第1部 平成26年度(2014年度)の中小企業・小規模事業者の動向

7 中小企業・小規模事業者の賃上げの状況

長引くデフレから脱却し、アベノミクスによる経済の好循環を軌道にのせていくためには、地域の中小企業・小規模事業者を含む企業全体で、物価上昇を上回る賃金上昇を実現させていかなくてはならない。そこで本項では、中小企業・小規模事業者の賃上げの状況について確認していく。

中小企業庁が2014年6~7月に実施した「中小企業の雇用状況に関する調査」によると、常用労働者(いわゆる正社員)の一人当たり平均賃金(定期昇給を含む)を「引き上げる/引き上げた」とする中小企業・小規模事業者の割合は2013年度では56.8%であったのに対し、2014年度では64.5%となっており、増加している(第1-2-11図(1))。また、賃金を「引き上げる/引き上げた」主な理由としては、「従業員の定着・確保」が75.7%と最も多くなっており、中小企業の人手不足感が表れた結果となっている(第1-2-11図(2))。逆に賃金を「引き上げない/引き上げていない」とした企業について、その主な理由を尋ねたところ、「業績の低迷」が71.7%と最も多くなっており、業績の低迷が賃上げを妨げている状況が分かる(第1-2-11図(3))。また、次いで「賃金より従業員の雇用維持を優先」、「原油・原材料価格の高騰」が多くなっており、賃上げを妨げる要因として雇用維持への努力やコストアップの影響があることが分かる。

また、賃金を「引き上げる/引き上げた」と回答した企業の地域ごとの実施割合を見ると、2013年度においては、都市部(関東・中部・近畿)の平均割合が58.2%と他の地域よりも高かったが、2014年度においては全地域においてこの値を上回る状況となっている(第1-2-11図(4))。

第1-2-11図 中小企業・小規模事業者における賃上げの状況
Excel形式のファイルは こちら

以上で見てきたとおり、2014年度に賃上げを実施した中小企業・小規模事業者は2013年度に比べ全国的に増加し、地域間の格差も少なくなっており、中小企業へ「経済の好循環」が着実に波及しつつあるといえる。

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