12 収益力別に見た中小企業の労働生産性
上記のとおり、高収益企業と低収益企業との間には優秀な人材の確保・育成に関する問題意識の差が顕著に出ている様子がうかがえるが、高収益企業と低収益企業との間の人材に関する問題意識の差は、企業の生産性とも関係しているだろうか。高収益企業と低収益企業の労働生産性を、1983年を100とした指数で見てみると、全産業では1980年代は高収益企業も低収益企業も同様に上昇していたが、1990年代に入り、高収益の中規模企業では引き続き上昇する一方、高収益の小規模企業では低下に転じ、2000年代に入り再び上昇傾向となった(第1-3-12図)。低収益企業においては1990年代以降低下傾向が続いているが、小規模企業においては2000年代後半以降上昇に転じている。この結果、高収益企業と低収益企業の間の労働生産性の伸びの差は、1990年代以降に広がりを見せ、2010年以降も依然として大きな差がある。
業種別に見ると、製造業では、1980年代は高収益企業も低収益企業も同様に上昇していたが、1990年代に入り、高収益の中規模企業では引き続き上昇する一方、高収益の小規模企業では低下に転じ、2000年代に入り再び上昇傾向となった。2000年代後半以降は高収益の中規模企業、小規模企業とも労働生産性の上昇が伸び悩んでいる。他方、低収益企業においては1990年代以降低下傾向が続いているが、小規模企業においては2000年代後半以降上昇に転じている。この結果、高収益企業と低収益企業の間の労働生産性の伸びの差は、1990年代以降に広がりを見せ、2010年以降も依然として大きな差がある。
非製造業では、1980年代は高収益企業も低収益企業も同様に上昇していたが、1990年代に入り、高収益の中規模企業では引き続き上昇する一方、高収益の小規模企業では低下に転じ、2000年代に入り再び上昇傾向となった。他方、低収益企業においては1990年代以降低下傾向が続いている。この結果、高収益企業と低収益企業の間の労働生産性の伸びの差は、1990年代以降に広がりを見せ、2010年以降も依然として大きな差がある。
以上から、高収益企業は優秀な人材の確保・育成に対する意識を強く持っているだけでなく、実際に労働生産性の伸びを見てみても、低収益企業と比べて高い伸びを実現していることが分かった。