第1部 平成27年度(2015年度)の中小企業の動向

第1章 我が国経済の動向

我が国経済は、2012年末より持ち直しに転じており、企業収益の拡大が賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結びつくという、「経済の好循環」が回り始めている。しかし、企業と家計の所得増に比べると、設備投資や個人消費等、支出への波及には遅れがみられる。こうした内需の弱さに、中国経済を始めとする新興国経済の減速の影響等も加わり、最近では生産面にも弱さが現れている。本章では、消費、投資、輸出等のGDPの項目ごとに、2015年度における我が国経済の動向を概観していく。

1 最近の我が国の景況

我が国経済は、2012年末から2013年にかけて、企業収益の拡大や雇用環境の改善等の持ち直しの動きを示した。2014年に入ってからは、消費税率引き上げによる駆け込み需要と反動減により大きく変動したものの、2014年末には持ち直しの動きを見せ、2015年に入っても景気は緩やかな回復基調が続いている。しかし、設備投資や個人消費等の支出面の回復には遅れがみられる。

2015年に入ってからの実質GDP成長率の動きをみると、1-3月期は前期比+1.1%と比較的高いプラス成長となったが、4-6月期は▲0.1%と小幅なマイナス成長、7-9月期は+0.3%と再びプラス成長となり、10-12月期には▲0.3%とまたマイナス成長となった(第1-1-1図)。2015年年間では、+0.5%とプラス成長であった。需要項目別にみると、個人消費は、雇用・所得環境の改善傾向が続く下で、2015年1-3月期には持ち直しの兆しがみられていたが、4-6月期にはマイナスとなった。7-9月期には再びプラスとなったものの、10-12月期はまたマイナスとなっており、一進一退での推移で力強さを欠いている。また、設備投資は、企業収益の改善が続いているものの、2015年4-6月期は小幅マイナス、7-9月期、10-12月期は小幅プラスとなるなど、おおむね横ばいで推移している。

第1-1-1図 実質GDP成長率の推移
Excel形式のファイルは こちら

このように、実質GDPは年間でプラスとなっており、景気は緩やかな回復基調にあるものの、個人消費・設備投資等の支出面での改善が遅れている。

次に、実際の企業の景況感について、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(以下、「日銀短観」という。)の業況判断DIより確認すると、2013年から2014年3月にかけて、規模別・業種別に見ても総じて上昇の動きを示していたが、同年6月調査以降は、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動もあって横ばい傾向で推移した(第1-1-2図)。2015年に入ってからは、製造業・非製造業、大企業・中小企業ともに「良い」と答えた企業の割合が「悪い」と答えた企業の割合を上回っており、総じて良好な水準で推移していた。業種別・規模別に見ると、製造業は、化学工業など原油・資源価格の下落に伴い仕入コストが低下したことで改善傾向にある業種もあった一方、新興国経済の減速の影響もあって、はん用・生産用・業務用機械工業等の業種は生産が慎重化しており、製造業全体では大企業・中小企業ともに横ばい傾向で推移していた。非製造業については、小売や対個人サービス、宿泊・飲食サービス業等が、訪日外国人増加の影響もあって上昇傾向にあり、9、12月調査では大企業では1991年11月以来の高水準となった。中小企業についても、大企業からやや遅れがあるものの全体として小幅に上昇していた。

第1-1-2図 業種別・企業規模別に見た業況判断DIの推移
Excel形式のファイルは こちら

直近の2016年3月調査では、製造業は大企業を中心に低下し、非製造業では大企業・中小企業ともにやや低下した。

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