本章では、我が国経済の動向について概観するとともに、中小企業・小規模事業者の動向及び中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境について見ていく。

第1節 我が国経済の現状

始めに、我が国経済の動向について概観する。2022年は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)による厳しい状況が徐々に緩和され、緩やかに持ち直してきた。実質GDP成長率の推移を確認すると、2022年は前年比1.0%増となった。2022年を通じた動きを見ると、感染症の流行等により第1四半期はマイナス成長となったが、経済活動の再開等を背景に、第2四半期はプラス成長に転じた。第3四半期は輸入の急増によりマイナス成長となったが内需は堅調であり、足下の2022年第4四半期は前期比0%となった(第1-1-1図)。

第1-1-1図 実質GDP成長率の推移

次に、業況や生産活動の動向について概観する。業種別の業況について、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(以下、「日銀短観」という。)の業況判断DI1の推移を用いて確認する(第1-1-2図)。業況判断DIは、2020年第2四半期を底に製造業、非製造業共に回復傾向が継続した。2022年は1年を通じてプラスとなり、中でも非製造業は回復傾向にある。

1 ここでいうDIとは、Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略で、業況や景況判断を指数化したものを指す。

第1-1-2図 業種別に見た、業況判断DIの推移

続いて、業種別の消費動向について、消費支出のデータを用いて確認する。第1-1-3図は、サービスと財の消費支出及び、特に感染症の影響を大きく受けた外食、宿泊、交通の消費支出の推移を示したものである。2021年は、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が発令されている期間に、消費支出が感染症流行前の水準から大きく減少したが、2022年は財・サービスそれぞれにおいて、感染症流行前を上回る時期もあるなど、回復の傾向が見られた。その一方で、宿泊や交通においてはいまだ感染症流行前の水準には戻っておらず、業種によっては厳しい状況が続いている。

第1-1-3図 業種別に見た、消費支出の推移

コラム1-1-1では、外食・宿泊業に注目して、業態による状況の差異について紹介している。

コラム1-1-1:外食・宿泊業における、業態による状況の差異

感染症流行等で厳しい状況にある外食・宿泊業においても、業態によってその影響は異なっている。例えば外食業において、消費支出のデータを用いて確認すると、居酒屋においては、感染症流行前と比べて依然として厳しい状況にあるが、喫茶店・カフェと共に、徐々にその消費水準を回復させていることが確認できる(コラム1-1-1〔1〕図)。

コラム1-1-1〔1〕図 喫茶店・カフェ、居酒屋における消費支出の推移(感染症流行同時期対比)

宿泊業においては、観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に確認すると、ビジネスホテルにおいては2022年以降最も高い客室稼働率であったものが、シティホテルが徐々にその消費水準を回復させていることが確認できるなど、宿泊施設によって足下の状況が異なっていることが分かる(コラム1-1-1〔2〕図)。

コラム1-1-1〔2〕図 宿泊施設タイプ別に見た、客室稼働率推移

さらには、宿泊業において、感染症流行により旅行需要が変化する中2、従来の団体旅行客向けから個人客向け旅館に刷新する事業を行っている取組があることが確認されている。具体的には、新たにスイートルーム宿泊客を対象とした特別な個室食事処等を設置し、客前料理の提供など、「ライブ感」、「非日常感」、「特別感」を堪能できるプランを創設し、高級旅館というイメージを高めブランド価値の向上に取り組んでいる3。このように、感染症流行等の厳しい状況にある中でも、顧客ターゲットの変更や提供サービスの刷新・ブランド価値向上等の新たな取組を通じて、売上高を回復している企業も見られることが分かる。

2 観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に、2020年(確定値)と比べた年間延べ宿泊者数全体の増減率を見ると、2021年(確定値)では4.2%減少、2022年(速報値)では36.9%増加となっており、感染症流行後に大きく旅行需要が変動したことが分かる。

3 詳細は、中小企業庁「事業再構築補助金第3回公募 通常枠・大規模賃金引上枠・卒業枠・グローバルV字回復枠・緊急事態宣言特別枠・最低賃金枠 採択案件一覧『事業計画書の概要(宿泊業,飲食サービス業)』」(2023年2月14日時点)における、「従来の団体温泉旅館から個人特化旅館へ刷新するための特別個室食事処の設置等によるブランディング事業」を参照。

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