J-クレジット制度の下で創出されるクレジットの需要開拓も推進した。本事業により、中小企業等の省エネ設備投資等を促進し、クレジットの活用による国内での資金環流を促すことで環境と経済の両立を図った。
2.CO2排出量の「見える化」とクレジットの活用による環境配慮型事業活動の促進【27年度予算:1.0億円】
中小・小規模企業等の製品やサービスについて、カーボンフットプリントにより製品・サービスのライフサイクル全体のCO2排出量が見える化され、クレジットで埋め合わされた(オフセットされた)ことを認証するとともに、専用ラベル(どんぐりマーク)の貼付を認める制度を運用し、カーボン・オフセット製品等の普及を支援した。
また、専用ラベル集票により、学校などの地域団体に環境に優しい製品・サービスが還元される仕組みを運用し、消費者に環境配慮製品の購買促進を図るとともに、中小企業・小規模事業者等の環境に配慮した事業活動を後押しした。本制度には33事業者104件が参加した。
3.環境・エネルギー対策資金(公害防止対策関連)
中小企業の公害対策を促進するため、公害防止設備を導入する事業者に対して日本公庫による低利融資を行う制度である。平成27年度においては、必要な見直しを行い、措置期間を平成28年3月31日まで延長した。
件数 | 金額 | |
---|---|---|
大気汚染関連 | 4件 | 111百万円 |
水質汚濁関連 | 3件 | 57百万円 |
産業廃棄物・リサイクル関連 | 53件 | 4183百万円 |
4.公害防止税制【税制】
公害防止税制は、中小企業を含む事業者の公害防止対策に対する取組を支援するため、公害防止用設備(汚水又は廃液処理施設)に係る課税標準の特例及び、公害防止用設備を取得した場合の特別償却等の措置を講じるものであり、平成27年度末に適用期限が到来する公害防止用設備(汚水又は廃液処理施設)に係る課税標準の特例措置について、適用期限を2年延長した。
5.エネルギー使用合理化等事業者支援事業【27年度予算:410億円】
工場・事業場等における省エネ設備・システムへの入替や製造プロセスの改善等の改修により省エネや電力ピーク対策を行う際に必要となる費用に対し補助を行った。また、平成27年度からは工場間で一体となった省エネの取組を支援対象に加えた。
6.エネルギー使用合理化特定設備等導入促進事業【27年度予算:26.1億円】
省エネ設備や一部のトップランナー機器の導入を促進するため、民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、利子補給を行った。事業実施に当たっては地域金融機関等との連携を強化し、地域の中小・中堅企業等の積極的な省エネ投資を後押しした。
7.省エネルギー対策導入促進事業【27年度予算:5.5億円】
中小企業者等に対し、省エネ・節電ポテンシャルの導出をはじめとした診断事業等を実施した。また、診断事業で得られた事例や省エネ技術を様々な媒体を通じて情報発信した。
8.中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業【27年度補正予算:442.0億円】
導入する設備ごとの省エネ効果等で簡易に申請が行える制度を創設し、高効率な省エネ設備への更新を重点的に支援することで、中小企業等の事業の生産性や省エネ性能を向上させ、競争力の強化につなげる。
9.環境関連投資促進税制【税制】
青色申告書を提出する個人及び法人が省エネや再エネの導入拡大に資する設備を取得等した場合には、初年度においてその取得額の30%の特別償却又は7%の税額控除(中小企業者案)ができる税制措置を引き続き講じた。また、風力発電設備を取得等し、その後事業の用に供した場合には、普通償却限度額に加え、取得価額まで特別償却ができる税制措置(即時償却)が、平成27年度税制改正において、1年延長された。
10.地域低炭素投資促進ファンド事業【27年度予算:46.0億円】
一定の採算性・収益性が見込まれるものの、リードタイムや投資回収期間が長期に及ぶこと等に起因するリスクが高く、民間資金が十分に供給されていない再生可能エネルギー事業等の低炭素化プロジェクトに民間資金を呼び込むため、これらのプロジェクトに対し、「地域低炭素投資促進ファンド」からの出資を行った。
11.エコリース促進事業【27年度予算:18.0億円】
低炭素機器の導入に際して多額の初期投資費用(頭金)を負担することが困難な中小企業等に対し、リース料総額の一部を補助することによって、頭金なしの「リース」の活用を促進し低炭素機器の普及を図った。
12.エコアクション21
「エコアクション21」は、平成27年12月末時点で認証・登録事業者数は7500となった。より中堅・中小事業者等に取り組み易い環境経営システムとなるよう、エコアクション21ガイドラインの改訂検討を開始した。また、エコアクション21の仕組みを基礎に、CO2削減に特化したプログラムの試行事業を行い、250社の中堅・中小企業が環境経営を開始した。
第2節 IT化の促進
1.政府系金融機関の情報化投資融資制度(IT活用促進資金)【財政投融資】
中小企業におけるIT・デジタルコンテンツの普及変化に関連した事業環境の変化に対応するため、日本公庫による融資を着実に実施した。平成27年度(平成28年1月末時点)の貸付実績は2,493件、272億円となった。
第3節 知的財産対策
1.特許出願技術動向調査【27年度予算:11.7億円】
日本産業界の研究開発戦略や知的財産戦略の構築を支援するために特許出願動向等について調査を行い、特許庁ホームページ等を通じて情報発信している。
平成27年度は、「情報セキュリティ技術」等の社会的に注目を集めている技術分野や「情報端末の筐体・ユーザインターフェース」等の中国において出願が急増している技術分野等の20の技術テーマについて調査を実施した。
2.中小企業外国出願支援事業【27年度予算:6.3億円】
中小企業等による戦略的な外国出願を促進するため、都道府県等中小企業支援センター及び全国実施機関としてジェトロを通じて、外国への事業展開等を計画している中小企業に対して、外国への出願に要する費用(外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等)の一部を助成した。
3.知的財産権制度に関する普及【27年度予算:0.8億円】
知的財産権制度に関する知見・経験のレベル応じて、知的財産権制度の概要や基礎的知識について説明する初心者向けと、特許・意匠・商標の審査基準や、審判制度の運用、国際出願の手続等、専門性の高い内容を分野別に説明する実務者向け、及び最新の法令改正事項を広く説明する法改正の説明会を開催した。
平成27年度は、47都道府県において初心者向け説明会を57回、全国の主要都市で実務者向け説明会を62回、法改正の説明会を33回実施した。
4.中小企業海外侵害対策支援事業【27年度予算:1.2億円】
中小企業の海外での適時適切な産業財産権の権利行使を支援するため、ジェトロを通じて、模倣品に関する調査から模倣品業者に対する警告・行政摘発手続に要する費用を補助した。採択件数は23件と26年度に比して倍増した。また27年度からは新たに、海外で現地企業等から知財権侵害で訴えられた場合の弁護士への相談費用や訴訟に要する費用についても補助を行った。採択件数は2件であった。
5.特許戦略ポータルサイト【27年度予算:0.1億円】
特許庁ホームページ内の特許戦略ポータルサイトでは、パスワード交付申込みのあった出願人に対し、インターネットを通じて、自社の直近10年間の特許出願件数、審査請求件数、特許査定率等のデータが掲載された「自己分析用データ」を提供した。
6.中小企業向けの特許料等の軽減
積極的に研究開発を行う中小企業等を対象として、審査請求料や特許料(第1年分から第10年分)を半額に軽減する措置を引き続き実施した。
また、2014年から中小ベンチャー企業・小規模企業等を対象として、審査請求料、特許料(第1年分から第10年分)、国際出願に係る手数料(調査手数料、送付手数料、予備審査手数料)を1/3に軽減する措置及び国際出願手数料や取扱手数料の2/3に相当する額を交付する措置を実施した。
7.早期審査・早期審理制度
出願人や審判請求人が中小企業・小規模事業者の場合、「早期審査に関する事情説明書」や「早期審理に関する事情説明書」を提出することにより、通常に比べ早期に審査又は審判を受けられるようにした。平成27年度の早期審査の申請件数は12,412件に上った(平成27年12月末現在)。
8.中小企業の知財に関するワンストップサービスの提供(知財総合支援窓口)【27年度予算:29.0億円INPIT交付金含む】
中小企業等が企業経営の中で抱える知的財産に関する悩みや課題に対し、その場で解決を図るワンストップサービスを提供するため、「知財総合支援窓口」を都道府県ごとに設置し、窓口に支援担当者を配置した。また、専門性が高い課題等には知財専門家を活用し解決を図るほか、中小企業支援機関等との連携、知的財産を有効に活用できていない中小企業等の発掘等を通じて、中小企業等の知財活用の促進を図った。
平成27年度は、全窓口に配置している弁理士及び弁護士の配置回数を原則倍増したほか、平成27年度特許法改正を受け、職務発明規程に関する支援を行う専門家の拡充を行うなど、支援体制を強化した。平成27年度の支援件数は約140,000件に上った(平成28年1月現在)。
9.営業秘密に関するワンストップ支援体制の整備(「営業秘密・知財戦略相談窓口~営業秘密110番~」)【27年度予算:INPIT交付金の内数】
平成27年2月2日に独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)に新設した「営業秘密・知財戦略相談窓口~営業秘密110番」においては、知財総合支援窓口とも連携して、主に中小企業を対象に特許としての権利化、営業秘密としての秘匿化を含むオープン・クローズ戦略等の具体的な知的財産戦略に加え、秘匿化を選択した際の営業秘密の管理手法、また営業秘密の漏えい・流出等に関する相談に専門家が対応した。特に営業秘密の漏えい・流出事案や情報セキュリティ対策、サイバーアタックについても、相談内容に応じて、警察庁や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)とも連携して対応可能な体制を継続した。加えて、営業秘密・知財戦略セミナーの開催やeラーニングコンテンツ開発等による普及・啓発活動も実施した。
10.新興国等知財情報データバンク【27年度予算:0.3億円、INPIT交付金の内数】
新興国等でのビジネスに関わる我が国の企業の法務・知財担当者等を対象に、各国の知財情報を幅広く提供することを目的とする情報発信ウェブサイトであり、新興国等を対象に出願実務、審判・訴訟実務、ライセンス実務情報、統計・制度動向等の情報を提供している。
平成27年度は、中東、アフリカ地域を中心に記事を作成した(平成28年2月末現在:掲載記事数1467件)。
11.海外知的財産プロデューサー派遣事業【27年度予算:INPIT交付金の内数】
独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)において、海外での事業内容や海外展開先の状況・制度等に応じた知的財産戦略策定等、海外における事業展開を知的財産活用の視点から支援するため、海外での事業展開が期待される有望技術を有する中小企業等に対して、知的財産マネジメントの専門家(海外知的財産プロデューサー)を派遣している。
平成27年度は、5人の海外知的財産プロデューサーにより、282者(平成28年2月末現在)の支援を行った。
12.出張面接審査・テレビ面接審査【27年度予算:0.2億円】
全国各地の中小・ベンチャー企業等の方々への支援を目的として、全国各地の面接会場に審査官が出張する面接審査、及び、インターネット回線を利用し出願人自身のPCから参加できるテレビ面接審査を実施した。
13.中小企業等特許情報分析活用支援事業【27年度予算:1.4億円】
中小企業等における効果的な研究開発や権利化等の知財活用を促進するため、中小企業に加えて、地方公共団体、公設試験研究機関、商工会や商工会議所等も対象とした「研究開発」、「出願」及び「審査請求」の各段階のニーズに応じた包括的な特許情報分析支援を行った。
14.知財金融促進事業【27年度予算:1.0億円】
中小企業の知財を活用したビジネスの価値・評価を「見える化」して、金融機関からの融資につなげる包括的な取組を実施した。具体的には、調査会社が中小企業の知財を活用したビジネスの価値・評価を「見える化」した「知財ビジネス評価書」を作成し、知財の専門人材が不足している金融機関に提供することで、同ビジネスが、中小企業への融資判断に適切に反映されることを目指した。知財ビジネス評価書の作成支援件数は150件。
また、知的資産経営についても普及・支援を実施した。
15.日本発知財活用ビジネス化事業【27年度予算:5.6億円】
中堅・中小企業の知的財産を活用した外国でのビジネス展開の促進を支援するため、ジェトロを通じて以下の取組を行った。
〔1〕専門家による国内でのセミナー・研修や、海外での複数回にわたる個別面談などを通じて、海外でのライセンスビジネスにつなげるビジネスモデル構築を支援し、イベント等商談機会を提供した。
〔2〕海外での展示会出展、商談会参加等を通じ、ビジネスパートナー候補との商談機会の提供等の支援を実施した。
〔3〕技術流出の予防を目的として、知財専門家による助言等を実施した。
〔4〕有望な知財を保有する我が国の中堅・中小企業の魅力を技術流出に配慮しながら海外に多言語で発信した。
16.地域中小企業知的財産支援力強化事業【27年度予算:1.5億円】
中小企業の様々な課題や地域特性等に応じたきめ細かな支援により中小企業の知財保護・活用を促進するため、意欲の高い地域の支援機関等から先導的・先進的な知財支援の取組を経済産業局を通じ募集し、広域の連携した先導的仕組みづくりを重視した15件の取組を支援した。
17.特許情報の提供
特許情報について、高度化、多様化するユーザーニーズに応えるべく「特許電子図書館」を刷新し、新たな特許情報提供サービス「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の提供を平成27年3月より開始した。J-PlatPatは使いやすいインターフェースを備え、国内の特許、実用新案、意匠、商標の公報の検索や、経過情報の照会機能等を有している。
また、外国特許文献、特に急増する中国・韓国特許文献を日本語で調査できるように「中韓文献翻訳・検索システム」の提供を平成27年1月より、ASEAN等の日本企業の進出が著しい諸外国の特許情報を照会する「外国特許情報サービス(FOPISER)」の提供を平成27年8月よりそれぞれ開始した。
第4節 標準化の推進
1.中堅・中小企業等における標準化の戦略的活用の推進
「日本再興戦略」改訂2015、知的財産推進計画2015に基づき「新市場創造型標準化制度」を活用して、日本工業標準調査会において、中堅・中小企業から提案のあった9件について、平成27年5月と12月、平成28年1月に標準化を行うことを決定した。
さらに、自治体・産業振興機関、地域金融機関、大学・公的研究機関(パートナー機関)と一般財団法人日本規格協会(JSA)が連携し地域において標準化の戦略的活用に関する情報提供・助言等を行う「標準化活用支援パートナーシップ制度」を平成27年11月に創設・運用開始した。
第5節 調査・広報の推進
1.施策の広報
中小企業施策を普及・広報するため、施策のポイントをまとめたパンフレットやチラシを作成し、各地方公共団体や中小企業支援機関、金融機関等に配付したほか、ミラサポ(中小企業支援ポータルサイト)を通じた情報発信やイベント「一日中小企業庁」の開催等により、広く普及・広報を実施した。
(1)冊子類の発行
中小企業施策を利用する際の手引き書として200以上の施策を紹介した「中小企業施策利用ガイドブック」や施策別のパンフレットを作成し、中小企業、地方公共団体、中小企業支援機関(商工会、商工会議所等)、金融機関、中小企業を支援する税理士、弁護士、公認会計士、中小企業診断士等に広く配布した。
(2)「一日中小企業庁」の開催
開催地の都道府県と中小企業庁が共催し、地元中小企業者の方々に最新の施策を紹介し、理解を深めていただくとともに、意見交換や交流の場を設け、今後の中小企業施策の見直し・拡充等に反映させるイベントを開催した。昭和39年度以来、毎年度開催しており、平成27年度は、沖縄県、福島県において開催した。
(3)インターネットを活用した広報
〔1〕ホームページによる広報
中小企業庁ホームページにおいて、中小企業施策に関する最新情報、公募に関する情報、広報のためのチラシ、冊子等を公表した。平成27年度は、年間約3,500万ページビューのアクセスがあった。
〔2〕メールマガジン
各中小企業支援機関と連携し、元気な中小企業の紹介、施策情報、地域情報、調査・研究レポート等の情報をメールマガジン登録者に、毎週水曜日に配信した。メールマガジン登録者数は、約89,000件(平成27年12月末現在)。
(4)ミラサポ(中小企業・小規模事業者の未来をサポートするポータルサイト)
ミラサポを通じて最新の支援情報や補助金申請のノウハウ、活用事例などを分かりやすくタイムリーに全国の中小企業に届けた。(会員数:93,00、ミラサポメルマガ登録数:59,000 平成28年1月)
2.中小企業白書/小規模白書の作成
中小企業の現状や課題を把握するため、中小企業基本法第11条の規定に基づく年次報告等(平成27年(2015年)版中小企業白書)を作成した。また、小規模企業の現状や課題を把握するため、小規模基本法第12条の規定に基づく年次報告等(平成27年(2015年)版小規模企業白書)を作成した。
3.中小企業実態基本調査
中小企業の売上高、従業者数等の経営・財務情報に関する統計を整備するため、中小企業基本法第10条の規定に基づく中小企業実態基本調査を実施した。
4.中小企業景況調査の公表
中小企業の景気動向を把握するため、四半期ごとに中小機構が実施する中小企業景況調査の公表を行った。