トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2022年版 中小企業白書(HTML版) 令和3年度において講じた中小企業施策 第5章 災害からの復旧・復興、強靭化

第5章 災害からの復旧・復興、強靭化

第1節 資金繰り支援

1.被災中小企業への資金繰り支援(政策金融)【財政投融資】

東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫(危機対応融資)において、「東日本大震災復興特別貸付」を継続的に実施した(商工組合中央金庫は、2020年3月で新規受付を終了)。本制度の運用開始後、2021年12月末までの貸付実績は、約30万4,000件、約6兆1,000億円となった。また、東日本大震災においては、原発事故に係る警戒区域等の公示の際に当該区域内に事業所を有していた中小企業・小規模事業者や、地震・津波により事業所等が全壊・流失した中小企業・小規模事業者に対して、県の財団法人等を通じ、貸付金利を実質無利子化する措置を引き続き実施した。さらに、令和元年台風第19号等や令和2年7月豪雨により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、日本政策金融公庫において「令和元年台風第19号等特別貸付」、「令和2年7月豪雨特別貸付」を実施。本制度の運用開始後2021年12月末までの貸付実績は、令和元年台風第19号等特別貸付が約1,600件、約245億円、令和2年7月豪雨特別貸付が約220件、約27億円となった。

2.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置の拡充【財政投融資】

東日本大震災、令和元年台風第19号等、新型コロナウイルス感染症及び令和2年7月豪雨災害により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対し、無担保・無保証人・低利で利用できる日本政策金融公庫によるマル経・衛経融資の貸付限度の拡充や金利の引下げを実施した。

3.被災中小企業への資金繰り支援(信用保証)

信用補完制度により、〔1〕取引先の倒産、自然災害、取引金融機関の経営合理化等により経営の安定に支障が生じている中小企業・小規模事業者に信用保証協会が通常の保証枠とは別枠での保証を実施し、〔2〕自然災害等の影響により経営の安定に支障が生じた中小企業に対し、セーフティネット保証4号を措置し、また、東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象とした保証制度(東日本大震災復興緊急保証)を引き続き措置、〔3〕信用保証協会による複数の借入債務の一本化を通じて、中小企業・小規模事業者の足下の返済負担の軽減を図る借換保証や、経営者に事業改善の意欲があるにもかかわらず、返済条件緩和の実施による前向きな金融支援を受けることが困難な中小企業・小規模事業者を支援するため、条件変更改善型借換保証を引き続き実施、2020年に創設した事業承継特別保証や経営承継借換関連保証により、わが国中小企業の課題である事業承継を推進、〔5〕信用保証協会の利用者又は利用を予定している創業(予定)者、経営改善や事業承継、生産性向上に取り組もうとする中小企業・小規模事業者に対して信用保証協会が地域金融機関と連携して、専門家派遣をはじめとした経営支援を実施し、資金繰り支援と一体となった支援を実施した。

4.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」

原子力発電所事故の被災区域に事業所を有する中小企業等が福島県内において事業を継続・再開する場合に必要な事業資金(運転資金・設備資金)に対する長期・無利子の融資を行った。

第2節 二重債務問題対策

1.「産業復興相談センター」及び「産業復興機構」による再生支援【令和3年度当初予算:7.4億円】

東日本大震災の被災各県における中小企業再生支援協議会の体制を拡充するかたちで2011年度に設置した総合相談窓口である「産業復興相談センター」と、債権買取等を行う「産業復興機構」による中小事業者等の事業再生支援を引き続き実施した。産業復興相談センターでは、2022年2月28日までに事業者からの相談を累計7,029件受け付けており、関係金融機関等による金融支援の合意を取り付けた案件は累計1,453件(うち産業復興機構による債権買取決定案件は累計339件)となった。

2.再生可能性を判断する間の利子負担の軽減

東日本大震災及び原子力発電所の事故による被害を受けた中小事業者等が産業復興相談センターを活用した事業再生に取り組む際に、再生計画策定支援等の期間中に発生する利子を補填することにより、早期の事業再生の実現を図ることを目的とする事業であり、2011年度に創設した。本施策については、2021年度も引続き実施した。

3.「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」による再生支援

被災事業者の二重債務問題に対応するため、東日本大震災事業者再生支援機構では、旧債務に係る返済負担の軽減等の支援を実施した。平成24年3月5日の業務開始以来、第1期復興・創生期間(2021年3月末まで)の終了までに2,939件の相談を受け付けており、そのうち747先の事業者に対して、債権買取等の再生支援を行う旨の決定をした。支援決定した事業者747先のうち、231先については再生支援が完了した(2021年12月末現在)。

第3節 工場等の復旧への支援

1.中小企業組合等協同施設等災害復旧事業【令和3年度当初予算:64.3億円】

東日本大震災に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、中小企業等グループが作成する復興事業計画に基づき、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4を補助し、被災した中小企業等グループ等の施設の復旧等に対して支援を行った。

2.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け

東日本大震災により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、中小企業基盤整備機構と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行った。

3.仮設工場・仮設店舗等整備事業【令和3年度当初予算:9.9億円の内数】

東日本大震災の被害を受けた中小企業者等の早期事業再開を支援するため、中小企業基盤整備機構が仮設工場や仮設店舗等を整備し被災市町村あて譲渡を行い、当該市町村が被災事業者に原則無償で区画を貸し出す仮設施設整備事業を実施。2022年1月末までに6県53市町村648案件の施設を設置した。また、2014年4月より仮設施設の本設化、移設、撤去に要する費用の仮設施設有効活用等助成事業を実施し、2022年1月末までに196案件の助成を行った。

4.なりわい再建支援事業【令和3年度補正予算:46.2億円】

令和2年7月豪雨に係る被災地域の経済・雇用の早期回復を図るため、復興事業計画に基づき、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、主に国が1/2、県が1/4を補助し、被災した中小企業等の施設の復旧等に対して支援を行った。

5.なりわい再建資金利子補給事業【令和3年度補正予算:0.3億円】

令和2年7月豪雨の被災地域において、中小企業等が行う施設復旧等の費用を補助する、なりわい再建支援事業を措置し、当該事業を活用して復旧する事業者に対して、自己負担分の借入に係る利子補給を3年間実施することで、融資の実質無利子化を行った。

6.中小企業等グループ補助金(なりわい再建支援事業)【令和3年度補正予算:51.3億円】

令和3年福島県沖地震に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、中小企業等グループが作成する復興事業計画に基づき、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4を補助し、被災した中小企業等グループ等の施設の復旧等に対して支援を行った。

7.被災小規模事業者再建事業(持続化補助金)【令和2年度予備費:113.5億円、令和2年度3次補正予算:11.4億円】

令和2年7月豪雨により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対して、本補助事業を実施し、早期に新たな経営計画を作成し、事業再建に取り組むにあたり、その経営計画に沿って販路開拓に取り組むために要する経費の一部を支援した(2022年2月時点の採択件数:970件)。

8.事業復興型雇用確保事業

被災地の深刻な人手不足による雇用のミスマッチに対応するため、産業政策と一体となった雇用面での支援を実施した。

第4節 防災・減災対策

1.中小企業強靱化対策事業【中小企業基盤整備機構の内数】

中小企業基盤整備機構の地域本部等に自然災害等の専門家を配置し、自然災害等に係る相談等にワンストップで対応する。中小企業に対し、自然災害に対する事前の取組を促進するため「事業継続力強化計画」等を普及啓発するためのシンポジウムやセミナー、計画策定を支援するための専門家派遣等を実施した。

2.中小企業等経営強化法(事業継続力強化計画)

中小・小規模事業者が自然災害等に対する防災・減災の取組をまとめた「事業継続力強化計画」を認定し、認定をうけた事業者に対して金融支援や税制措置など計画を実行するための支援措置を講じた(2021年12月末現在で3.7万者を認定)。

3.(再掲)中小企業防災・減災投資促進税制【税制】

4.社会環境対応施設整備基金(BCP融資)【財政投融資】

中小企業による、災害発生時の事業継続の観点から防災に資する設備等の整備を支援するもので、中小企業が策定したBCPや、国から認定を受けた事業継続力強化計画に基づき、防災・減災に資する施設等の整備を行うために必要な整備資金及び長期運転資金の貸付を行った。

5.小規模事業者支援法による事業継続力強化支援計画の推進

小規模事業者支援法第5条に基づき、商工会・商工会議所が、地域の防災を担う市町村と連携し、事業継続力強化のための支援を行う計画を作成し、都道府県知事が認定する。2022年1月末時点において、46都道府県においてガイドラインを策定し、各都道府県のガイドライン等に基づき907計画が認定された。

第5節 その他の対策

1.特別相談窓口等の設置

被災地域等の中小・小規模事業者に対して、日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小企業基盤整備機構地域本部等及び経済産業局に設置した相談窓口において被災中小企業者等からの経営・金融相談等にきめ細かく対応した。

2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施

どこに相談したらよいか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を実施した。

3.特定求職者雇用開発助成金(被災者雇用開発コース)【令和3年度当初予算:0.7億円】

東日本大震災による被災離職者等の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給した。

4.原子力災害対応雇用支援事業

原子力災害被災12市町村及びその出張所等所在自治体において、民間企業・NPO等への委託により、福島県の被災求職者の一時的な雇用・就業機会を創出した上で、人材育成を実施し生活の安定を図った。

5.放射線量測定指導・助言事業【令和3年度当初予算:0.3億円】

避難指示区域等の見直しにより原子力災害被災企業の事業再開や企業立地の進展が見込まれることから、福島県内企業等からの要請に応じて、専門家チームを派遣するとともに、福島県内の事業所において、工業製品等の放射線量測定等に係る指導・助言を行い、工業製品等に係る風評被害払拭に取り組んだ。

6.福島イノベーション・コースト構想 地域復興実用化開発等促進事業【令和3年度当初予算:57.0億円】

ロボット技術等の福島イノベーション・コースト構想の重点分野(*)について、地元企業との連携等による地域振興に資する実用化開発等の費用の補助を行った。

*廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産、医療関連、航空宇宙の分野を言う。

また、福島県浜通り地域等の自治体と連携して実用化開発を行う民間企業等に対し、重点的な支援を行うための新たな制度を創設した。

7.中小・小規模事業者の事業再開等支援事業【156.3億円(基金)】

福島県の原子力被災12市町村の働く場の創出や、買い物をする場などまち機能の早期回復を図るため、被災事業者等の事業再開や創業に要する設備投資等の費用の一部を補助した。2021年度からは、特定復興再生拠点区域等における事業再開を促進するため、補助率・補助額の拡充を行った。

8.輸送等手段の確保支援事業【令和3年度当初予算:0.9億円】

福島県の原子力被災12市町村の被災事業者等に対して、衣・食・医等に関する生活関連商品等の提供や広域的な移動サービスの提供に必要となる輸送手段を確保する事業、企業活動に必要となる製品等を共同して輸送する事業に要する費用の一部を補助した。

9.人材マッチングによる人材確保支援事業【令和3年度当初予算:4.0億円】

福島県の原子力被災12市町村において、被災事業者等の人材不足を解消するため、人材コーディネータが個々の人材ニーズを踏まえた適切な媒体による求人情報を発信し、人材確保支援を行った。

10.6次産業化等へ向けた事業者間マッチング等支援事業【令和3年度当初予算:5.2億円】

被災事業者等の販路開拓や新ビジネス創出等のため、企業間取引拡大に向けたマッチング等の支援を行った。

11.福島相双復興官民合同チーム専門家支援事業【97.0億円(基金)】

福島県の原子力被災12市町村の被災事業者等の事業・なりわいの再建、事業者の自立等を促進するため、官民合同チームが、被災事業者等の個々の事情に応じたきめ細やかなコンサルティング支援を行った。

12.地域の伝統・魅力等の発信支援事業【令和3年度当初予算額:1.9億円】

福島県の伝統・魅力等を発信する民間団体等の支援及び有効な発信手段の選定、発信手段と親和性のあるコンテンツの制作、発信後の効果測定等の実施により、原子力被災12市町村を中心とした風評被害の払拭や交流人口増加による事業基盤の安定を目指すための広報活動等を支援した。

13.自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金【令和3年度当初予算:215.1億円】

東日本大震災及び原子力災害によって産業が失われた浜通り地域等において、工場等の新増設を支援し企業立地を促進することにより、被災者の「働く場」を確保し、雇用の創出及び産業集積を図り、自立・帰還を加速させた。加えて、住民の帰還や産業の立地を促進するため、商業回復を進めた。また、福島県浜通り地域等の厳しい雇用情勢を踏まえ、雇用要件を緩和しつつ、新たに経済効果要件を求める制度を創設した。