平成27年度において講じた中小企業施策
第1章 被災地の中小企業へのきめ細かな支援
第1節 被災地の中小企業・小規模事業者対策
1.東日本大震災復興特別貸付【27年度予算:205億円の内数】
東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、平成23年5月より、株式会社日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)(国民生活事業及び中小企業事業)・株式会社商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)において、「東日本大震災復興特別貸付」を継続的に実施している。本制度の運用を開始した平成23年5月23日から平成28年1月末までの貸付実績は、約28万8千件、約6兆円であった。また、原発事故に係る警戒区域等の公示の際に当該区域内に事業所を有していた中小企業・小規模事業者や、地震・津波により事業所等が全壊・流失した中小企業・小規模事業者に対しては、県の財団法人等を通じ、実質無利子化する措置も平成23年度に創設(平成23年8月22日より措置)しているところ、平成27年度も引き続き実施した。
2.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置【財政投融資】
東日本大震災により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対し、無担保・無保証・低利で利用できる日本公庫によるマル経・衛経融資の貸付限度の拡充(通常枠とは別枠で1,000万円。)、金利引下げ(別枠1,000万円につき、貸付後3年間に限り、通常金利から更に0.9%引下げ。)を引き続き実施した。平成27年4月から平成28年1月末までに、マル経融資で547件、18.1億円、衛経融資で11件、0.3億円の融資を実施した。
3.東日本大震災復興緊急保証
東日本大震災により被害を受けた中小企業等を対象に、既存の一般保証や災害関係保証、セーフティネット保証とは別枠の新たな保証制度を平成23年度に創設。平成27年度も、特定被災区域内において引き続き実施した(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円。)。本制度の運用を開始した平成23年5月23日から平成28年1月末までの保証承諾実績は、約12万3千件、約2兆5千億円であった。
4.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」
原子力発電所事故の被災区域に事業所を有する中小企業等が福島県内において事業を継続・再開する場合に必要な事業資金(運転資金・設備資金)を長期・無利子、無担保での融資を行った。
第2節 二重債務問題対策
1.「産業復興相談センター」及び「産業復興機構」による事業再生支援【27年度予算:30.6億円】
平成23年度に、被災各県の中小企業再生支援協議会の体制を拡充して「産業復興相談センター」を設立するとともに、債権買取等を行う「産業復興機構」を設立することで、東日本大震災により被害を受けた中小事業者等の事業再生支援を強化した。各県の産業復興相談センターにおいては、平成28年2月26日までに4,989件の事業者からの相談に対応しており、そのうち対応を終了したものは4,859件となった。主な実績としては、金融機関等による金融支援について合意した案件は902件、うち債権買取は324件となった。
2.「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」による事業再生支援
被災事業者の二重ローン問題に対応するため、東日本大震災事業者再生支援機構では旧債務に係る返済負担の軽減等の支援を実施した。東日本大震災事業者再生支援機構では、平成24年3月5日の業務開始以来これまでに2,416件の相談を受け付けており、そのうち662件の事業者に対して、債権買取等の再生支援を行う旨の決定をした(平成28年2月末現在)。
3.再生可能性を判断する間の利子負担の軽減【27年度予算:184億円】
東日本大震災及び原子力発電所の事故による被害を受けた中小企業者や小規模事業者等が産業復興相談センターを活用した事業再建に取り組む際に、金利負担を低減することにより、早期の事業再生の実現を図ることを目的とする事業、具体的には産業復興相談センターの再生計画策定支援を受けた被災事業者に対し、再建手続き期間中に発生する利子を補填するもの。平成23年度に創設。平成27年度も引き続き実施した。
4.被災中小企業復興支援リース補助事業の実施
被災中小企業の二重債務負担の軽減を図るため、東日本大震災に起因する設備の滅失等により債務を抱えた中小企業に対し、設備を再度導入する場合のリース料の10%を補助した。
第3節 工場等の復旧への支援
1.中小企業組合等協同施設等災害復旧事業【27年度予算:400.0億円】
東日本大震災に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、
〔1〕複数の中小企業等から構成されるグループが復興事業計画を作成し、地域経済や雇用維持に重要な役割を果たすものとして県から認定を受けた場合に、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助、
〔2〕商工会等の中小企業者のための指導・相談施設等の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2の補助、
を実施し、被災された中小企業等のグループ等の施設の復旧等に対して支援を行った。
なお、従前の施設等への復旧では事業再開や継続、売上回復が困難な場合、新分野需要開拓等を見据えた新たな取組の実施も支援した。
2.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け
東日本大震災により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、「中小機構」という。)と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行った。
3.仮設施設整備事業・仮設施設有効活用等助成事業【27年度予算:14.2億円の内数】
東日本大震災の被害を受けた中小企業者等の早期事業再開を支援するため、中小機構が、仮設工場や仮設店舗等を整備し、被災市町村を通じて原則無償で貸し出す事業を実施しており、平成27年12月末までに、6県52市町村585箇所に施設を設置している。また、平成26年4月より、仮設施設の本設化、移設、撤去に要する費用の助成を実施しており、平成28年1月末時点で13件助成を実施している。
4.事業復興型雇用創出事業【27年度予算:122億円】
被災地での安定的な雇用を創出するため、産業施策と一体となって雇用面から支援を実施した。また、一定の範囲で移転費助成を行うことができるよう制度の拡充を行った。
第4節 その他の対策
1.特別相談窓口等の設置
全国の日本公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小機構地域本部等及び経済産業局に特別相談窓口を設置し、東日本大震災の被災中小企業者等からの経営・金融相談に応じた。
2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施
どこに相談したらよいか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を実施した。
3.官公需における被災地域等の中小企業者に対する配慮【27年度予算:5.5億円の内数】
毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」において、東日本大震災の被災地域等の中小企業・小規模事業者に対する配慮等を盛り込むとともに、周知徹底を図った。また、被災地域等の中小企業者の受注機会の増大を図るため、国等においては、当該地域の中小企業を見積もり合わせに含める、入札説明会を当該地域で実施するなどの取組を行った。
4.独立行政法人日本貿易保険(NEXI)による対応
被災者支援として、NEXIでは平成23年4月当時、罹災した中小企業を対象とした〔1〕保険契約諸手続の猶予、〔2〕被保険者義務の猶予・減免、〔3〕被保険者の経済的負担の減免措置を実施。風評被害への対応として、放射能汚染を理由とした貨物の輸入制限・禁止等による損失のうち、新たな規制が導入されて輸入が制限又は禁止されるケースや仕向国政府による違法又は差別的な対応を受けるケース等、貿易保険によりカバーする整理を新たに行い、具体事例を公表し付保。現在も食品等海外向け取引について、風評被害の海外向け取引について付保を実施している。
5.被災者雇用開発助成金【27年度予算:19.3億円】
東日本大震災による被災離職者等の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給した。また、対象労働者を10人以上雇い入れる事業主に対して助成金を上乗せした。
6.放射線量測定指導・助言事業【27年度予算:0.4億円】
東日本大震災、原子力災害による工業製品等の風評被害への対策として、放射線量測定等に関する指導・助言(工業製品等の表面汚染測定又は核種測定等を行うとともに、指導・助言及び同測定に関する情報提供等)を行う専門家チームを派遣する事業等を実施した。また、工業製品の放射線測定等に関する正しい理解の普及にも取り組んだ。
7.工業品等に係るビジネスマッチング・商品開発支援事業【27年度予算:1.13億円】
東日本大震災、原子力災害により、被災地域の持続的な復興や地域経済の活性化を図るため、福島県全域及び岩手県、宮城県の津波浸水地域等を対象に、国内外を問わず被災地域産品の販路開拓(ビジネスマッチング、商品開発)を支援した。
8.震災等対応雇用支援事業【27年度予算:107億円】
被災地における雇用の復興には時間を要し、依然として多くの被災者が避難をしているため、被災者の一時的な雇用の場を確保し、生活の安定を図るための事業を実施した。