本章では、我が国経済の動向について概観するとともに、中小企業・小規模事業者の動向及び中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境について見ていく。
第1節 我が国経済と中小企業・小規模事業者
1.我が国経済の現状
はじめに、我が国経済の現状について概観する。足下におけるマクロ経済の動向を見ると、2023年の第2四半期における実質GDPは、感染症の5類移行によるインバウンド消費の回復、半導体不足の緩和による輸出増加を受け、3四半期連続のプラス成長となった。一方で、第3四半期の実質GDPは輸出の増加幅が縮小したほか、消費や設備投資が弱含み、マイナスとなった。第4四半期においては、設備投資と輸出が押し上げ要因となり、プラスに転じた(第1-2-5図(再掲))。

2.中小企業・小規模事業者の状況
次に、中小企業・小規模事業者の状況について見ていく。
第1-3-1図は、「中小企業景況調査」(以下、「景況調査」という。)を用いて、企業規模別に業況判断DIの推移を見たものである。これを見ると、2023年の第1四半期から第3四半期における中小企業の景況認識は、1994年以降最高水準となった。一方で、第4四半期においてはわずかに悪化している。

第1-3-2図は、景況調査を用いて、業種別に業況判断DIの推移を見たものである。これを見ると、2020年第2四半期にいずれの業種も大きく業況判断が悪化したが、その後はいずれの業種も回復していた。この傾向は足下の2023年においても継続していたものの、2023年第4四半期にはいずれの業種も悪化している。

第1-3-3図は、「商工会議所早期景気観測調査(LOBO調査)」を用いて、中小企業の売上DIの推移を見たものである。これを見ると、2023年は、売上DIが増加したものの、年末にかけて売上げの増加に一服感が見られている。

続いて、中小企業の業績について確認する。第1-3-4図は、財務省「法人企業統計調査季報」を用いて、企業規模別の売上高の推移を見たものである。これを見ると、中小企業の売上高は、2021年第1四半期を底として増加傾向にあったが、2023年第4四半期においては、中小企業における増加幅が縮小している。

第1-3-5図は、財務省「法人企業統計調査季報」を用いて、企業規模別に経常利益の推移を見たものである。これを見ると、中小企業の経常利益は、2020年第3四半期を底に増加傾向で推移していた。その後、一時減少傾向に転じたものの、2023年第3四半期まで増加傾向にある。






42 総務省統計局「統計ダッシュボード」(https://dashboard.e-stat.go.jp/)
第1-3-6図は、景況調査を用いて、企業規模別に中小企業の資金繰りDIの推移を見たものである。中小企業の資金繰りDIは、リーマン・ショック後に大きく落ち込み、その後は東日本大震災や2014年4月の消費税率引上げなどに伴う一時的落ち込みが見られたものの、長期的には改善傾向で推移してきた。感染症の感染拡大の影響による売上げの急激な減少と資金繰りの悪化により、2020年第2四半期に大きく下落したが、第3四半期には大きく回復した。その後、足下では2023年第1四半期から第2四半期にかけて回復したものの、第3四半期において再び下落している。
