トップページ 白書・統計情報 小規模企業白書 2022年版 小規模企業白書(HTML版) 令和3年度において講じた小規模企業施策 第2章 事業承継・引継ぎ・再生等の支援

第2章 事業承継・引継ぎ・再生等の支援

第1節 事業承継・引継ぎ支援

1.中小企業再生支援・事業承継総合支援事業【令和3年度当初予算:95.0億円の内数、令和2年度3次補正予算:56.6億円の内数】

2021年4月から、M&A等の事業引継ぎ支援を行う「事業引継ぎ支援センター」に、親族内承継支援を行う「事業承継ネットワーク」を統合し、「事業承継・引継ぎ支援センター」へ発展的に改組した。その上で中小企業者等の円滑な事業承継・引継ぎ促進のため、事業承継診断に基づく支援ニーズの掘り起こしや、事業承継計画の策定、譲渡・譲受事業者間のマッチング等の支援をワンストップで行った。

新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、地域の貴重な経営資源を散逸させることなく次世代へ引継ぐため、事業承継・引継ぎ補助金により、事業承継・引継ぎを契機とする設備投資や販路開拓等の新たな取組や、事業引継ぎ時の専門家活用費用等を支援した。また、承継トライアル実証事業により、後継者に求められる素養・能力と、それらを習得するために必要な後継者教育の型を明らかにするとともに、事業者のニーズに対して適切な相談対応やマッチング支援を行うため、事業承継・引継ぎ支援センターの支援体制を整備した。

また、事業承継時の経営者保証解除に向けて、「経営者保証に関するガイドライン」の充足状況の確認に加え、専門家による事業者の財務内容の強化等の磨き上げ、金融機関との目線合わせの支援等を実施した。

2.事業承継円滑化支援事業

全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施した。

3.事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策【令和3年度当初予算:95.0億円の内数】

事業承継時に後継者の経営者保証を可能な限り解除していくため、「事業承継に焦点を当てた「経営者保証ガイドライン」の特則」の運用を開始(2020年4月1日)。経営者保証解除に向けて、経営者保証コーディネーターによるガイドライン充足状況の確認や支援体制を構築したほか、事業承継時に一定の要件の下で、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を創設。また、専門家による中小企業の磨き上げ支援、経営者保証解除に関する金融機関との目線合わせへの専門家の同席支援等も実施した。

また、2021年度に統合・発足した事業承継・引継ぎ支援センターに経営者保証コーディネーターを配置することで、事業承継に関する相談時に経営者保証に関する相談にも対応できる体制を整備する等、事業承継時における経営者保証解除の推進に一層注力した。

4.中小企業の経営資源の集約化に資する税制【税制】

令和3年度税制改正において、経営資源の集約化によって生産性向上等を目指す計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づくM&Aを実施した場合に、〔1〕設備投資減税〔2〕雇用確保を促す税制〔3〕準備金の積立を認める措置を講じた。

5.個人版事業承継税制【税制】

平成31年度税制改正において、個人事業者の事業承継を促進するため、2019年からの10年間限定で、多様な事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する制度を創設した。

6.法人版事業承継税制【税制】

平成30年度税制改正において、「法人版事業承継税制」を抜本拡充し、2018年からの5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象に、非上場株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じた。

7.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置【税制】

M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を通じて事業の継続・技術の伝承等を図る事業者を支援するため、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて再編・統合を行った際にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減する措置を講じた。

8.経営承継円滑化法による総合的支援

経営承継円滑化法に基づき、相続人間の一定の合意により、遺留分に伴う相続紛争を防止するため、民法の特例措置を講じた。また、事業承継に伴う各種資金ニーズに対応するための金融支援を講じた。さらに、令和3年8月には、事業承継(M&Aを含む)に伴う株式の集約を円滑化するため、株式買取りの手続きに必要な期間を5年から1年に短縮する会社法の特例を創設した。

9.小規模企業共済制度

小規模企業共済制度は、小規模企業者である個人事業主や会社等の役員が掛金を積み立て、廃業や引退をした際に共済金を受け取れる制度であり、いわば小規模企業の経営者のための「退職金制度」である。2021年12月末現在で158.1万人が在籍しており、2021年4月から2021年12月までの新規加入者は9.3万人に上った。

第2節 事業再生支援

1.(再掲)中小企業再生支援協議会【令和2年度3次補正予算:30.0億円の内数、令和3年度当初予算:95.0億円の内数】

2.(再掲)中小企業再生ファンド【令和3年度補正予算:757.4億円の内数】

第3節 創業支援

1.ファンド出資事業(起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド)

民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小企業基盤整備機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図った。起業支援ファンドについて、平成22年度の制度再編後から2021年12月末時点まで出資先ファンド数47件、出資約束総額約3,303億円、投資先企業数1,299社に至った。また、中小企業成長支援ファンド(中小企業経営力強化支援ファンドを除く)については、出資先ファンド数90件、出資約束総額9,143億円、投資先企業数1,483社に至った(両ファンドともに投資先企業数の実績は、2021年11月末時点)。

2.グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業【令和3年度当初予算:11.3億円】

グローバルで成長するスタートアップのロールモデル創出に向けて、官民で連携し、海外展開を含むスタートアップの育成・支援を行う「J-Startup」プログラムを実施した。また、起業家等100名を対象とした人材育成事業等を行ったほか、政府調達における優遇や、ものづくり系スタートアップの量産化・事業化支援を行った。

3.起業家教育事業(学びと社会の連携促進事業)【令和3年度当初予算:13.1億円の内数】

将来の創業者を育成するため、高等学校等による起業家教育の導入を推進し、起業への関心や起業家に必要とされるマインドの向上を図った。

4.ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)【令和3年度当初予算:7.0億円の内数】

産学金官の連携により、地域の資源と資金(地域金融機関の融資)を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型事業の立ち上げを支援するため、民間事業者等が事業化段階で必要となる初期投資費用(ハード整備)について、地方公共団体が助成する経費の一部に対し、交付金として交付した。

5.中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)【令和3年度当初予算:0.1億円】

40歳以上の中高年齢者の雇用機会の創出を図り、生涯現役社会の実現を推進するため、40歳以上の中高年齢者が起業を行い、事業運営のための従業員を雇い入れる際に必要となる、募集・採用や教育訓練にかかる経費の一部を助成するとともに、起業後一定期間経過後に生産性向上が図れた場合には上乗せの助成金を別途支給した。

6.創業者向け保証

創業者又は創業予定者等の創業資金の円滑な資金繰り支援のため、信用保証制度として創業関連保証等を措置した。令和3年度(2021年12月末まで)の保証承諾実績は、創業関連保証19,740件、約1,083億円、創業等関連保証636件、約62億円となっている。

※2021年8月より、創業等関連保証を創業関連保証に一本化。

7.新創業融資制度【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、新たに事業を開始する者や新規開業して税務申告を2期終えていない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施した。

8.女性、若者/シニア起業家支援資金【財政投融資】

女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち、新たに事業を開始する者または、新規開業して概ね7年以内の者を対象に日本政策金融公庫が優遇金利を適用し、多様な事業者による新規事業の創出を支援した。

9.再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、新たに事業を開始する者又は新規開業して概ね7年以内の者で、事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込み等を評価することにより、再起を図る上で、困難な状況に直面している者に対して融資を実施した。

10.中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を通じ経営革新又は異分野の中小企業と連携して新分野の開拓等を行う中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援するため、必要な資金の貸付を行った。

11.創業支援貸付利率特例制度【財政投融資】

新たに事業を開始する者又は新規開業後税務申告を2期終えていない者への貸付利率を引下げ、創業前・後の円滑な資金調達を支援し、創業しやすい環境の創出や創業機運の醸成を図った。

12.経営革新支援事業

中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が新たな事業活動を行うことで経営の向上を図るために作成し、承認された経営革新計画に対し、低利の融資制度や信用保証の特例等の支援策を通じ、その事業活動を支援した。

13.エンジェル税制【税制】

創業間もないベンチャー企業への個人投資家(エンジェル)による資金供給を促進するため、引き続き、本税制の普及啓発を実施し、起業促進に向けた環境整備を図った。

14.オープンイノベーション促進税制【税制】

イノベーションの担い手となるスタートアップ企業への新たな資金の供給を促進することを目的として、オープンイノベーションに向けた取組の一環でスタートアップ企業へ出資をする事業会社に対し、税制(法人税の所得控除)の支援を行った。

15.地域における創業支援体制の構築【税制】

地域の創業を促進させるため、産業競争力強化法において、市区町村が民間の創業支援事業者と連携して創業支援等事業計画を作成し、国の認定を受けた場合、計画に基づく創業支援を受けた創業者に対し、信用保証の特例、税制(登録免許税半減)等の支援を行うとともに、創業支援事業者に対し信用保証等の支援を行った。

16.わたしの起業応援団

女性の起業を後押しするため、各省関係者・自治体・女性起業家支援機関をメンバーとして2020年に設立した「わたしの起業応援団」は、2022年2月現在、260以上の機関が参画している。2021年度は新たに、実際に起業を志す女性に対して、本ネットワーク会員のうち複数機関が連携して伴走支援を行う事業を実施した。本施策は女性起業家に対して多角的な支援ができるとともに、支援機関にとっても一組織を超えた支援ノウハウを、ハンズオン支援を通じて共有することで、各支援機関のスキル向上、支援機関同士の連携強化を促す目的がある。培ったノウハウ、スキーム、連携の在り方等を調査報告書として取りまとめ、本ネットワーク内で共有し、次年度以降に活用する予定となっている。2022年2月には第2回関係者連絡会議を実施しており、加えて、支援者の育成のための研修等も実施した。