第2章 事業再構築、事業承継・引継ぎ・再生等の支援

第1節 事業再構築の後押し

1.中小企業等事業再構築促進事業【令和4年度予備費:1,000億円、令和3年度補正予算:6,123億円】

ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開や事業転換等、中小企業等の思い切った事業再構築を支援した。

業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対しては、通常枠より補助率を引き上げた「回復・再生応援枠」を、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者に対しては、売上高減少要件を撤廃した上で補助上限額を引き上げた「グリーン成長枠」をそれぞれ創設するなど、様々な事業者のニーズに柔軟に対応できるようにした。

2.ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業【令和4年度当初予算:10.2億円】

複数の中小企業等が連携し、連携体全体として生産性向上を図るために、新分野、業態転換、革新的な製品・サービス開発、生産プロセス等の改善に取り組むプロジェクト等に必要な設備投資等の経費を最大2年間支援した。(2022年度採択者数:28連携体、61者)。

第2節 事業承継・引継ぎ・再生等の支援

1.(再掲)中小企業活性化事業【令和4年度当初予算:〔1〕157.7億円の内数、令和4年度補正予算:〔2〕50.3億円の内数】

2.事業承継・引継ぎ支援事業【令和4年度当初予算:16.3億円】

事業承継・引継ぎ後の設備投資や販路開拓、事業戦略に係るコンサル費用等の経営革新にかかる費用を補助した。また、事業引継ぎ時の専門家活用費用(仲介・フィナンシャル・アドバイザー手数料、デュー・ディリジェンス費用 等)についてセカンドオピニオンも含めて補助するとともに、表明保証保険料についても補助した。さらに、令和4年度事業では、経営者の再チャレンジの後押しにも資するよう、一定の条件の下で廃業費用のみを支援する枠組みを新設した。

3.中小企業再生ファンド

事業再生に取り組む中小企業への経営支援や資金供給等を実施するため、中小企業基盤整備機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、中小企業の再生を地域内で支援する地域型ファンドや広域的に支援する全国型ファンドの組成・活用を促進する取組を行った。事業再生に取り組む中小企業への投資機会の拡大を図るため、中小企業基盤整備機構による、ファンド総額の2分の1以内の出資を可能としていたが、令和2年度補正予算により、出資上限割合を5分の4まで引上げ、2022年度には民間出資者に優先分配する仕組みを創設、ファンドの組成を促し、新型コロナウイルス感染症の影響等を受けた中小企業の再生に万全を期した。再生ファンドは、2022年12月末までに70件のファンドが創設され、ファンドの総額は約2,374億円に上った。また、当該再生ファンドによる投資は2022年12月末までに665件約1,393億円に上った。

4.中小企業経営力強化支援ファンド【令和2年度第1次補正予算100億円の内数、令和2年度第2次補正予算600億円の内数及び令和3年度補正予算750億円の内数】

長期化する新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化した、地域経済の中核となる中小企業等の経営力強化と成長を支援した。具体的には、中小機構からの出資も呼び水に、官民連携の全国ファンド等を組成した上で、資本性資金の投入ときめ細やかなハンズオン支援を行うことで、経営力の強化と成長を図り、事業再構築や事業再編を促進した。

5.事業承継総合支援事業【令和4年度当初予算:157.7億円の内数】

全国の認定支援機関等に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」において、中小企業者等の円滑な事業承継や引継ぎ(M&A)促進のため、支援ニーズの掘り起こしからニーズに応じた支援までワンストップで行った。また、新型コロナウイルス感染症の影響も含め増加する支援ニーズに対応できるよう、センターの人員を強化した。また、企業健康診断に係る調査事業を実施した。加えて、事業承継の気運を高めるため、後継者向けのピッチイベントを実施した。

6.事業承継円滑化支援事業

全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施した。

7.中小企業の経営資源の集約化に資する税制【税制】

経営資源の集約化によって生産性向上等を目指す計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づくM&Aを実施した場合に、〔1〕設備投資減税、〔2〕準備金の積立を認める措置を講じた。

8.土地(商業地等)に係る固定資産税の経済状況に応じた措置【税制】

令和4年度税制改正において、土地(商業地等)に係る固定資産税・都市計画税について、2022年度は、課税額が上昇する土地について、税額上昇分を半減する措置を講じた。

9.個人版事業承継税制【税制】

平成31年度税制改正において、個人事業者の事業承継を促進するため、2019年からの10年間限定で、多様な事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する制度を創設した。

10.法人版事業承継税制(特例措置)【税制】

平成30年度税制改正において、「法人版事業承継税制」を抜本拡充し、特例承継計画を提出し、2018年からの10年以内に実際に承継を行う者を対象に、非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じた。なお、令和4年度税制改正において、特例承継計画の提出期限が1年延長され、2024年3月31日までとされた。

11.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置【税制】

M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を通じて事業の継続・技術の伝承等を図る事業者を支援するため、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて再編・統合を行った際にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減する措置を講じた。なお、令和4年度税制改正において、その適用期限を2年延長することとされた。

12.経営承継円滑化法による総合的支援

経営承継円滑化法に基づき、相続人間の一定の合意により、遺留分に伴う相続紛争を防止するため、民法の特例措置を講じた。また、事業承継に伴う各種資金ニーズに対応するための金融支援措置を講じた。さらに、令和3年8月には、事業承継(M&Aを含む)に伴う株式の集約を円滑化するため、所在不明株主からの株式買取り等の手続きに必要な期間を5年から1年に短縮する会社法の特例を創設した。

13.小規模企業共済制度

小規模企業共済制度は、小規模企業者である個人事業主や会社等の役員が掛金を積み立て、廃業や引退をした際に共済金を受け取れる制度であり、いわば小規模企業の経営者のための「退職金制度」である。2022年12月末現在で161.6万人が在籍しており、2022年4月から2022年12月までの新規加入者は6.8万人に上った。

第3節 創業支援

1.ファンド出資事業(起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド)

民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小企業基盤整備機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図った。起業支援ファンドについて、平成22年度の制度再編後から2022年12月末時点まで出資先ファンド数52件、出資約束総額約3,781億円、投資先企業数1,574社に至った。また、中小企業成長支援ファンド(中小企業経営力強化支援ファンドを除く)については、出資先ファンド数103件、出資約束総額1兆1,304億円、投資先企業数1,638社に至った(両ファンドともに投資先企業数の実績は、2022年12月末時点)。

2.グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業【令和4年度当初予算:4.7億円】

新たな価値を生むプレーヤー等を創出するエコシステムを構築するため、J-Startup企業等のスタートアップに対し、国内外展開を支援。また、関係機関と協力した海外進出支援や、政府調達における優遇等を実施するとともに、海外のベンチャーキャピタルやアクセラレーターのノウハウを取り入れる等、我が国における自律的なエコシステムの構築を後押しした。

3.起業家教育事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】

将来の創業者を育成するため、高等学校等による起業家教育の導入を推進し、創業への関心や起業家に必要とされるマインドの向上を図った。

4.ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)【令和4年度当初予算:5.0億円の内数】

産学金官の連携により、地域の資源と資金(地域金融機関の融資)を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型事業の立ち上げを支援するため、民間事業者等が事業化段階で必要となる初期投資費用(ハード整備等)について、地方公共団体が助成する経費の一部に対し、交付金として交付する。

5.新たな学び直し・キャリアパス促進事業【令和3年度補正予算:8.6億円】

大企業・スタートアップ等の間の人材交流を促進するべく、大企業等に所属する人材が、副業・出向等により、スタートアップへ経営参画する場合等の費用の支援を行った。

6.創業者向け保証

創業者又は創業予定者等の創業資金の円滑な資金繰り支援のため、信用保証制度として創業関連保証等を措置。2022年度(2022年12月末まで)の保証承諾実績は、創業関連保証23,071件、約1,261億円、創業等関連保証408件、約39億円。

また、起業・創業の促進を目的に、経営者保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度としてスタートアップ創出促進保証制度を創設し、2023年3月に開始。

7.新創業融資制度【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、新たに事業を開始する者や新規開業して税務申告を2期終えていない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施した。

8.女性、若者/シニア起業家支援資金【財政投融資】

女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち、新たに事業を開始する者または、新規開業して概ね7年以内の者を対象に日本政策金融公庫が優遇金利を適用し、多様な事業者による新規事業の創出を支援した。

9.再挑戦資金(再チャレンジ支援融資)【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、新たに事業を開始する者又は新規開業して概ね7年以内の者で、事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込み等を評価することにより、再起を図る上で、困難な状況に直面している者に対して融資を実施した。

10.中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を通じ経営革新又は異分野の中小企業と連携して新分野の開拓等を行う中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援するため、必要な資金の貸付を行った。

11.創業支援貸付利率特例制度【財政投融資】

新たに事業を開始する者又は新規開業後税務申告を2期終えていない者への貸付利率を引下げ、創業前・後の円滑な資金調達を支援し、創業しやすい環境の創出や創業機運の醸成を図った。

12.経営革新支援事業

中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が新たな事業活動を行うことで経営の向上を図ることを目的として作成し、承認された経営革新計画に対し、低利の融資制度や信用保証の特例等の支援策を通じ、その事業活動を支援した。

また、都道府県の実態に即した電子申請システムを構築し、中小企業にとって利便性の高い手続きが可能となる環境を整えた。

13.エンジェル税制【税制】

創業間もないベンチャー企業への個人投資家(エンジェル)による資金供給を促進するため、引き続き、本税制の普及啓発を実施し、起業促進に向けた環境整備を図った。

14.オープンイノベーション促進税制【税制】

令和4年度税制改正において、イノベーションの担い手となるスタートアップ企業への新たな資金の供給を促進することを目的として、オープンイノベーションに向けた取組の一環でスタートアップ企業へ出資をする事業会社に対し、税制(法人税の所得控除)の後押しを行った。

15.地域における創業支援体制の構築【税制】

地域の創業を促進させるため、産業競争力強化法において、市区町村が民間の創業支援事業者等と連携して創業支援等事業計画を作成し、国の認定を受けた場合、計画に基づく特定創業支援等事業を受けた創業者に対し、信用保証の特例、税制(登録免許税半減)等の支援を行うとともに、創業支援事業者に対し信用保証等の支援を行った。

16.わたしの起業応援団

女性の起業を後押しするため、各省関係者・自治体・女性起業家支援機関をメンバーとして2020年に設立した「わたしの起業応援団」は、2023年2月現在、約290の機関が参画している。2022年度に引き続き、実際に起業を志す女性に対して、本ネットワーク会員のうち複数機関が連携して伴走支援を行う事業を実施した。本施策は女性起業家に対して多角的な支援ができるとともに、支援機関にとっても一組織を超えた支援ノウハウを、ハンズオン支援を通じて共有することで、各支援機関のスキル向上、支援機関同士の連携強化を促す目的がある。培ったノウハウ、スキーム、連携の在り方等を調査報告書として取りまとめ、本ネットワーク内で共有し、次年度以降に活用する予定となっている。また、2022年11月には、女性起業家支援に携わる自治体等の担当者に対する研修を実施した。

<<前の項目に戻る | 目次 | 次の項目に進む>>

TOPへ