第2章 事業再構築、事業承継・引継ぎ・再生等の支援
第1節 事業再構築の後押し
1.中小企業等事業再構築促進事業【令和3年度補正予算:6,123億円】
中小企業等の事業再構築を支援する「中小企業等事業再構築促進事業」について、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対しては、通常枠より補助率を引き上げた「回復・再生応援枠」を新設することに加え、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者に対しては、売上高減少要件を撤廃した上で補助上限額を引き上げた「グリーン成長枠」を新設するなどの見直しを行った上で支援を継続する。
2.ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業【令和4年度当初予算:10.2億円】
複数の中小企業等が連携し、連携体全体として新たな付加価値の創造や生産性向上を図るプロジェクトや、新分野、業態転換、革新的な製品・サービス開発、生産プロセス等の改善に取り組むプロジェクト等に必要な設備投資等の経費を最大2年間支援する。
第2節 事業承継・引継ぎ・再生等の支援
1.中小企業活性化協議会【令和3年度補正予算:757.4億円の内数、令和4年度当初予算:157.7億円の内数】
令和4年4月1日より、中小企業再生支援協議会を経営改善支援センターと統合し、収益力改善・事業再生・再チャレンジを一元的に支援する組織として、「中小企業活性化協議会」を全国47都道府県の商工会議所等に設置する。具体的には、必要に応じ、経営改善計画策定支援事業等を活用し、民間専門家との連携を図りながら、資金繰り管理や採算管理などの早期の収益力改善、経営改善から抜本的な事業再生に向けた支援や個人保証債務の整理に係る弁済計画の策定支援を行うことで、同協議会がハブとなり、中小企業・小規模事業者の収益力改善・事業再生・再チャレンジを地域全体で推進していく。
2.事業承継・引継ぎ支援事業【令和4年度当初予算:16.3億円】
事業承継・引継ぎ後の設備投資や販路開拓等の新たな取組を支援するとともに、事業引継ぎ時の専門家活用費用等を支援する。また、事業承継・引継ぎに当たり廃業を伴う場合には、廃業費用についても支援する。
3.中小企業再生ファンド【令和3年度補正予算:757.4億円の内数】
事業再生に取り組む中小企業への経営支援や資金供給等を実施するため、中小企業基盤整備機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、中小企業の再生を地域内で支援する地域型ファンドや、広域的に支援する全国型ファンドの組成・活用の促進に取り組み、新型コロナウイルス感染症の影響により高まる中小企業の再生支援のニーズに万全を期す。
4.中小企業経営力強化支援ファンド【令和3年度補正予算:757.4億円の内数】
長期化する新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化した、地域経済の中核となる中小企業等の経営力強化と成長を支援する。具体的には、中小機構からの出資も呼び水に、官民連携の全国ファンド等を組成した上で、資本性資金の投入ときめ細やかなハンズオン支援を行うことで、経営力の強化と成長を図り、事業再構築や事業再編を促進する。
5.中小企業再生支援・事業承継総合支援事業(事業承継支援事業)【令和4年度当初予算:157.7億円の内数】
各都道府県に置かれた「事業承継・引継ぎ支援センター」において、中小企業者等の円滑な事業承継や引継ぎ(M&A)促進のため、支援ニーズの掘り起こしからニーズに応じた支援までワンストップで行う。
新型コロナウイルス感染症の影響も含め増加する支援ニーズに対応できるよう、センターの人員強化やM&A支援機関との連携を強化することに加えて、支援ニーズに応じた経営資源引継ぎ型の創業や転廃業時の経営資源の引継ぎについての支援や、企業健康診断に係る調査事業を実施する。
6.事業承継円滑化支援事業
全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施する。
7.事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策【令和4年度当初予算:157.7億円の内数】
事業承継時に後継者の経営者保証を可能な限り解除していくため、「事業承継に焦点を当てた「経営者保証ガイドライン」の特則」の運用を開始(2020年4月1日)。経営者保証解除に向けて、経営者保証コーディネーターによるガイドライン充足状況の確認や支援体制を構築したほか、事業承継時に一定の要件の下で、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を創設。
また、2021年度に統合・発足した事業承継・引継ぎ支援センターに経営者保証コーディネーターを配置することで、事業承継に関する相談時に経営者保証に関する相談にも対応できる体制を整備し、専門家による中小企業の磨き上げ支援、経営者保証解除に関する金融機関との目線合わせへの専門家の同席支援等、事業承継時における経営者保証解除の推進に引き続き注力する。
8.中小企業の経営資源の集約化に資する税制【税制】
経営資源の集約化によって生産性向上等を目指す計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づくM&Aを実施した場合に、〔1〕設備投資減税〔2〕準備金の積立を認める措置を講じる。
9.土地(商業地等)に係る固定資産税の経済状況に応じた措置【税制】
土地(商業地等)に係る固定資産税・都市計画税について、令和4年度税制改正において、課税額が上昇する土地について、税額上昇分を半減する措置を講じる。
10.個人版事業承継税制【税制】
平成31年度税制改正において、「個人版事業承継税制」を創設し、2019年からの5年以内に個人事業承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象に、事業用資産に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じる。
11.法人版事業承継税制【税制】
令和4年度税制改正において特例承継計画の提出期限を1年延長し、2018年からの6年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象に、非上場株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じる。
12.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置【税制】
M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を通じて事業の継続・技術の伝承等を図る事業者を支援するため、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて再編・統合を行った際にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減する。また、令和4年度税制改正において、適用期限を2年延長する。
13.経営承継円滑化法による総合的支援
経営承継円滑化法に基づき、相続人間の一定の合意により、遺留分に伴う相続紛争を防止するため、民法の特例措置を講じる。また、事業承継に伴う各種資金ニーズに対応するための金融支援措置を講じる。さらに、事業承継(M&Aを含む)に伴う株式の集約を円滑化するため、所在不明株主からの株式買取り等の手続きに必要な期間を5年から1年に短縮する会社法の特例措置を講じる。
14.小規模企業共済制度
小規模企業共済制度は、小規模企業者である個人事業主や会社等の役員が掛金を積み立て、廃業や引退をした際に共済金を受け取れる制度であり、いわば小規模企業の経営者のための「退職金制度」である。引き続き、制度への加入促進と共済金等の支給を着実に実施する。
第3節 創業支援
1.ファンド出資事業(起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド)
民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小企業基盤整備機構が出資(ファンド総額の1/2以内又は4/5以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)、新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図る。
2.グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業【令和4年度当初予算:4.7億円】
新たな価値を生むプレーヤー等を創出するエコシステムを構築するため、J-Startup企業等のスタートアップに対し、国内外展開を支援する。また、関係機関と協力した海外進出支援や、政府調達における優遇等を実施するとともに、海外のベンチャーキャピタルやアクセラレーターのノウハウを取り入れる等、我が国における自律的なエコシステムの構築を後押しする。
3.起業家教育事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定を受けた市区町村等における創業機運の醸成に資する取組として、起業家教育の導入を推進する。
4.ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)【令和4年度当初予算:5.0億円の内数】
産学金官の連携により、地域の資源と資金(地域金融機関の融資)を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型事業の立ち上げを支援するため、民間事業者等が事業化段階で必要となる初期投資費用(ハード整備等)について、地方公共団体が助成する経費の一部に対し、交付金として交付する。
5.新たな学び直し・キャリアパス促進事業【令和4年度当初予算:8.6億円】
大企業・スタートアップ等の間の人材交流を促進するべく、大企業等に所属する人材が、副業・出向等により中小企業・スタートアップへ経営参画する場合等の費用の支援、および起業に失敗した人材等が再度の起業に向けた準備を行う期間、雇用や業務委託を図る企業の支援を行う。
6.創業者向け保証
創業者又は創業予定者等の創業資金の円滑な資金繰り支援のため、信用保証制度として創業関連保証を措置する。
7.新創業融資制度【財政投融資】
日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者や新規開業して税務申告を2期終えていない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施する。
8.女性、若者/シニア起業家支援資金等【財政投融資】
女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち、新たに事業を開始する者または、新規開業して概ね7年以内の者を対象に日本政策金融公庫が優遇金利を適用し、多様な事業者による新規事業の創出を支援する。
9.再挑戦支援資金等(再チャレンジ支援融資)【財政投融資】
日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者又は開業後概ね7年以内の者で、事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込み等を評価することにより、再起を図る上で、困難な状況に直面している者に対して融資を実施する。
10.中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】
日本政策金融公庫が、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を通じ経営革新又は異分野の中小企業と連携して新分野の開拓等を行う中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援するため、必要な資金の貸付を行う。
11.創業支援貸付利率特例制度【財政投融資】
新たに事業を開始する者又は新規開業後税務申告を2期終えていない者への貸付利率を引下げ、創業前・後の円滑な資金調達を支援し、創業しやすい環境の創出や創業機運の醸成を図る。
12.経営革新支援事業
中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が新たな事業活動を行うことで経営の向上を図ることを目的として作成し、承認された経営革新計画に対し、低利の融資制度や信用保証の特例等の支援策を通じ、その事業活動を支援する。
13.エンジェル税制【税制】
創業間もないベンチャー企業への個人による資金供給を促進するため、本税制の普及啓発を実施し、起業促進に向けた環境整備を図る。
14.オープンイノベーション促進税制【税制】
スタートアップ企業と既存企業の協働によるオープンイノベーションを促進する観点から、イノベーションの担い手となるスタートアップ企業へ資本金の増加を伴う現金による出資をする事業会社に対し、税制措置(法人税の所得控除)を講じる。令和4年度税制改正により、拡充を行った上で、適用期限を2年延長する。
15.地域における創業支援体制の構築【税制】
地域の創業を促進させるため、産業競争力強化法において、市区町村が民間の創業支援事業者と連携して創業支援等事業計画を作成し、国の認定を受けた場合、計画に基づく創業支援を受けた創業者に対し、信用保証の特例、税制(登録免許税半減)等の支援を行うとともに、創業支援事業者に対し信用保証等の支援を行う。税制措置(登録免許税半減)については、令和4年度税制改正により、適用期限を2年延長する。
16.わたしの起業応援団
2020年12月に設立した「わたしの起業応援団」を通じ、女性起業家の支援事例や支援手法・関係省庁の施策情報の共有、女性起業家支援者の連携強化等により、女性起業家の事業環境の向上や支援体制、支援内容の充実を図り、起業・創業の活性化や女性起業家の成長・発展を促進する。また、支援者の育成のための研修等も実施する。