第1章 新型コロナウイルス感染症対策
第1節 事業継続の後押し
1.緊急事態宣言等の影響緩和に係る一時支援金等【令和2年度予備費:2,490億円、令和2年度補正予算流用額:4,060億円】
(一時支援金)
2021年1月から3月にかけて発令された緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業又は不要不急の外出・移動の自粛により、売上が50%以上減少した中小法人等に対して60万円、個人事業者等に対して30万円を上限に給付を行った。
約57万件の申請に対し、約55万件の中小企業・個人事業者に約2,221億円を給付し、給付を終了した。
(月次支援金)
2021年4月から10月の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等に伴う飲食店の休業・時短営業又は不要不急の外出・移動の自粛の影響により、売上が50%以上減少した中小法人等に対して20万円/月、個人事業者等に対して10万円/月を上限に給付を行った。
2022年2月末時点で、約249万件の申請に対し、約234万件の中小企業・個人事業者に約3,041億円を給付した。
2.事業復活支援金【令和3年度補正予算:28,032億円】
2021年11月から2022年3月のいずれかの月について、新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が50%以上、又は30%以上50%未満減少した中小法人等に対して事業規模に合わせて最大250万円、個人事業者等に対して50万円を上限に給付を行った。
2022年2月末時点で、約37.1万件の申請に対し、約21.8万件の中小企業・個人事業者に約1,090億円を給付した。
3.新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金【令和3年度予備費:5,000億円、令和3年度補正予算:67,969億円の内数】
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するとともに感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活を支援し地方創生を図るため、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施できるように、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」による支援を実施した。2021年4月及び8月には、事業者支援に向けた措置として計6,000億円分の交付限度額を各自治体に通知し、12月には、令和3年度補正予算の成立を受けて、事業者支援にも活用可能な地方単独事業分1兆円分の交付限度額を各自治体に通知した。
4.雇用調整助成金の特例措置【令和3年度当初予算:6,240億円、令和3年度予備費:217億円、令和3年度補正予算:9,526億円】
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化等の経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業、教育訓練又は出向を行って労働者の雇用の維持を図る場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものである。
新型コロナウイルス感染症や2020年7月豪雨の影響を受けて事業が縮小した事業主に対しては、雇用調整助成金の特例措置を実施し、支給要件を緩和するとともに、助成率の引上げ、提出書類の簡素化等、更なる雇用調整助成金の特例措置を実施した。
5.日本政策金融公庫等による資金繰り支援【財政投融資】
新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化している中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫(危機対応融資)において、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」及び「新型コロナ対策資本性劣後ローン」等を実施した。2020年1月末に新型コロナウイルスに関する特別相談窓口を設置して以降、2022年2月末での新型コロナ関連の融資実績は、約102万件、約19兆3千億円となっている。また、特に業況が悪化している中小企業・小規模事業者を対象に、中小企業基盤整備機構を通じて、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」等の貸付金利を当初3年間実質無利子化する措置を実施した。
6.民間金融機関を通じた資金繰り支援(信用保証制度)
新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化している中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、危機関連保証やセーフティネット保証4号等を実施した。2020年1月末に新型コロナウイルスに関する特別相談窓口を設置して以降、2022年2月末での新型コロナ関連の保証実績は、約196万件、約37兆1千億円となっている。また、信用補完制度を通じた資金繰り支援として下記を実施した。
〔1〕取引先の倒産、自然災害、取引金融機関の経営合理化等により経営の安定に支障が生じている中小企業・小規模事業者に信用保証協会が通常の保証枠とは別枠での保証を実施した。
〔2〕自然災害等の影響により経営の安定に支障を生じた中小企業に対し、セーフティネット保証4号を措置し、また、東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象とした保証制度(東日本震災緊急保証)を引き続き措置した。
〔3〕信用保証協会による複数の借入債務の一本化を通じて中小企業・小規模事業者の足下の返済負担の軽減を図る借換保証や、経営者に事業改善の意欲があるにもかかわらず返済条件の緩和の実施による前向きな金融支援を受けることが困難な中小企業・小規模事業者を支援するため条件変更改善型借換保証を引き続き実施したことに加えて、2020年に創設した事業承継特別保証や経営承継借換関連保証により、我が国の中小企業の課題である事業承継を推進した。
〔4〕信用保証協会の利用者又は利用予定している創業(予定)者、経営改善や事業承継、生産性向上に取り組もうとする中小企業・小規模事業者に対して信用保証協会が地域金融機関と連携して、専門家派遣をはじめとした経営支援を実施し、資金繰り支援と一体となった支援を実施した。
7.中小企業再生支援協議会【令和2年度3次補正予算:30.0億円、令和3年度当初予算:95.0億円の内数】
各都道府県の商工会議所等に設置した中小企業再生支援協議会において、事業の収益性はあるが、債務超過等の財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者に対し、窓口相談による課題解決に向けたアドバイスや、関係金融機関等との調整も含めた再生計画の策定支援を行った。
また、2020年4月から、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者の資金繰りを支援するため、窓口相談や既往債務にかかる最長1年間の元金返済猶予要請や、新規融資を含めた関係金融機関との調整も含めた資金繰り計画の策定支援(新型コロナ特例リスケジュール支援)を開始した。
2020年度の実績は、相談件数5,580件、再生計画の策定完了件数406件であり、新型コロナ特例リスケジュール支援開始の影響もあって相談件数は過去最大の年間件数となり、2021年度においても平時を超える見込み。また、制度発足時から2021年12月末までの実績は、相談件数53,129件、再生計画の策定完了件数16,185件となった。
第2節 事業再構築の後押し
1.中小企業等事業再構築促進事業【令和2年度3次補正予算:11,485億円】
ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開や事業転換等中小企業等の思い切った事業再構築を支援した。
通常枠よりも補助率を引き上げた緊急事態宣言特別枠や最低賃金枠、補助上限額を引き上げた卒業枠や大規模賃金引上枠など複数の申請類型を設けることで、様々な事業者のニーズに柔軟に対応した。
第3節 事業再生等の支援
1.(再掲)中小企業再生支援事業協議会【令和2年度3次補正予算:30.0億円、令和3年度当初予算:95.0億円の内数】
2.中小企業再生ファンド【令和3年度補正予算:757.4億円の内数】
事業再生に取り組む中小企業への経営支援や資金供給等を実施するため、中小企業基盤整備機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、中小企業の再生を地域内で支援する地域型ファンドや広域的に支援する全国型ファンドの組成・活用を促進する取組を行った。事業再生に取り組む中小企業への投資機会の拡大を図るため、中小企業基盤整備機構による、ファンド総額の2分の1以内の出資を可能としていたが、令和2年度補正予算および令和3年度補正予算により、出資上限割合を5分の4まで引き上げ、ファンドの組成を促し、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業の再生に万全を期した。2021年12月末までに67件のファンドが創設され、ファンドの総額は約2,249億円に上った。また、当該再生ファンドによる投資実績は2021年12月末までに633社、約1,325億円に上った。
3.中小企業経営力強化支援ファンド【令和2年度第1次補正予算100億円の内数、令和2年度2次補正予算600億円の内数、令和3年度補正予算757.4億円の内数】
長期化する新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化した、地域経済の中核となる中小企業等の経営力強化と成長を支援した。具体的には、中小企業基盤整備機構からの出資も呼び水に、官民連携の全国ファンド等を組成した上で、資本性資金の投入ときめ細やかなハンズオン支援を行うことで、経営力の強化と成長を図り、事業再構築や事業再編を促進した。
第4節 投資促進・販路開拓支援
1.中小企業生産性革命推進事業(特別枠)【令和2年度3次補正予算:2,300億円の内数】
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することを踏まえ、感染拡大を抑えながら経済の持ち直しを図るため、中小企業のウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環を実現させるべく「低感染リスク型ビジネス枠」を創設した。
2.サプライチェーン対策のための国内投資促進事業【令和2年度3次補正予算:2,108億円】
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高く、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材、又は国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関して、国内の生産拠点等の整備を進めることにより、製品・部素材の円滑な供給を確保するなど、サプライチェーンの強靱化を図ることを目的とし、設備の導入等を支援した。
3.海外サプライチェーン多元化支援事業【令和2年度3次補正予算:116.7億円】
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高く、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材等の日本企業による海外生産拠点の多元化や高度化に向けた設備導入の支援を実施した。
4.貿易保険による新型コロナウイルス感染症に関する支援策
貿易保険について、新型コロナウイルス感染症拡大による損失は保険金支払い対象となることを公表し、安心して海外ビジネスが継続できるよう情報発信を行った。また、コロナ禍による事業者の業務実施の制約等を踏まえ、必要に応じて保険契約に係る諸手続き、保険事故・回収関連の被保険者義務の猶予等を行った。
第5節 経営環境の整備
1.Go To商店街事業【令和2年度第1次補正予算:51.0億円、令和2年度第3次補正予算:30.0億円】
感染拡大防止対策を徹底しながら、商店街等が行うオンライン活用事業、新たな商材開発やプロモーション制作など、「地元」や「商店街」の良さを再認識するきっかけとなるような取組を支援した。
2.両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症対応特例)【令和3年度当初予算:45.6億円の内数】
両立支援等助成金の育児休業等支援コースにおいては、新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等により、子どもの世話をする労働者のために特別休暇制度及び両立支援制度を導入し、特別休暇の利用者が出た事業主に対して、2021年4月から同年9月30日の間の休暇について支給した。
また、両立支援等助成金の介護離職防止支援コースにおいては、新型コロナウイルス感染症への対応として、法定の介護休業とは別に家族の介護が必要な労働者のための有給休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く。)を設け、仕事と介護の両立支援制度の内容を含めて周知し、当該休暇を取得させた中小企業事業主に対して支給した。
3.小学校等の臨時休業等に伴う保護者の休暇取得支援(小学校休業等対応助成金・支援金)【令和3年度補正予算:55.0億円】
新型コロナウイルス感染症の影響により、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子どもの保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規雇用・非正規雇用を問わず、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く。)を取得させた企業に対し、2021年8月1日から2022年3月31日の間の休暇について支給した。
また、委託を受けて個人で仕事をする方が、小学校等の臨時休業等に伴い、保護者として子どもの世話を行うため、契約した仕事ができなくなった場合、2021年8月1日から2022年3月31日の間に就業できなかった日について支給した。
4.新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援【令和3年度当初予算:9.3億円】
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として医師等の指導により休業が必要とされた妊娠中の労働者が取得できる有給の休暇制度を設け、当該休暇を取得させた事業主に対する助成を行った。
5.申告・納付期限の延長【税制】
緊急事態宣言の期間が確定申告期間と重なることを踏まえ、十分な申告期間を確保して確定申告会場の混雑回避の徹底を図るため、2020年分の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告期限・納付期限について2021年4月15日まで延長した。
6.中小企業活性化パッケージ
年度をまたいだ中小企業の事業継続を後押しするコロナ資金繰り支援の継続や、増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促すため「中小企業活性化パッケージ」を策定した。資金繰り支援として、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫(危機対応融資)等による実質無利子・無担保融資を、融資期間を延長したうえで、令和4年6月末まで引き続き実施する。また、増大する債務への対応として、全国3万以上の認定支援機関を活用した中小企業の収益力改善に向けた計画の策定・実行支援、私的整理を円滑に進めるための民間ルールである「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に基づく事業再生支援、新たに設置する「中小企業活性化協議会」における収益力改善・事業再生・再チャレンジの一元的支援などの総合的な支援策を強力に進める。