第6章 災害からの復旧・復興、強靭化
第1節 資金繰り支援
1.被災中小企業への資金繰り支援(政策金融)(東日本大震災復興特別貸付等)【財政投融資】
東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、株式会社日本政策金融公庫において、「東日本大震災復興特別貸付」を継続的に実施した(商工組合中央金庫は、令和2年3月で新規受付を終了)。本制度の運用開始後、2023年12月末までの貸付実績は、約30万4,000件、約6兆1,000億円となった。また、東日本大震災においては、原発事故に係る警戒区域等の公示の際に当該区域内に事業所を有していた中小企業・小規模事業者や、地震・津波により事業所等が全壊・流失した中小企業・小規模事業者に対して、県の財団法人等を通じ、貸付金利を実質無利子化する措置を引き続き実施した。さらに、令和2年7月豪雨により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、株式会社日本政策金融公庫において「令和2年7月豪雨特別貸付」を実施。本制度の運用開始後2023年12月末までの貸付実績は、令和2年7月豪雨特別貸付が約270件、約36億円となった。そのほか、令和6年能登半島地震により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、令和6年1月より株式会社日本政策金融公庫において「令和6年能登半島地震特別貸付」を実施。
2.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置の拡充【財政投融資】
東日本大震災、新型コロナウイルス感染症、令和2年7月豪雨災害、令和6年能登半島地震災害により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対し、無担保・無保証人・低利で利用できる日本政策金融公庫によるマル経・衛経融資の貸付限度の拡充や金利の引下げを実施した。
3.被災中小企業への資金繰り支援(信用保証)【令和5年度当初予算:34.8億円】
信用保証協会においては、被災中小企業者による運転資金・設備資金などの必要な資金の借入れに対して保証を行う。具体的には災害救助法が適用された自治体等において、当該災害の影響により売上高等が減少している被災中小企業者に対しては、通常の保証限度額とは別枠で融資額の100%を保証するセーフティネット保証4号を適用する。激甚災害の指定を受けた災害についても、通常の保証限度額とは別枠で融資額の100%を保証する災害関係保証を措置し、被災中小企業者の事業の再建に向けた資金繰りを支援する。
4.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」
原子力発電所事故の被災区域に事業所を有する中小企業等が福島県内において事業を継続・再開する場合に必要な事業資金(運転資金・設備資金)に対する長期・無利子の融資を行った。
第2節 二重債務問題対策
1.「産業復興相談センター」及び「産業復興機構」による再生支援【令和5年度当初予算:5.9億円】
東日本大震災の被災各県における中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)の体制を拡充するかたちで2011年度に設置した総合相談窓口である「産業復興相談センター」と、債権買取等を行う「産業復興機構」による中小事業者等の事業再生支援を引き続き実施。産業復興相談センターでは、2023年12月31日までに事業者からの相談を累計7,236件受け付けており、関係金融機関等による金融支援の合意を取り付けた案件は累計1,491件(うち産業復興機構による債権買取決定案件は累計339件)となった。
2.再生可能性を判断する間の利子負担の軽減
東日本大震災及び原子力発電所の事故による被害を受けた中小事業者等が産業復興相談センターを活用した事業再生に取り組む際に、再生計画策定支援の期間中に発生する利子を補填することにより、早期の事業再生の実現を図ることを目的とする事業であり、2011年度に創設した。本施策については2023年度も引続き実施した。
3.株式会社東日本大震災事業者再生支援機構
被災事業者の二重ローン問題に対応するため、東日本大震災事業者再生支援機構では、旧債務に係る返済負担の軽減等の支援を実施した。2012年3月5日の業務開始以来、第1期復興・創生期間(2021年3月末まで)の終了までに2,939件の相談を受け付けており、そのうち747件の事業者に対して、債権買取等の再生支援を行う旨の決定をした。支援決定した事業者747先のうち、314先については再生支援が完了した(2023年12月末現在)。
4.令和6年能登半島地震による被災事業者の二重債務問題への対応
令和6年能登半島地震で被災した事業者の二重債務問題に対応するため、「能登半島地震復興支援ファンド」を設立。
第3節 工場等の復旧への支援
1.中小企業組合等共同施設等災害復旧事業【令和5年度当初予算:27.1億円】
東日本大震災に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、中小企業等グループ作成する復興事業計画に基づき、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4を補助し、被災した中小企業等グループ等の施設の復旧等に対して支援を行った。
2.なりわい再建支援事業【令和5年度補正予算:19億円、令和5年度予備費200億円】
令和2年7月豪雨及び令和6年能登半島地震に係る被災地域の経済・雇用の早期回復を図るため、復興事業計画に基づき、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、主に国が1/2、県が1/4を補助し、被災した中小企業等の施設の復旧等に対して支援を行った。
3.なりわい再建資金利子補給事業【令和5年度補正予算:0.1億円】
令和2年7月豪雨の被災地域において、中小企業等が行う施設復旧等の費用を補助する、なりわい再建支援事業を措置し、当該事業を活用して復旧する事業者に対して、自己負担分の借入に係る利子補給を3年間実施することで、融資の実質無利子化を行った。
4.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け
東日本大震災により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、中小企業基盤整備機構と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行った。
5.仮設施設整備事業・仮設施設有効活用等助成事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
東日本大震災の被害を受けた中小企業者等の早期事業再開を支援するため、中小企業基盤整備機構が仮設工場や仮設店舗等を整備し被災市町村あて譲渡を行い、当該市町村が被災事業者に原則無償で区画を貸し出す仮設施設整備事業を実施。2023年9月末までに6県53市町村648案件の施設を設置した。また、2014年5月より仮設施設の本設化、移設、撤去に要する費用の仮設施設有効活用等助成事業を実施し、2023年9月末までに204.5案件の助成を行った。
6.事業復興型雇用確保事業
被災地の深刻な人手不足による雇用のミスマッチに対応するため、産業政策と一体となった雇用面での支援を実施した。
7.被災商店街等再建支援事業【令和5年度予備費:5.0億円】
令和6年能登半島地震による被害を受けた地域の商店街について、アーケード・街路灯等の復旧、集客イベントの開催等賑わいの創出を図るための取組を支援した。
第4節 防災・減災対策
1.中小企業強靱化対策事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
中小企業基盤整備機構の地域本部等に自然災害等対策の専門家を配置し、自然災害等対策に係る相談等にワンストップで対応した。中小企業に対し、自然災害等に対する事前の取組を促進するため「事業継続力強化計画」等を普及啓発するためのシンポジウムやセミナー、計画策定を支援するための専門家派遣等を実施した。
2.中小企業等経営強化法(事業継続力強化計画)
中小企業が自然災害等に対する防災・減災の取組をまとめた「事業継続力強化計画」及び「連携事業継続力強化計画」を認定し、認定を受けた事業者に対して金融支援や税制措置など計画を実行するための支援措置を講じた。2023年12月末現在で6.3万者を認定している。
3.中小企業防災・減災投資促進税制【税制】
中小企業等経営強化法における「事業継続力強化計画」又は「連携事業継続力強化計画」の認定を受けた中小企業が、当該計画に記載された自家発電設備や止水板等の防災・減災設備を取得し、事業の用に供した場合に特別償却ができる措置を講じた。なお、令和5年度税制改正において、耐震装置の対象追加及び適用期限の延長等を行った。
4.社会環境対応施設整備基金(BCP融資)【財政等融資】
中小企業による災害発生時の事業継続の観点から防災に資する設備等の整備を支援するもので、中小企業が策定したBCPや、国から認定を受けた事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に基づき、防災・減災に資する施設等の整備を行うために必要な整備資金及び長期運転資金の貸付を行った。
5.中小企業BCP(事業継続計画)普及の促進
自然災害等による事業中断を最小限にとどめることを目的に、BCP(事業継続計画)の策定を促進することを目的に「中小企業BCP策定運用指針」を作成し、公表した。
6.小規模事業者支援法による事業継続力強化支援計画の推進
小規模事業者支援法第5条に基づき、商工会・商工会議所が、地域の防災を担う市町村と連携し、事業継続力強化のための支援を行う計画を作成し、都道府県知事が認定する。2024年1月末時点において、全都道府県においてガイドラインを策定し、各都道府県のガイドライン等に基づき1,393計画が認定された。
第5節 その他の対策
1.災害発生時における中小企業向け初動対策
日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小企業基盤整備機構地域本部等及び経済産業局に設置した特別相談窓口において、被災中小企業者等からの経営・金融相談等にきめ細かく対応する等の措置を講じた。
2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施
どこに相談したらよいか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を実施した。
3.原子力災害対応雇用支援事業
原子力災害被災12市町村及びその出張所等所在自治体において、民間企業・NPO等への委託により、福島県の被災求職者の一時的な雇用・就業機会を創出した上で、人材育成を実施し生活の安定を図る。
4.放射線量測定指導・助言事業【令和5年度当初予算:0.1億円】
避難指示区域等の見直しにより原子力災害被災企業の事業再開や企業立地の進展が見込まれることから、福島県内企業等からの要請に応じて、専門家チームを派遣するとともに、福島県内の事業所において、工業製品等の放射線量測定等に係る指導・助言を行い、工業製品等に係る風評被害払拭に取り組んだ。
5.福島イノベーション・コースト構想 地域復興実用化開発等促進事業【令和5年度当初予算:51.9億円】
ロボット、ドローン等の福島イノベーション・コースト構想の重点分野(*)について、地元企業との連携等による地域振興に資する実用化開発等の費用の補助を行った。
*廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産、医療関連、航空宇宙の分野をいう。
また、スタートアップに対する優遇措置(加点・大企業の補助率引き下げ)を新設し、スタートアップへの支援を強化した。
6.中小・小規模事業者の事業再開等支援事業【156.3億円(基金)】
福島県の原子力被災12市町村の働く場の創出や、買い物をする場などまち機能の早期回復を図るため、被災事業者等の事業再開や創業に要する設備投資等の費用の一部を補助した。
7.輸送等手段の確保支援事業【令和5年度当初予算:16.3億円の内数】
福島県の原子力被災12市町村の被災事業者等に対して、衣・食・医等に関する生活関連商品等の提供や広域的な移動サービスの提供に必要となる輸送手段を確保する事業、企業活動に必要となる製品等を共同して輸送する事業に要する費用の一部を補助した。
8.福島相双復興官民合同チーム専門家支援事業【107.7億円(基金)】
福島県の被災事業者等の事業・なりわいの再建、事業者の自立等を促進するため、官民合同チームが、被災事業者等の個々の事情に応じたきめ細かなコンサルティングや人材確保、販路開拓等の支援を行った。
9.地域の伝統・魅力等の発信支援事業【令和5年度当初予算:1.8億円】
福島県の伝統・魅力等を発信する民間団体等の支援及び有効な発信手段の選定、発信手段と親和性のあるコンテンツの制作、発信後の効果測定等の実施により、原子力被災12市町村を中心とした風評被害の払拭や交流人口増加による事業基盤の安定を目指すための広報活動等を支援した。
10.自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金【令和5年度当初予算:140.9億円】
東日本大震災及び原子力災害によって産業が失われた浜通り地域等において、工場等の新増設を支援し企業立地を促進することにより、被災者の「働く場」を確保し、雇用の創出及び産業集積を図り、自立・帰還を加速させた。加えて、住民の帰還や産業の立地を促進するため、商業回復を進めた。