第8章 業種別・分野別施策
第1節 中小農林水産関連企業対策
1.中小農林水産事業者向け支援
(1)食料産業・6次産業化交付金【R2年度当初予算:25.3億円】
農林漁業者と多様な事業者が連携して行う地域資源を活用した新商品開発や販路開拓等の取組、加工・販売施設等の整備及び新たな高付加価値商品等の創出・事業化に必要な技術実証、マーケティング等を支援した。
(2)木材産業等高度化推進資金、林業・木材産業改善資金【638.4億円(融資枠)】
木材の生産・流通を合理化するため、木材産業等高度化推進資金による融資を行うとともに、林業・木材産業の経営改善等を実施するため、林業・木材産業改善資金を融資した。
(3)木材加工設備導入等利子助成支援事業【R2年度当初予算:2.01億円の内数】
品質・性能の確かな木材製品を低コストで安定的に供給するため、製材業を営む企業等が実施する設備導入等とともに、川中事業者を核とする安定供給体制の構築に必要な借入金に対して利子助成を行った。
(4)林業成長産業化総合対策のうち林業・木材産業成長産業化促進対策のうち木材産業等競争力強化対策(うち木材加工流通施設等の整備)【R2年度当初予算:128.7億円の内数】
川上から川下の事業者が連携し、生産・加工・流通コストの削減を図ることにより、木材製品の安定的な供給のための木材加工流通施設整備の支援を行った。
(5)強い農業・担い手づくり総合支援交付金による乳業再編整備等への支援【R2年度当初予算:強い農業・担い手づくり総合支援交付金200.2億円の内数】
中小乳業の製造コストの低減や衛生水準の高度化を図るため、乳業工場の施設の新増設・廃棄を支援した。
(6)海外需要創出等支援対策事業【R2年度当初予算:27.6億円】
「農林水産業の輸出力強化戦略」等の着実な実施に向け、JFOODOによる戦略的マーケティングの強化や、JETROによる輸出に取り組む事業者等に対するマッチング支援や個別相談対応、分野・テーマに応じた海外市場開拓への支援等を行った。
(7)グローバル産地づくりの強化【R2年度当初予算:4.7億円】
農林水産物・食品の更なる輸出拡大を図るため、ハラール認証などの輸出先国が求める検疫等の条件への対応、ISO22000などの国際的に通用する認証の取得・更新に向けた取組等を支援した。
(8)地理的表示保護・活用総合推進事業【R2年度当初予算:1.1億円】
地理的表示(GI)の登録申請支援窓口の設置や申請に必要な調査に対する補助、国内外へ向けたGI産品の情報発信、海外における知的財産の侵害対策強化等の取組を実施した。
(9)水産加工業者向けワンストップ窓口の設置・運営
水産施策や中小企業施策等の各種支援策等が水産加工業者に適切に周知され、かつ有効に活用されるよう、関係道府県に設置したワンストップ窓口において水産加工業者の相談に適切に対応した。
(10)水産バリューチェーン事業(補正事業名:水産物輸出拡大連携推進事業)【R2年度当初予算:7.4億円/R2年度3次補正予算:6億円】
生産・加工・流通・販売が連携してマーケットニーズに応えるバリューチェーンの構築支援や、加工・流通業者等が加工原料を新たな魚種に転換する取組、産地の水産加工業の中核的人材育成等の取組を支援した。
(11)日本政策金融公庫による各種融資
〔1〕特定農産加工業者の経営改善、〔2〕特定農林畜水産物の新規用途又は加工原材料用新品種の採用の推進、〔3〕食品製造業者等と農林漁業者等の安定取引関係構築及び農林漁業施設の整備等、〔4〕食品の製造又は加工を営む者に対するHACCP導入等のための体制、施設、設備の整備等、〔5〕水産加工業の体質強化、〔6〕農業生産関連事業の事業再編等、〔7〕農林水産物及び食品の輸出促進のために、農林水産事業者及び食品産業事業者に対して融資を行った。
2.研究開発等横断的分野等における支援
「知」の集積と活用の場によるイノベーション創出推進事業【R2年度当初予算:40.9億円】
農林水産・食品分野におけるイノベーションを創出するため、様々な分野の多様な知識・技術等を結集し、スマート農業技術等の研究開発を重点的に推進する提案公募型研究を実施した。
第2節 中小運輸業対策
1.倉庫業への支援
経済・社会環境の変化の中で高度化・多様化する物流ニーズやトラックドライバー不足に対応することを目的とし、物流の省力化・効率化を図るため、改正物流総合効率化法の活用により、輸送機能と保管機能が連携した倉庫の整備を促進した。また、倉庫の脱フロン及び低炭素化を促進するため、省エネ型自然冷媒機器の導入に対し支援を行った。
2.内航海運・国内旅客船事業対策【財政投融資】
鉄道・運輸機構の船舶共有建造制度により、内航海運のグリーン化に資する船舶や離島航路の維持・活性化に資する船舶といった政策的意義の高い船舶の建造を促進した。
3.中小造船業・舶用工業対策
(1)経営の安定のためのセーフティネットの確保に取り組んだほか、経営技術に関する講習を実施した。【R2年度当初予算:1.5億円の内数】
(2)船舶の建造・運航における生産性向上のための技術研究開発費に対し補助を行った。【R2年度当初予算:1.7億円の内数】
(3)中小企業等経営強化法に基づき、中小造船業・舶用工業の生産性向上を図るため、国土交通省が定めた「船舶産業分野に係る経営力向上に関する指針」に沿って中小企業・小規模事業者が策定した経営力向上計画の認定を行い、税制措置等によって設備投資等を促進した。【税制】
(4)産学官で構成される地方協議会において、工業高校における造船教育の実施を後押しする取組とともに、造船工学教材等の既存のリソースを活用し、造船人材のキャリアアップ等を図るための取組について検討した。また、造船教育修了者の入職・定着を向上させるための方策等を検討するための調査を行った。加えて、外国人造船就労者受入事業の適正な運営を図るとともに、特定技能制度について、適切な制度運用に努めた。【R2年度当初予算:0.9億円の内数】
第3節 中小建設・不動産業対策
1.地域建設産業の生産性向上・持続性確保支援事業【R2年度当初予算:0.1億円】
建設産業の大宗を占める中小中堅企業では、経営者の高齢化に伴う持続性の確保や投資余力や人材が限られる中での生産性向上が課題である。本事業では、多能工化などの経営資源の効率的な活用、非接触化や省人化といった新技術導入による生産性向上及び企業活動の持続性確保を図るために、多能工化やICT活用、事業承継に係る現状や課題の把握、モデル支援の実施、専門家によるコンサルティングのほか、セミナーや事例集を通じたノウハウの横展開と普及啓発を実施した。
2.建設業における金融支援の実施
(1)地域建設業経営強化融資制度の実施
元請建設企業の資金調達の円滑化を図るため、中小・中堅元請建設企業が工事請負代金債権を担保に、融資事業者(事業協同組合等)から工事の出来高に応じて融資を受けることを可能とする「地域建設業経営強化融資制度」を実施した。なお、本制度では、融資事業者が融資を行うに当たって金融機関から借り入れる転貸融資資金に対して債務保証を付すことにより、融資資金の確保と調達金利の軽減を図っている。
(2)下請債権保全支援事業の実施
下請建設企業等の債権保全を図るため、中小・中堅下請建設企業等が元請建設企業に対して有する工事請負代金債権等をファクタリング会社が保全する「下請債権保全支援事業」を実施した。なお、本事業では、ファクタリング会社に対して一定の損失補償を実施し、下請建設企業等が負担する保証料について助成を行っている。
3.建設業の海外展開支援【R2年度当初予算:1億円の内数】
独自の技術を有する我が国の中堅・中小建設企業の海外市場への進出を促進するため、Webを活用したセミナーの開催、4か国(ベトナム、ミャンマー、カンボジア、フィリピン)を対象とした合同就職説明会の実施、外国人材の活用事例を共有するための国内企業訪問の実施、企業の持つ技術を発信するための技術集の作成・配布等による支援を行った。
4.中小不動産事業者に対する金融措置
中小不動産事業者の信用を補完し金融を円滑化するため、中小不動産事業者の協業化円滑資金や地域再生のための事業資金等に対する債務保証事業を継続実施した。
5.地域型住宅グリーン化事業【R2年度当初予算:135億円の内数/R2年度3次補正予算:10億円の内数】
地域における木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷の低減を図るため、資材供給、設計、施工などの関連事業者からなるグループによる、省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅・建築物の整備及び省エネ改修に対して支援を行った。
6.木造住宅・都市木造建築物における生産体制整備事業【R2年度当初予算:5億円の内数】
木造住宅の担い手である大工技能者の減少・高齢化が進む中、木造住宅や都市部における非住宅や中高層の木造建築物(都市木造建築物)の生産体制の整備を図るため、民間団体等が行う大工技能者の確保・育成の取組等に対する支援を行った。
第4節 生活衛生関係営業対策
1.生活衛生営業対策【R2年度当初予算:12.9億円の内数/R2年度1次補正予算:6.9億円の内数/R2年度2次補正予算:4.3億円の内数/R2年度3次補正予算:6.2億円の内数】
理美容業、クリーニング業、飲食店営業などの生活衛生関係営業の経営の健全化、衛生水準の維持向上及び利用者又は消費者の利益の擁護を図り、もって安心・快適な生活環境づくりを衛生的観点から推進するため、生活衛生同業組合及び連合会、全国生活衛生営業指導センター、都道府県生活衛生営業指導センターに対して補助を実施した。また、委託事業として、生活衛生関係営業者が生産性向上に向けた取組を確実に行っていけるよう、生産性向上ガイドライン・マニュアルを用いた個別相談等を実施し、その結果を生産性向上ガイドライン・マニュアルに反映させる事業を実施した。
2.生活衛生関係営業に関する貸付【R2年度当初予算:38.3億円の内数/R2年度1次補正予算:287.1億円の内数/R2年度2次補正予算:185.2億円の内数/R2年度3次補正予算:588億円の内数/R2年度予備費:1.7億円の内数】
生活衛生関係営業の資金繰り支援を行うことで公衆衛生の向上及び増進を図るため、日本政策金融公庫(生活衛生資金貸付)において融資を行った。2020年度においては、生活衛生関係営業者の円滑な事業承継を支援するため、生活衛生関係営業事業承継・集約・活性化支援資金を創設し、2020年度予備費及び補正予算においては、新型コロナウイルス感染症の影響等により業況悪化を来している生活衛生関係営業者が資金繰りを円滑に行えるよう、日本政策金融公庫(生活衛生資金貸付)が実施する融資を行うために必要な財政支援を行った。
第5節 環境・エネルギー対策
1.国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【R2年度当初予算:3.8億円】
J-クレジット制度は、中小企業等の再エネ・省エネ設備投資による温室効果ガスの排出削減量等をクレジットとして認証する制度であり、当該クレジットは、大企業等の低炭素社会実行計画の目標達成や、カーボン・オフセット等に活用される。
本事業では、制度事務局を運営するとともに、J-クレジット制度を利用した温室効果ガスの排出削減活動を実施する中小企業等に対し、プロジェクト登録やクレジット認証に係る支援等を実施した。
また、本事業では、カーボン・オフセットを促すとともに、J-クレジット制度の下で創出されるクレジットの需要開拓も推進した。
本事業により、中小企業等の再エネ・省エネ設備投資を促進するとともに、クレジットの活用による国内での資金循環を促すことで経済と環境の好循環の実現を図った。
2.環境・エネルギー対策資金(公害防止対策関連)【財政投融資】
中小企業の公害防止対策を促進するため、公害防止設備の導入等をする事業者に対して株式会社日本政策金融公庫による融資を行う制度である。2020年度においては、下記のとおり着実に実施した。
[融資実績](2020年4月~2020年12月)
件数 | 金額 | |
---|---|---|
アスベスト対策関連 | 1件 | 22百万円 |
水質汚濁関連 | 7件 | 495百万円 |
産業廃棄物・リサイクル関連 | 21件 | 2,405百万円 |
PCB廃棄物関連 | 1件 | 16百万円 |
3.公害防止税制【税制】
公害防止税制は、中小企業を含む事業者の公害防止対策に対する取組を支援するため、公害防止用設備(汚水又は廃液処理施設)に係る課税標準の特例措置を引き続き講じた。
4.省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援補助金)【R2年度当初予算:459.5億円の内数】
工場・事業場等における省エネ設備への入替を促進するため、対象設備を限定しない「工場・事業場単位」と、対象設備を限定するが手続が簡易な「設備単位」での支援を実施した。
5.省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金【R2年度当初予算:12.7億円】
新設・既設事業所における省エネ設備の導入等を行う際、民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、融資に係る利子補給を行った。
6.中小企業等に対する省エネルギー診断事業費補助金【R2年度当初予算:9.6億円】
中小企業等の省エネ取組をきめ細かに支援するため、省エネポテンシャルの無料診断を実施した。また、地域の専門家らが連携した省エネ相談拠点である「省エネ相談地域プラットフォーム」を全国に設置するとともに、「全国省エネ推進ネットワーク」にて地域における省エネ支援窓口や省エネ取組に関する情報を発信した。
7.環境・エネルギー対策資金(非化石エネルギー関連)【財政投融資】
中小企業による再生可能エネルギーの利用を促進するため、株式会社日本政策金融公庫が、再エネ発電設備・熱利用設備を導入する際に必要な資金を中小企業向けに低利で貸し付けることができる制度。2020年4月から2020年12月までに449件、111億円規模の融資を実施した。
8.地域脱炭素投資促進ファンド事業【R2年度当初予算:48億円】
一定の採算性・収益性が見込まれるものの、リードタイムや投資回収期間が長期に及ぶこと等に起因するリスクが高く、民間資金が十分に供給されていない再生可能エネルギー事業等の脱炭素化プロジェクトに民間資金を呼び込むため、これらのプロジェクトに対し、「地域脱炭素投資促進ファンド」からの出資を行った。
9.エコリース促進事業【R2年度当初予算:15.7億円】
多額の初期投資費用(頭金)の負担が困難な中小企業等が設備投資を行う際、頭金を必要としないリースという金融手法の活用が有効であるところ、本事業によってリース料総額の一部を補助することで脱炭素機器の導入促進を図った。
10.エコアクション21【R2年度当初予算:0.14億円】
中堅・中小事業者にも取り組みやすい環境マネジメントシステムとして環境省が策定した環境マネジメントシステム「エコアクション21」のガイドラインの普及等を通して、環境経営の普及促進を行った。
第6節 知的財産活動の促進
1.中小企業向けの特許料等の軽減
全ての中小企業を対象に、審査請求料、特許料(第1年分~第10年分)、国際出願に係る手数料(調査手数料、送付手数料、予備審査手数料)を1/2に軽減する措置及び国際出願手数料や取扱手数料の1/2に相当する額を交付する措置を実施した。また、中小ベンチャー企業・小規模企業に対しては、審査請求料、特許料(第1年分から第10年分)、国際出願に係る手数料(調査手数料、送付手数料、予備審査手数料)を1/3に軽減する措置及び国際出願手数料や取扱手数料の2/3に相当する額を交付する措置を実施した。
2.早期審査・早期審理制度
特許について、出願人や審判請求人が中小企業・小規模事業者の場合、「早期審査に関する事情説明書」や「早期審理に関する事情説明書」を提出することにより、通常に比べ早期に審査又は審理を受けられるよう早期審査・早期審理を実施した。また、ベンチャー企業の特許について、「早期審査に関する事情説明書」を提出することにより、原則1か月以内に1次審査結果を通知できる(「スーパー早期審査」)運用を2018年7月9日から開始した。意匠・商標についても早期審査・早期審理の要件を満たせば、早期に審査又は審理を受けられるよう早期審査・早期審理を実施した。2020年度の早期審査の申請件数は2万7,097件、早期審理の申請件数は221件に上った(2021年1月末現在)。
3.出張面接・テレビ面接【R2年度当初予算:0.4億円】
特許・意匠について、中小・ベンチャー企業等への支援を目的として、全国各地の面接会場において審査官・審判官が出張面接を実施するとともに、特許・意匠・商標について、インターネット回線を利用し出願人自身のPC から参加できるオンライン面接を実施した。また、2017年7月に開設したINPIT 近畿統括本部(INPIT-KANSAI)においても、出張面接、オンライン面接を実施した。
4.特許情報の提供
国内外の特許情報をインターネット上で、無料で検索・照会できる下記サービスの提供を実施した。〔1〕2019年度に引き続き、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を通じて、特許・実用新案・意匠・商標の公報や審査経過情報を検索・照会できるサービスを提供した。加えて2020年度には、J-PlatPatの機能改善(中国語・韓国語文献の日本語機械翻訳の改良や特許実用新案分類照会(PMGS)における一覧しやすい簡易表示の追加等)を実施した。〔2〕2019年度に引き続き、「外国特許情報サービス(FOPISER)」を通じて、ASEAN等の日本企業の進出が著しい諸外国の特許情報を検索・照会できるサービスを提供した。
5.特許戦略ポータルサイト【R2年度当初予算:0.1億円】
特許庁ホームページ内の特許戦略ポータルサイトにおいて、申込みのあった出願人に対し、直近10年間の特許出願件数、審査請求件数、特許査定率等のデータが掲載された「自己分析用データ」を提供した。
6.知的財産権制度に関する普及【INPIT交付金の内数】
知的財産権制度に関する知見・経験のレベルに応じて、[1]知的財産権制度の概要や基礎的知識について説明する初心者向け説明会、[2]特許・意匠・商標の審査基準や、審判制度の運用、国際出願の手続等、専門性の高い内容を分野別に説明する実務者向け説明会に係る動画コンテンツのオンライン配信を行った。
7.中小企業の知財に関するワンストップサービスの提供(知財総合支援窓口) 【INPIT交付金の内数】
中小企業等が抱える様々な経営課題について、自社のアイデアや技術などの「知的財産」の側面から解決を図る支援窓口として、各都道府県に「知財総合支援窓口」を設置している。
知財総合支援窓口では、支援担当者が、アイデア段階から事業展開、海外展開までの様々な経営課題等に対し、弁理士や弁護士、デザイナー、中小企業診断士などの専門家と協働して、知的財産の側面から効率的・網羅的に解決を図るほか、職務発明・営業秘密などの知財管理や、地理的表示保護制度(GI)等の農業分野の知財、知財・標準化戦略等の様々な経営相談にも、よろず支援拠点をはじめとする関係支援機関と連携しつつ、対応している。2020年度は、「第2次地域知財活性化行動計画(2020.7.15)」で設定された目標(中央KPI及び地域KPI)を踏まえた支援を実施。10万件以上の相談等に対応するとともに、よろず支援拠点をはじめとする関係支援機関と連携した支援を9,000件以上実施した。
8.営業秘密に関するワンストップ支援体制の整備【INPIT交付金の内数】
2015年に工業所有権情報・研修館(INPIT)に開設した「営業秘密・知財戦略相談窓口」において、知財総合支援窓口とも連携し、主に中小企業を対象として、企業の持つ技術を特許として権利化するか営業秘密として秘匿するかのオープン・クローズ戦略や、秘匿化を選択した際の営業秘密の管理等に関する相談に専門家が対応した。特に営業秘密の漏えい・流出事案や情報セキュリティ対策、サイバーアタックについては、相談内容に応じて、警察庁や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)とも連携した対応を継続した。加えて、営業秘密・知財戦略セミナーの開催、eラーニングコンテンツ等による普及・啓発活動も実施し、本相談窓口の周知を通じて中小企業による活用を促進した。
9.知財金融促進事業(中小企業知財経営支援金融機能活用促進事業)【R2年度当初予算:1.5億円】
中小企業の知財を活用した経営を支援するため、知財を切り口とした事業性評価を行う金融機関に対し、中小企業の知的財産を活用したビジネスについてわかりやすく説明した「知財ビジネス評価書」の提供や、経営課題に対する解決策をまとめた「知財ビジネス提案書」の作成の支援等、知財に着目した融資や経営支援につなげる取組を行った。
10.中小企業知的財産支援事業【R2年度当初予算:0.8億円】
産業支援機関等による先導的・先進的な知財支援の取組を地域に定着させることを通じて、中小企業等の知財保護・活用を促進するため、当該取組に対し、経済産業局等を通じて必要な経費の補助を行った。2020年度は、11件の取組を支援した。
11.新興国等知財情報データバンク【INPIT交付金の内数】
工業所有権情報・研修館(INPIT)が運用するウェブサイト上で、新興国等でのビジネスに関わる我が国の企業の法務・知財担当者等を対象に、新興国等における出願実務、審判・訴訟実務、ライセンス実務情報、統計・制度動向等の情報を提供した。2020年度は、ユーザーニーズ調査及び掲載記事の更なる拡充を行った(2021年1月末現在:掲載記事数 2,884件)。
12.海外知的財産プロデューサー派遣事業【INPIT交付金の内数】
海外における事業展開を知的財産リスクマネジメント及び知的財産活用の視点から支援するため、海外での事業展開が期待される有望技術を有する中小企業等に対し、知的財産マネジメントの専門家(海外知的財産プロデューサー)を工業所有権情報・研修館(INPIT)から派遣している。2020年度は、6人の海外知的財産プロデューサーにより、108者(2020年12月末現在)の支援を行った。
13.日本発知財活用ビジネス化支援事業【R2年度当初予算:2.8億円の内数】
中堅・中小企業や地域団体商標取得団体の知的財産を活用した外国でのビジネス展開の促進を支援するため、JETRO を通じて以下の取組を行った。
〔1〕国内外におけるセミナーの開催から現地専門家を活用したビジネスプランの作成支援やビジネスパートナーへのプレゼンテーション機会の提供等にわたる包括的支援。〔2〕海外見本市への出展支援及び現地における商談会等の開催によるビジネスパートナーとの商談機会の提供。〔3〕採択された企業・団体が持つ技術やブランド等を活かした商品等を海外展開するためのプロモーション活動の支援を実施。〔4〕現地パートナー候補の発掘等、海外事業展開に必要な調査の実施。
14.中小企業等外国出願支援事業【R2年度当初予算:7.4億円の内数】
中小企業等による戦略的な外国出願を促進するため、JETROや都道府県中小企業支援センター等を通じて、外国への事業展開等を計画している中小企業に対し、外国への出願に要する費用(外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等)の一部を助成した。
15.戦略的知財活用型中小企業海外展開支援事業費補助金【R2年度当初予算:0.7億円】
中小企業の知財を活用した海外展開を戦略的に支援するため、中小企業基盤整備機構を通じて、専門家が海外知財戦略の策定や課題解決に係るコンサルティングを行った。また、特許協力条約に基づく国際出願・国内移行等の費用について、一部を助成した。
16.中小企業等海外侵害対策支援事業【R2年度当初予算:7.4億円の内数】
中小企業の海外での適時適切な産業財産権の権利行使を支援するため、JETROを通じて、模倣品に関する調査や模倣品業者に対する警告・行政摘発手続に要する費用を補助した。また、海外で現地企業等から知財権侵害で訴えられた場合の弁護士等への相談費用や訴訟に要する費用、冒認商標無効・取消係争の実施に要する費用についても補助を行った。
17.海外知財訴訟保険補助事業【R2年度当初予算:7.4億円の内数】
中小企業等が海外において知財訴訟に巻き込まれた際の対抗措置をとることができるようにするため、中小企業等を会員とした全国規模の団体を運営主体として、知財訴訟費用を賄う海外知財訴訟保険を実施した。中小企業等を会員とする全国規模の団体に補助金を交付し、海外知財訴訟保険の掛金の1/2(継続して2年目以降も本補助金の対象となる場合は1/3)を補助し掛金負担を軽減することで、中小企業の加入を促進した。
18.中小企業等アウトリーチ事業(営業秘密漏えい対策)【R2年度当初予算:16.0億円の内数】
中小企業の海外での意図しない営業秘密・技術流出防止を目指すべく、在外日系企業を主なターゲットにすえて、現地専門家によるハンズオン支援(研修の実施、管理状況・労働契約書の改善案の作成、フォローアップ等)と情報提供活動(営業秘密の管理・保護に向けたマニュアルの作成・啓発)を実施し、営業秘密の管理体制の構築を支援した。ハンズオン支援は中国、タイ、ベトナムにおいて実施し、実績33社。
第7節 標準化の推進
1.中堅・中小企業等における標準化の戦略的活用の推進
「成長戦略フォローアップ」(2020年7月17日閣議決定)、「知的財産推進計画2020」に基づき「新市場創造型標準化制度」を活用して、中堅・中小企業等から提案のあった案件について、2021年1月下旬時点で規格を41件制定した。さらに、自治体・産業振興機関、地域金融機関、大学・公的研究機関(パートナー機関)と一般財団法人日本規格協会が連携し、地域において標準化の戦略的活用に関する情報提供・助言等を行う「標準化活用支援パートナーシップ制度」のパートナー機関数を2021年1月下旬時点で167機関に拡大した。また、中堅・中小企業等向けに、標準化に関する戦略的活用についてのセミナーを実施した(実績は、2021年1月下旬時点で36件)。