トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2022年版 中小企業白書(HTML版) 第1部 令和3年度(2021年度)の中小企業の動向 第1章 中小企業・小規模事業者の動向 第1節 我が国経済の現状

本章では、我が国経済の動向について概観するとともに、中小企業・小規模事業者の動向及び中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境について見ていく。

第1節 我が国経済の現状

始めに、我が国経済の動向について概観する。2021年は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)の世界的流行が続き、我が国経済も大きな影響を受けた。実質GDP成長率の推移を確認すると、2021年は前年比1.6%増となった。2021年を通じた動きを見ると、2021年初頭から発出された2回目の緊急事態宣言と時期を重ねるように、第1四半期にはマイナス成長に転じた。その後は感染状況に左右されながら、2021年第4四半期は前期比1.1%増とプラス成長となった(第1-1-1図)。

第1-1-1図 実質GDP成長率の推移

次に、業況や生産活動の動向について概観する。

業種別の業況について、日本銀行「全国企業短観経済観測調査」(以下、「日銀短観」という。)の業況判断DIの推移を用いて確認する(第1-1-2図)。業況判断DIは、2020年第2四半期を底に回復傾向にあり、2021年第4四半期には全産業でプラスに転じた。

第1-1-2図 業種別の業況判断DIの推移

続いて、経済産業省「鉱工業生産指数」を用いて鉱工業の生産活動の状況を確認する(第1-1-3図)。感染症の影響により、2020年2月から5月まで鉱工業生産指数は大幅に低下した後、同年6月以降は一転し、勢いのある上昇が続いた。2021年は、7月から9月において再び低下した後、10月から上昇し持ち直しの動きが見られているが、足元では、供給制約などが下押ししている。

第1-1-3図 鉱工業生産指数の推移

第1-1-4図は、経済産業省「第3次産業活動指数」によって、非製造業や広義のサービス業などの第3次産業に属する業種の生産活動を見たものである。指数は感染症の拡大に伴い、2020年5月にかけて大幅な低下となった。その後、回復傾向にあったものの、3回目の緊急事態宣言が発出された直後の2021年5月には一時的に低下するなど、感染症流行の状況に左右されながら変動している様子が分かる。

第1-1-4図 広義対個人サービス・広義対事業所サービス活動指数の推移

次に、消費の動向について概観していく。

第1-1-5図は、内閣府「消費総合指数」によって、2015年を100とした指数で消費の動向を見たものである。消費総合指数は2020年5月を底に上昇に転じたものの、6月以降は上昇と低下を繰り返し、足元では、依然として感染症流行前の水準には戻っていない。

第1-1-5図 消費総合指数の推移

続いて、経済産業省「商業動態統計」により消費の動向を供給側から確認する(第1-1-6図)。卸売業は、2020年3月から5月にかけて大幅に低下したが、同年6月以降は緩やかに持ち直し、足元では感染症流行前の水準まで戻って推移している。小売業については、2020年3月から4月にかけて大幅に低下したが、その後、同年6月に大きく持ち直し、感染症流行前の水準まで戻って推移をしている。

第1-1-6図 商業販売額指数の推移

第1-1-7図は、総務省「サービス産業動向調査」を用いて、サービス産業の売上高について前年同月比を見たものである。2021年のサービス産業全体の動きを見ると、第2回緊急事態宣言が解除された直後の2021年4月には前年同月を上回る水準に転じ、5月には前年同月比で大幅に増加した。その後は、感染症が再び拡大する中で、前年同月比での増加幅が縮小している。

また、サービス産業の中で、「宿泊業, 飲食サービス業」、「生活関連サービス業, 娯楽業」は2021年4月にはそれぞれ前年同月比で大幅に増加したが、6月以降は再び低下した。足元では、いずれの業種も前年を上回っている。一方で、「情報通信業」は期間全体を通じてほとんど変わらない水準で推移しており、産業ごとに感染症流行による影響の度合いが異なる状況が見て取れる。

第1-1-7図 サービス産業の売上高(前年同月比)の推移

次に、輸出入や海外現地法人の活動状況など対外経済関係の動向について見ていく。

第1-1-8図及び第1-1-9図は、地域別の輸出入数量指数の推移について見たものである。輸出数量指数は、2020年5月にかけて急速に低下した後、上昇傾向で推移していたが、その後増勢が鈍化。足元では、おおむね横ばいで推移している。また、地域別には足元、米国向けは弱含む一方、アジアやEU向けは100を超える水準となった。

輸入数量指数は、2021年上半期に感染症流行前の水準に回復しつつも、上昇と下落を繰り返しながら推移している。また、地域別には足元、米国からの輸入は依然として感染症流行前の水準まで回復していないが、アジアやEUからの輸入は100を超える水準となった。

第1-1-8図 地域別輸出数量指数の推移
第1-1-9図 地域別輸入数量指数の推移

続いて、我が国企業の海外現地法人の売上高の推移を見たものが第1-1-10図である。各地域においておおむね回復傾向にあり、北米を除き、感染症流行前の水準まで回復している。

第1-1-10図 地域別海外現地法人の売上高の推移