第4章 取引環境の改善を始めとする事業環境整備等
第1節 取引環境の改善
1.電子受発注システム普及促進に向けた実証事業【令和3年度補正予算:8.0億円の内数】
業界や企業系列ごとに異なるシステム間でのやりとりを可能とする次世代の受発注等の取引基盤の整備に向けて、中小企業側の視点に立って有用性に関する試行的な実証を実施した。
2.下請け等中小企業の取引条件の改善【令和4年度当初予算:23.0億円の内数】
「未来志向型の取引慣行に向けて」(2016年9月)の公表以降、中小企業庁では、取引適正化に向けた重点5課題(〔1〕価格決定方法の適正化、〔2〕支払条件の改善、〔3〕型取引の適正化、〔4〕知財・ノウハウの保護、〔5〕働き方改革に伴うしわ寄せ防止)を設定し、サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善に向けた取組を行ってきた。
(1)パートナーシップ構築宣言の推進、(2)「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(2021年12月27日)に基づく価格転嫁対策、(3)取引適正化に向けた5つの取組など、特に、価格転嫁のしやすい取引環境の整備に向け必要な対策を講じた。2022年度に実施する具体的な取組内容としては、下記の通り。
(1)パートナーシップ構築宣言の推進
サプライチェーン全体の共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業数拡大のための周知を行うとともに、宣言の実効性向上に向けて、宣言の取組状況に関する調査を行い、その結果を10月に開催した「第4回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」に報告した上で、宣言企業に対して調査結果のフィードバックを行った。また、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大、意義の浸透、実効性の向上と、サプライチェーン全体での協力拡大に向けた機運醸成を目的として11月に「パートナーシップ構築シンポジウム」を開催し、新たな連携に取り組む優良事例の表彰・紹介を行った。
(2)パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ
中小企業等が賃上げの原資を確保出来るよう、コスト上昇分を適切に転嫁できることを目的とし、2021年12月27日に「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」がとりまとめられた。同パッケージに基づき、1~3月を「集中取組期間」として、中小企業庁と公正取引委員会は、事業所管省庁などとも連携し、下請代金支払遅延等防止法の執行強化等、価格転嫁に向けた取組を実施した。
(3)取引適正化に向けた5つの取組
〔1〕価格交渉のより一層の促進、〔2〕パートナーシップ構築宣言の大企業への拡大、実効性の向上、〔3〕下請取引の監督強化、〔4〕知財Gメンの創設と知財関連の対応強化、〔5〕約束手形の2026年までの利用廃止への道筋に取組を行った。
3.中小企業取引対策事業/取引適正化対策事業【令和4年度当初予算:21.3億円、令和3年度補正予算:4.8億円】
原材料価格やエネルギー価格が高騰している中、雇用の7割を占める中小企業が賃上げできる環境を整備するためにも、サプライチェーン全体でコスト上昇分を適切に価格転嫁できる環境を整備することが重要。
具体的な価格転嫁対策として、(1)「価格交渉促進月間」による取組、(2)下請Gメンや自主行動計画等による取組等を実施した。
(1)「価格交渉促進月間」による取組
毎年9月と3月に実施している「価格交渉促進月間」の実効性をあげるため、各月間の終了後にフォローアップ調査として、中小企業15万社に対するアンケート調査と中小企業約2千社に対する下請Gメンによるヒアリングを実施しており、これらの結果を活用して、新たな取組として次の事項を実施した。
〔1〕「価格転嫁率」の算出・公表
〔2〕「10社以上の中小企業から回答のあった発注側事業者の価格交渉・価格転嫁状況の約150社リスト」公表
〔3〕交渉と転嫁の状況の芳しくない親事業者への「指導・助言」の実施
〔4〕各業種に特化した講習会開催
(2)下請Gメンや自主行動計画等による取組
〔1〕下請Gメンを活用した取引実態の把握
〔2〕下請中小企業振興法の「振興基準」の改正
4.デジタル取引環境整備事業【令和4年度当初予算:6.5億円】
デジタルプラットフォーム(オンラインモール、アプリストア、デジタル広告)を利用する中小事業者等(出店事業者、デベロッパー、広告主、媒体社等)向けに、取引上の悩みや相談に専門の相談員が無料で応じる「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」を設置するとともに、各種デジタルプラットフォームを巡る取引環境等を把握するための市場調査等を実施した。
第2節 官公需対策
1.中小企業・小規模事業者の受注機会増大のための取組
(1)「令和4年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の策定及び周知
「令和4年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を8月26日に閣議決定し、中小企業・小規模事業者向けの契約比率を61%、契約金額を5兆2,738億円、創業10年未満の新規中小企業者向けの契約比率を3%以上と目標設定し、中小企業とりわけスタートアップの受注機会の増大に向けた方策の検討を進めた。
また、基本方針の周知については、以下の取組を実施した。
〔1〕経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事に対し、文書により基本方針の趣旨を説明するとともに、中小企業・小規模事業者の受注機会の増大に努めるよう要請した。また、市町村に対しては、都道府県経由での周知を依頼した。
〔2〕国等の地方支分部局、地方自治体等に対し、説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を10回開催した。
(2)「官公需情報ポータルサイト」の運用
中小企業・小規模事業者が官公需に関する発注情報を入手しやすくするため、国等や地方公共団体がホームページで提供している発注情報等を中小企業・小規模事業者が一括して入手できる「官公需情報ポータルサイト」を運営した。
第3節 人材・雇用対策
1.地域中小企業人材確保支援等事業(中小企業・小規模事業者人材対策事業)【令和4年度当初予算:8.4億円の内数】
中小企業・小規模事業者が抱える経営課題の解決に資する多様な人材を、副業・兼業含む多様な形態で確保できるよう、企業の魅力発信やマッチングの促進等を実施。また、地域の経営支援機関等における人材確保支援ノウハウの向上や、ネットワーク作り等の支援を全国17地域で行った。
2.中小企業基盤整備機構における人材育成事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
中小企業の経営者等を対象に、経営課題の解決に資する研修を実施。また、交通アクセス改善に向けて「サテライト・ゼミ」や、ウェブ活用型研修「WEBee Campus」の拡充等を行った。加えて、2022年度は新たに支援者担当者を対象とした経営力再構築伴走支援に関するオンライン研修を実施した。
3.労働者の雇用維持対策【令和4年度当初予算:5,552億円】
景気の変動等に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練又は出向により、労働者の雇用の維持を図った場合に、雇用調整助成金を支給するとともに、不正受給防止対策にも積極的に取り組み、本助成金のより一層の適正な支給に努める。
4.魅力ある職場づくりに向けた雇用管理の改善の支援【令和4年度当初予算:48.1億円】
人材確保等支援助成金において、2021年度に実施した助成のほか、建設事業主団体が建設労働者の処遇改善やキャリアパスの明確化を図り、もって若年者等の建設業への入職・定着促進による担い手の確保、魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備及び職業能力開発の促進に資するよう、建設キャリアアップシステム等の普及促進に取り組んだ場合に助成を行う「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」を創設した。
5.地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)【令和4年度当初予算:11.5億円】
地域における雇用の創出及び安定を図るため、雇用機会の不足している地域等において事業所の設置又は整備を行い、併せて地域の求職者等を雇い入れる事業主に対して、設置等の費用及び雇入れ人数に応じて助成を行う地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)を支給した。
6.中途採用等支援助成金(UIJターンコース)【令和4年度当初予算:1.0億円】
東京一極集中の是正を図るとともに、人手不足に直面する地域の企業の人材確保を図るため、地方公共団体が地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ)を活用して実施する移住支援事業により移住した者を雇い入れた事業主に対して、その採用活動に要した経費の一部を助成した。
7.地域活性化雇用創造プロジェクト【令和4年度当初予算:58.5億円】
地域における良質な雇用の実現を図るため、地域雇用の課題に対して、国や都道府県の施策との連携を図りつつ、新型コロナウイルス感染症の影響等を受けた地域雇用を再生するため事業主の業種転換や求職者のキャリアチェンジや、成長分野や人材不足分野における魅力ある雇用の確保や就職促進等に取り組む都道府県に対して支援を実施した。
8.成長分野等への人材移動の促進【令和4年度当初予算:17.1億円】
労働移動支援助成金(再就職支援コース)により、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者(再就職援助計画対象者等)に対する再就職支援を民間職業紹介事業者への委託等により行う事業主に対して助成を行った。
また、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされた労働者等の早期雇入れや当該労働者への訓練(OJTを含む。)を行った事業主に対する労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)の支給を行うとともに、前職よりも賃金を5%以上上昇させた再就職に対して上乗せ助成等を行った。
加えて、中途採用者の能力評価、賃金、処遇等の制度を整備した上で、中途採用率を拡大させた事業主に対して中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の支給を行い、このうち、45歳以上の中高年齢者の中途採用率を拡大させるとともに、当該中高年齢者の賃金を前職よりも5%以上上昇させた事業主に対して助成額の増額を行った。
9.(再掲)新たな学び直し・キャリアパス促進事業【令和3年度補正予算:8.6億円】
10.人材確保対策推進事業【令和4年度当初予算:44.4億円】
人材不足分野のマッチング支援のため、全国の主要なハローワークに設置する「人材確保対策コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等を実施した。
11.地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業(若者人材確保プロジェクト実証)【令和4年度当初予算:6.5億円の内数】
地域の共通課題である若者人材の流出防止・流入促進のため、民間事業者等が複数の地域企業を束ね、金融機関、経営支援機関、自治体等とも連携し、地域ぐるみで若者人材に向けた仕事やキャリアステップを作り、求人・採用、人材育成、キャリアステップの構築等を行う「地域の人事部」の取組を20件支援した。
12.若者雇用促進法に基づくユースエール認定制度【令和4年度当初予算:3.1億円の内数】
若者の雇用管理が優良な中小企業について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号)に基づき、厚生労働大臣が「ユースエール認定」企業として認定し、中小企業の情報発信を後押しすることにより、当該企業が求める人材の円滑な採用を支援した。
13.最低賃金の引き上げに向けた中小企業・小規模事業者支援【令和3年度補正予算:135.1億円、令和4年度当初予算:122.1億円】
最低賃金・生産性向上による賃金の引上げに取り組む中小企業・小規模事業者への支援として、
〔1〕全国の中小企業・小規模事業者を対象として、生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い時間給)を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資などに要した費用の一部を助成した。また、2022(令和4)年度においては、原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により利益率が低下した事業者への対象経費の拡充や事業場規模30人未満の事業場に対する助成上限額の引き上げなどの累次の要件緩和・拡充を行った。
〔2〕働き方改革に関する相談等にワンストップで対応するため、「働き方改革推進支援センター」を全国(47カ所)に設置し、無料の窓口相談・訪問コンサルティングを実施した。
〔3〕生産性を高めながら労働時間の削減等に取り組む中小企業・小規模事業者や、傘下企業の労働時間削減や賃上げに向けて生産性向上に資する取組を行った中小企業団体に対し、その取組に要した費用を助成した。
14.キャリアコンサルティングの普及促進
企業(人事管理・人材育成)、労働力需給調整機関(職業マッチング)、学校(キャリア教育)などにおいて、キャリアコンサルティングの普及を進めた。また、2016年4月に国家資格化されたキャリアコンサルタントについて、養成と周知に取り組んだ。さらに、2020年度に運営開始したキャリア形成サポートセンターにおいて、労働者等に対するキャリアコンサルティング機会の提供とともに、企業に対するセルフ・キャリアドック(※)の導入を推進した。
(※)企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」。
15.(再掲)起業家教育事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
16.(再掲)中小企業連携組織支援対策推進事業【令和4年度当初予算:6.0億円】
17.(再掲)地域デジタル人材育成・確保推進事業【令和3年度補正予算:13.6億円、令和4年度当初予算:地域未来DX投資促進事業(15.9億円)の内数】
18.中小企業向け賃上げ促進税制【税制】
一人一人の賃上げや雇用の確保、人的投資に積極的に取り組む中小企業等を促す観点から、「所得拡大促進税制」について、「中小企業向け賃上げ促進税制」と改称した上で、税額控除率を最大40%に大幅に引き上げるなどの拡充を行い、適用期限を令和5年度末までとした。具体的には、〔1〕雇用者給与等支給額を前年度より1.5%以上増加させた場合には、雇用者給与等支給額の増加額の15%を税額控除できることとし、さらに、〔2〕雇用者給与等支給額を前年度より2.5%以上増加させた場合には税額控除率を15%加算、〔3〕教育訓練費を前年度より10%以上増加させた場合には税額控除率を10%加算できることとした。
第4節 資金繰り支援
1.セーフティネット貸付【財政投融資】
日本政策金融公庫が、社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に売上の減少等業況悪化を来たしている中小企業・小規模事業者等の資金繰りを支援。2022年度の貸付実績は、約6千4百件、約1千4百億円となった(2022年12月末時点)。
2.資本性劣後ローンの推進【財政投融資】
日本政策金融公庫が、新事業展開や経営改善に取り組む中小企業・小規模事業者に対し、財務体質を強化するとともに、民間金融機関からの資金調達を円滑に図るため、金融機関の資産査定上自己資本とみなし得る一括償還の資金(資本性資金)を供給することで、中小企業・小規模事業者の資金繰りを支援。2022年度の貸付実績は、約40件、約38億円となった(2022年12月末時点)。
3.日本政策金融公庫による設備投資の推進等補給金【財政投融資】
日本政策金融公庫が、新事業やビジネスモデルの転換等、生産性向上を図るための設備投資について適用利率を引き下げることで、中小企業・小規模事業者の資金繰りを支援する。本制度の運用開始後2022年12月末までの貸付実績は、約1万1千件、約3千4百億円となった。
4.沖縄の中小企業金融対策【財政投融資】
沖縄振興開発金融公庫を活用した沖縄の中小企業対策は、日本政策金融公庫が行う業務・取組について同様に行うとともに、沖縄の特殊事情を踏まえ独自の貸付制度を実施した。
5.小規模事業者経営発達支援融資事業【財政投融資】
事業の持続的発展に取り組む小規模事業者を支援するため、経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所による経営指導を受ける小規模事業者に対し、日本政策金融公庫が低利で融資を行う(2022年度の実績は1件、0.1億円(2022年12月末時点))。
6.(再掲)小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資)【財政投融資】
7.(再掲)民間金融機関を通じた資金繰り支援(信用保証制度)
8.(再掲)中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】
9.(再掲)中小企業活性化事業【令和4年度当初予算:〔1〕157.7億円の内数、令和4年度補正予算:〔2〕50.3億円の内数】
10.経営支援と一体となった高度化融資による設備資金の支援【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
工場団地・卸団地、ショッピングセンター等の整備、商店街のアーケード・カラー舗装等の整備などを行う中小企業組合等に対して、都道府県と中小企業基盤整備機構が一体となってその設備資金を長期・低利(又は無利子)で貸付けた。貸付けに際しては、事前に事業計画について専門的な立場から診断・助言を行った。
11.金融行政における中小企業・小規模事業者に対する経営支援の強化等
金融機関に対し、担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)することを通じて、企業に有益なアドバイスとファイナンスを行うよう促した。(継続)
第5節 経営安定対策
1.原油価格上昇等に対する中小企業対策
ウクライナ情勢の緊迫化及び原油高の影響を受けた中小企業・小規模事業者に対する支援策として、2022年度に以下の対策を行った。
(1)特別相談窓口の設置
日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所、都道府県商工会連合会、都道府県中小企業団体中央会及びよろず支援拠点、並びに全国商店街振興組合連合会、中小企業基盤整備機構各地域本部及び各地方経済産業局に「ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」を設置し、ウクライナ情勢の変化や、原油価格上昇の影響により資金繰りに困難を来している中小企業者に対する資金繰りや経営に関する相談を受け付けた。
(2)セーフティネット貸付の運用緩和
日本政策金融公庫等が実施するセーフティネット貸付の要件を緩和し、支援対象を原油高等により今後の影響が懸念される事業者にまで拡大するとともに、金利を引き下げる方針を決定した。
(3)下請事業者に対する配慮要請
関係事業者団体約1,700団体に対して、原材料・エネルギーコスト増加分の適正な価格転嫁等を要請する経済産業大臣名の文書を発出した。
2.燃料油価格激変緩和対策事業
(施策の目的)
・燃料油価格の激変緩和措置を講じることで、国際情勢等による原油価格高騰が国民生活や経済活動に与える悪影響を防ぎ、経済回復の妨げとならないことを目指す。
(施策の概要)
・原油価格高騰対策として、農業・漁業・運輸業等の業種別の対策等に加え、時限的・緊急避難的な燃料油価格激変緩和事業を行うことにした。
・具体的には、ガソリン価格の全国平均が基準価格以上の場合、円建ての原油価格の変動による卸価格上昇分につき、ガソリン・軽油・灯油・重油(2022年4月28日からは航空機燃料も支援対象に追加)1リットルあたり最大で41.4円の支給をすることで、燃料油の卸価格抑制を通じて、200円以上となることが予測されたレギュラーガソリンの小売価格を170円程度に抑制しました。
・2023年1月からは上限額を緩やかに調整して事業を実施している。
3.中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済制度)【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
中小企業倒産防止共済制度は、取引先企業の倒産により売掛金債権の回収が困難となった場合に、積み立てた掛金の額に応じて無利子、無担保、無保証人で共済金の貸付けを行う制度を継続した。2022年12月末現在で61.4万者在籍している。
4.経営安定特別相談事業
経営の危機に直面した中小企業の経営上の様々な問題の解決に資するため、全国の主要な商工会議所及び都道府県商工会連合会に「経営安定特別相談室」を設置し、本相談室において、経営安定に関する幅広い分野の経営相談が円滑に実施されるよう日本商工会議所及び全国商工会連合会の実施する指導事業等の支援を実施した。
5.ダンピング輸入品による被害の救済
貿易救済措置のうちアンチダンピング措置は、他国企業から我が国に対するダンピング輸入により、国内産業が損害を受けた際に、国内産業からの申請に基づき政府が調査を実施した上で関税を賦課することにより、公正な市場競争環境を確保する措置である。
2021年6月に開始した大韓民国及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税調査は、2022年12月に終了し、課税措置を発動した。2022年2月に開始した中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税延長調査は、2023年2月に終了し、課税期間を5年間延長した。
また、企業等への説明会やWTO協定と整合的に調査を行うための調査研究を実施した。
第6節 財務基盤の強化
1.中小企業等の法人税率の特例【税制】
中小企業の年間800万円以下の所得金額に対する法人税率を、19%から15%に引き下げる措置を講じた。
2.中小企業投資促進税制【税制】
機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置を講じた。
3.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度【税制】
取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間300万円を限度に、全額損金算入することができる措置(通算法人及び従業員500人超の法人を除く)を講じた。なお、令和4年度税制改正において、その適用期限を2年延長することとされた。
4.欠損金の繰越控除・繰戻還付【税制】
欠損金の繰越控除について、当期の事業年度に生じた欠損金を繰り越して翌期以降の事業年度(繰越期間:10年間)の所得金額から控除することができる措置を講じた。また、欠損金の繰戻還付について、当期の事業年度に生じた欠損金を1年繰戻して法人税の還付を請求することができる措置を講じた。
5.交際費等の損金不算入の特例措置【税制】
交際費等を支出した場合、〔1〕定額控除限度額(800万円)までの損金算入または〔2〕支出した接待飲食費の50%までの損金算入のいずれかを選択適用できる措置を講じた。なお、令和4年度税制改正において、その適用期限を2年延長することとされた。
6.中小企業投資育成株式会社による支援
中小企業投資育成株式会社において、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、株式、新株予約権、新株予約権付社債等の引受けによる投資事業及び経営相談、事業承継支援等の育成事業を実施した。
第7節 人権啓発の推進
1.人権教育・啓発活動支援事業【令和4年度当初予算:1.9億円】
健全な経済活動の振興を促進するため、事業者を対象とした人権啓発のためのセミナー等の啓発事業を実施した。また、小規模事業者等が多く、特に重点的な支援が必要な地域又は業種に係る小規模事業者等の活性化のため、経営等の巡回相談事業及び研修事業を実施した。
第8節 経営支援体制の強化
1.事業環境変化対応型支援事業【令和3年度補正予算:130.4億円】
中小企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、経営の方向性を見極めることが徐々に難しくなっており、不確実性の高い時代において、生産性向上、事業継続、販路拡大等を実現していくための各種支援を実施した。
〔1〕中小企業大学校における研修プログラムの作成及び支援者への研修プログラムの提供、中小企業支援の実施
中小企業大学校にて、対話と傾聴を通じ、経営者自身に本質的課題への気づきを促す課題設定支援に関する研修プログラムを開発した。その上で、支援人材を公募(中小企業診断士や、中小企業支援機関の支援担当者等)し、研修プログラムを受講してもらい、「経営力再構築伴走支援」の担い手として支援を実施した。
〔2〕中小企業支援機関の相談体制等の強化
商工会・商工会議所等の中小企業支援機関における相談窓口・巡回指導の体制を強化し、インボイス対応、デジタル化等の事業環境変化による影響を受ける中小・小規模事業者からの経営相談や各種申請サポート等を実施した。
〔3〕デジタル化診断ツールの開発及び診断業務の実施
中小・小規模事業者がデジタル化の重要性に気づき、デジタル化に当たって必要な対応を明確化できるようデジタル化診断ツール「みらデジ経営チェック」を開発し、Webやよろず支援拠点等を通じ、中小・小規模事業者に経営チェックを実施した。また、当該チェックを受けた事業者からの相談を受け付け、事業者に必要なデジタル化の取組についてアドバイスを実施した。さらに、必要に応じて、必要な専門家派遣の調整や適切な支援機関の紹介等を行い、他事業とも連携しながら事業者を支援した。
2.中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【令和4年度当初予算:40.0億円】
〔1〕新型コロナウイルスによる影響も含めた中小企業・小規模事業者等が抱える様々な経営課題に対応するワンストップ相談窓口として、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置した。
〔2〕地域の支援機関では解決困難な課題に対して、それぞれの課題に対応した専門家を派遣し、その解決を支援した。
〔3〕補助金申請等で提出された情報について行政機関や支援機関で共有・活用できるようにして中小企業支援を活性化させていくため、中小企業庁が所管する補助金等の申請データを一元化するためのデータ分析基盤を拡充し複数の行政手続システムとのAPI連携を実施した。
3.(再掲)中小企業連携組織支援対策推進事業【令和4年度当初予算:6.0億円】
4.ローカルベンチマークの活用促進
ローカルベンチマークの活用促進のため、ローカルベンチマーク・ガイドブックを用いた支援機関向けのセミナー及び、企業向けに講師を派遣し企業内での対話を通じて自社理解を深めてもらう取組を複数回実施した。また、ローカルベンチマーク・ガイドブックについてSDGs・DX等の取組の視点で活用がしやすいように改訂を実施した。