トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2022年版 中小企業白書(HTML版) 第1部 令和3年度(2021年度)の中小企業の動向 第1章 中小企業・小規模事業者の動向 第5節 事業継続計画(BCP)の取組

第5節 事業継続計画(BCP)の取組

第4節ではリスクに伴う企業活動への影響について概観したが、近年も大雨、地震などの自然災害や感染症流行など、中小企業に大きな影響を与える事象が相次いで発生している。こうした事象は、順調に事業活動を行っていたとしても、不測の事態から事業の継続が困難になることがある。本節では、不測の事態に対して、事業を継続していくための取組について見ていく。

1.自然災害の影響

第1-1-66図は、2021年に発生した災害のうち、災害救助法の適用を受けたものを示している。2021年においても、大雨、大雪、地震、大規模火災など、災害救助法の適用を受ける災害が多く発生した。

第1-1-66図 2021年に災害救助法の適用を受けた災害

2.リスクに対する備え

災害に代表されるような不測の事態が発生しても、重要な業務を中断させることなく、また中断が生じても可能な限り短期間で復旧させるために、方針や体制及び手順を示した「事業継続計画」(BCP:Business Continuity Plan)(以下、「BCP」という。)について、その取組状況を見ていきたい。

第1-1-67図は、中小企業における直近3年間のBCPの策定状況を見たものである。これを見ると、策定している企業は、毎年増加傾向にあるものの、半数近くは時期によらず策定していないという回答となっている。

第1-1-67図 事業継続計画(BCP)の策定状況の推移(中小企業)

次に、第1-1-68図は、BCPを「策定している」、「現在、策定中」、「策定を検討している」と回答した企業に対して、事業の継続が困難になると想定しているリスクを聞いたものである。これを見ると、「自然災害」と「感染症」がリスクとして高く認識されていることが分かる。

第1-1-68図 事業の継続が困難になると想定しているリスク(中小企業)

続いて第1-1-69図は、同様の調査を2019年と2020年の2か年で比較したものである。2020年は感染症による在宅勤務の推奨や、従業員の感染による出勤停止に伴う稼働停止など、事業の継続が困難となる事態が懸念されたためか、「感染症」を想定するリスクとして回答した企業の割合は2019年から急増した。また、毎年のように発生する大規模な大雨や地震、大雪といった自然災害についても想定するリスクとして2019年に引き続き高い割合で推移している。

第1-1-69図 事業の継続が困難になると想定しているリスク(中小企業)2019年、2020年

次に、BCP策定の効果について見ていく。第1-1-70図は、BCPを「策定している」と回答した企業が感じている効果を示したものであるが、「従業員のリスクに対する意識が向上した」という回答が半数以上存在するほか、「事業の優先順位が明確」や「業務の定型化・マニュアル化」「業務の改善・効率化」など、日頃の業務改善にも効果が表れていることが見て取れる。また「取引先からの信頼」といったように、自社の価値向上にもつながっていることが示唆される。

第1-1-70図 事業継続計画(BCP)を策定したことによる効果(中小企業)

次に、第1-1-67図で示したように、「策定していない」と答えた企業の割合が半数近くある中で、その背景にある課題について確認する。第1-1-71図は、BCPを「策定していない」と回答した企業に対して、その理由を尋ねたものである。これを見ると、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」や「実践的に使える計画にすることが難しい」など、BCPに対する敷居の高さが存在する可能性が示唆される。一方で、「策定する人材や時間の確保ができない」や「策定の効果が期待できない」に加え、2割程度が「必要性を感じない」と回答するなど、BCPに対する優先度が高くないことが示唆される。

第1-1-71図 事業継続計画(BCP)を策定しない理由(中小企業)

自然災害はもとより昨今の情勢下では、予測不能な事態が発生する可能性が高まっている。そうした事態の発生において、損害を最小限にとどめ、事業活動の中断を防止することや、中断が生じた際の早期復旧を可能とさせるためにも、BCPに対する意識の向上とBCP策定の浸透が望まれる。

コラム1-1-4:「事業継続力強化計画」認定制度

制度概要

「事業継続力強化計画」認定制度とは計画の目標、ハザードマップなどを活用した自然災害などにおけるリスクの確認結果、安否確認などの初動対応手順、ヒト・モノ・カネ・情報を守るための事前対策、実効性の確保に向けた取組などを計画としてとりまとめ、経済産業大臣が認定するものである。

従来のBCPは、企業にとってハードルが高いと認識されている一方、本計画はA4紙4枚程度と比較的簡易な様式となっているため、中小企業がより取り組みやすいものとなっている。

認定を受けた中小企業は、防災・減災設備に対する税制措置、低利融資、補助金の優先採択等を受けることができる。

2021年12月末日時点で累計3万6,000件を超える計画が認定を受けている。

コラム1-1-4〔1〕図 制度概要

連携事業継続力強化計画の事例

「連携事業継続力強化計画」は、複数の企業が集まり、災害時の相互協力体制を構築するものである。ここでは「連携事業継続力強化計画」に取り組んだ事例について紹介する。

コラム1-1-4〔2〕図 連携事業継続力強化計画の事例